2018.06.19更新

 

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。

 

1.そもそも内縁(事実婚)って何だ?


 

 内縁関係とは、婚姻届を提出していないけれども、婚姻意思を持って、夫婦共同生活を営んでいる関係などと言われたりします。事実上夫婦としての生活を送っているため「事実婚」と言われることもあります。

 要するに、①婚姻意思を持って(要するに「結婚するつもりがあって」)、②夫婦共同生活を営んでいる(同居して夫婦同様の生活を営んでいる)事が必要になります。

 

 

2.権利の分類


一口に内縁の妻の権利と言いましても、様々なものがあります。

 概観してみますと、以下のように分類できます。

①結婚に準じて保護される権利

②交通事故等のケースで保護される権利

③内縁の相手が死亡した場合に遺族給付金等の関係で保護される権利

 

 今回は、上記の「①結婚に準じて保護される権利」の中でも、内縁(事実婚)解消までの生活費の問題、相手が浮気をした場合の慰謝料請求の問題、財産分与の問題に焦点を当ててご説明致します。

 

 

3.そもそも結婚に準じて保護されるって、どういうこと?


 もちろん、内縁関係は、入籍しておりませんので、戸籍上相手の氏を名乗ると言うことは原則としてできませんし、内縁相手の両親等を法律上義母や義父とすることもできません。

 但し、内縁関係の実態は、婚姻関係と同様の実質を備えていますので、基本的に結婚している夫婦同様の権利を与えるべきとされています。

 特にあなたの生活に直結する権利としては、①内縁解消までの婚姻費用(生活費)の請求、②相手が浮気した場合の慰謝料請求、③内縁解消時の財産分与請求がありますので、以下具体的に解説していきます。

 

 

4.婚姻費用分担請求権


 

 結婚している夫婦は、お互いに協力し扶助する義務がありますので(民法752条)、婚姻時に要する費用の分担を請求することができます(民法760条)。内縁夫婦においても、この民法の規定が準用されますので、結婚している夫婦同様お互いに協力し扶助する義務があり、婚姻費用を請求することができます。

 そのため、あなたの収入が内縁の夫の収入よりも低い場合には、同等の生活を保障するように婚姻費用分担請求権を有することになります。

 

 ただ、婚姻費用分担請求は、何らかの事情で内縁夫婦が別居を始めた後に問題になることも多く、その場合には、相手から以下のような主張が行われることがあります。

①最初から結婚するつもりがなかったから内縁関係ではない。

②内縁関係が解消したから別居しているので、別居後の生活の面倒を見る必要がない。

 

 このような相手の主張のうち、①については、いずれにせよ内縁関係の有無はこちらから証明しなければ行けませんので、その中で証明していくことになります。

 

 これに対して、②については、別居の経緯が重要になります。内縁関係が成立している場合、相手が一方的にこれを解消することはできないのですが、相手が「そっちも別れることには同意してくれた」といった話をしてくるケースがあるのです。

法律上の結婚の場合には、離婚届が受理されていない限り、婚姻関係は継続していることになりますから、戸籍謄本を取得すれば、現在婚姻しているのかどうかははっきりと分かります。他方、内縁関係については、これを明確に証明する公的書類は存在しませんので、別居イコール内縁解消ではないと言うことを証明していく必要が出てきます。

 

 そのため、相手から別れ話を切り出された場合等には、早めに相手との会話を録音しておく必要があると思います。もちろん、会話の中であなたとしては内縁解消という話が一方的な話であると主張しておく必要があります。

 

 

5.相手が浮気した場合の慰謝料請求権


 

 結婚している夫婦は、お互いに貞操義務があります(民法752条)。内縁夫婦においても、この民法の規定が準用されますので、内縁の夫が浮気したような場合には慰謝料責任が発生します。

 問題はこの慰謝料の金額ですが、法律上の夫婦の場合よりも慰謝料請求額は多少下がると言われております。

 

 なお、慰謝料額は以下のような要素を考慮して決定します。

①浮気の悪質性

 より具体的に言いますと、不倫の発端・不倫期間や頻度・不倫相手の人数・こちらを裏切った回数(例えば、一度目の不倫発覚時に今後一切不倫をしない旨誓約したのに何度もその誓約に違反した等)・不倫後の生活状況(不倫相手の自宅に入り浸りになるとか、不倫相手に生活費の大半を貢ぐようになったとか)等が考慮されることになります。

 

 ②内縁の夫の反省の程度等

 特に内縁の夫が頑強に浮気を否認し、謝罪も一切しないと言うことになりますと、慰謝料額は増額傾向になります。

 

③こちらが受けた精神的苦痛や肉体的苦痛の程度

 この点は、内縁の夫の不貞でこちらが精神疾患になったと言った事情があれば、慰謝料額は増額傾向になります。

 

 ④内縁期間の長さ・破綻の有無等

  内縁関係の長さに加え、お子様の有無・人数等も考慮されることになります。また、今回の不貞が原因で内縁関係が解消されたような場合には、慰謝料は増額傾向になります。

 

