2018.12.17更新

弁護士秦 

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.重婚的内縁って何だ?


 

 重婚的内縁とは、内縁夫婦の一方または双方に法律上の婚姻関係が存在する場合のことを言います。内縁の夫が既婚者のため、離婚してくれないと正式に入籍届を出せない状況といったケースなどが、これにあたります。

 

 

2.重婚的内縁は民法に違反する?


 

 日本法は、一夫一妻制度を採用しておりますので、既婚者が複数の配偶者を持つことは出来ません。このように正式な婚姻ですら重婚が禁止されているのだから、婚姻に準ずる内縁だけ重婚が認められるのはおかしいのではないかというのが問題の所在になります。

 この点に関しては、法律上の婚姻関係が形骸化し、逆に内縁関係の方が夫婦としての実態を備えている場合にまで、内縁関係を法律で保護しないのはおかしいので、一定の条件を満たす限り、重婚的内縁も認められるものとされています。

 

 

3.重婚的内縁が認められる要件は?


 

(1)重婚的内縁関係特有の要件

 そもそも、重婚的内縁の要件以前に、男女の関係が法律上の「内縁」といえる必要があるのですが、この点は後述することにして、「重婚的」内縁として保護されるための特有の要件について解説していきます。

 前述の通り重婚的内縁も一定の条件を満たす限り保護されますが、日本法が一夫一妻制度を取る以上、法律上の婚姻関係と内縁関係の両方を保護するというわけには行きません。そして、一度入籍し、正式に離婚が成立していない以上、法律上の婚姻関係が内縁関係に優先して保護されるのが原則になります。

 

 そのため、重婚的な内縁も認められるためには、法律上の婚姻関係が事実上の離婚状態(実態を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのないような状態)にあることが必要とされています。

 このような場合であれば、内縁関係を保護し、法律上の婚姻関係を保護しなくても良いと言えるのです。

 

(2)事実上の離婚状態とはどう判断するのか?

 このように重婚的内縁関係が保護されるためには、法律婚の側が「事実上の離婚状態」に陥っている必要があります。ただ、「事実上の離婚状態」と言うだけでは、抽象的で分かりにくいと思いますので、どのような要素を考慮して判断されるのかについて解説していきます。

 この点、判例は、①別居の経緯、②別居の期間、③婚姻関係を維持または修復するための努力の有無、④別居後における経済的依存の状態、⑤別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状態、⑥重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮して判断しています。

 以下詳しく見ていきます。

 

①別居の経緯

 重婚的内縁のケースでは、婚姻夫婦間では別居期間が長期に及び、同時に内縁夫婦間での同居が長期間続いていると思います。ここでの「別居の経緯」とは、婚姻夫婦が別居を始めた経緯ということになります。

 例えば、夫婦お互いが感情的になってしまっているので、お互い落ち着いて話ができるようにということで別居をスタートしたのと、夫の行動に嫌気がさして、離婚届と結婚指輪を叩きつけて別居を始めるのとでは、別居スタートの持つ意味合いが異なってくると思います。このような別居スタートの経緯も、事実上の離婚と言えるかの判断にあたって重要な要素になります。

 

②別居の期間

 別居の期間が長期間に及べば及ぶほど、その夫婦がヨリを戻す可能性はなくなっていきますので、重要な要素になります。

 なお、遺族厚生年金受給者としての条件として、厚生労働省年金局長通達は、婚姻夫婦の別居が概ね10年以上に及ぶことを掲げていますので、別居期間判断の一つの目安になると思います。

 

③婚姻関係を維持または修復するための努力の有無

 別居の前後を問わず、婚姻夫婦としての関係を維持または修復する努力や行動がなされてきたのかという点です。

 例えば、夫が勝手に家を出たが、妻が足繁く夫の別居先に足を運んで、元の生活への復帰を懇願したり、そのために、自分の悪いところを改善する努力をしたりしていた場合には、事実上の離婚状態とは評価しにくくなると思います。

 

④別居後における経済的依存の状態

 特に婚姻夫婦の妻の側が別居後経済的に自立した生活を送れているのかという点です。夫から生活費の支給が継続していたり、家賃を夫が負担しているという場合には、別居後も経済的依存が続いているということになります。

 別居後も現在まで経済的依存関係が継続しているという場合には、事実上の離婚状態とは認めにくくなります。

 

⑤別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状態

 要するに、別居後、婚姻夫婦間でメール、LINEや電話等にて直接の会話をしたことがあるのか、その頻度等、直接相手の家を訪れたり、直接会って話をしたことがあるのか、その頻度等が考慮されることになります。

 別居後数年しても断続的に電話等でやり取りをしているといった場合には、事実上の離婚状態とは認められにくくなります。

 

⑥重婚的内縁関係の固定性

 婚姻夫婦としての別居スタートと内縁夫婦としての同居スタートが時期的に一致しないことも多くあります