 なお、浮気の問題とは別の問題になりますが、内縁期間中に内縁の夫から暴力を受けて怪我をしたという場合には、DV慰謝料を要求できるケースもあります。

 

 

6.内縁解消時の財産分与請求


 

(1)財産分与というのはそもそもどんな話なのか

 財産分与というのは、内縁期間中に内縁夫婦で築いた財産をどのように分けるのかを取り決めると言うことです。

 内縁生活中は、別れることを見越して準備しているという内縁夫婦はいないと思いますので、通常内縁夫婦の財産は均等ではないことが多いと思います。例えば、内縁の奥様が専業主婦で、内縁の夫が仕事をしているという場合、内縁の夫名義の預金はそれなりの額貯まっているとしても、内縁の奥様の預金はそれほど貯まっていないというケースもあると思います。

 

 そんなときに、内縁の夫側が「これは俺の名義の預金だから離婚の時には、びた一文お前には渡さない」としてしまいますと、内助の功があった内縁の奥様にとって酷な話になってしまいます。

 そこで、別れる時には、内縁夫婦どちらの名義になっているかを問わず、内縁中に築いた財産は半分ずつに清算すべきだというのが財産分与の基本的な考え方になります。

 

(2)慰謝料とは別問題なのでご注意

離婚に伴うまとまったお金の問題と言うことで、慰謝料の問題と混同している方が多いのですが、財産分与と慰謝料は別の問題とお考え下さい。

即ち、慰謝料というのは、相手に浮気や暴力といった一方的有責性がある場合に、こちらが受けた精神的苦痛を慰謝させるものになるのに対して、財産分与は、このような有責性の問題を抜きにして、夫婦の財産を清算しようという話になりますので、別次元の話と言うことになるのです。

(一昔前には、「財産分与の慰謝料的要素として、慰謝料分も考慮する」といった議論をすることもありましたが、最近は、財産分与は財産分与、慰謝料は慰謝料として話し合うのがオーソドックスです)。

 

(3)実際問題どのような手順で話をすべきか

 厳密に財産分与の計算をする場合には、①対象財産の特定→②財産の評価→③総合計額の算出→④分与方法の検討という手順を踏むことになります。

 

 以下具体的に解説いたします。

①対象財産の特定

 財産分与は内縁夫婦で築いた財産を分ける仕組みですので、内縁夫婦で築いた財産以外の財産は対象外になります。

 例えば、独身時代に貯めていた預金や相続で取得した財産は対象外になります。

 対象財産として代表的なものは、内縁生活の中で購入したご自宅、自動車、預貯金、生命保険や学資保険、株式等になります。

 まずは、内縁夫婦で築いた財産としてどのようなものがあるかを割り出して行く作業をすることになります。

 

②財産の評価

 預貯金などは金額が明らかなので問題は少ないのですが、例えば自宅などはいくらになるのかおおよその評価額を調べる必要があります(住宅ローンが残っている場合、通常はローン残高は差し引いて評価することが多いです)。

 他にも、生命保険等については今解約したらいくらになるのかを保険会社に問い合わせる必要があります(実際には解約しませんが、いくらの価値があるかを確認するために、保険会社に「今解約した場合いくらになるか教えて下さい」と電話するのです。

 

③総合計額の算出

 上記のように各財産の価値を算出することができた場合、それらの数字を全て足し算して総合計額を算出していくことになります。

 

 例えば、内縁の夫名義の資産がご自宅(評価額3000万円、ローン残高2400万円)、学資保険(解約返戻金額200万円)、預金(3つの通帳の残高合計が300万円)で、内縁の奥さん名義の資産が預金のみ(2つの通帳の残高合計が100万円)というケースですと、総合計額は(3000万円-2400万円)+200万円+300万円+100万円で、総合計は1200万円になります。

 この総合計額を算出する際には、内縁の夫側の資産だけではなく、あなたの資産分も加算する必要がありますので、ご注意下さい。

 

④分与方法の検討

 前述の例ですと、総合計額が1200万円になりますので、あなたの取り分は半額の600万円になります。

 

 このような600万円の取り分で何を取得するか、あなたの希望を検討することになります。

 即ち、自宅の価値が600万円なので、自宅を取得し、同時に住宅ローンの名義もあなたに変更するという方法もあり得ますし、逆に、自宅は内縁の夫側に渡して、内縁の夫名義の学資保険をこちらに名義変更し、旦那さんの預金額全額を取得するという方法もあります。

 要するに、取り分の範囲で何を要求していくのかという問題です。

 

 

7.まとめ


・内縁の妻には、大別すると①結婚に準じて認められる権利、②交通事故等で認められる権利、③遺族給付等に関する権利が認められる。

・特に内縁の妻の生活に直結する権利としては、①婚姻費用分担請求権、②慰謝料請求権、③財産分与請求権がある。

・慰謝料請求権は、相手が浮気した場合や、相手から暴力被害を受けた場合などに認められる。

・逆に財産分与は相手に何か責任(有責性)がなくとも認められる権利である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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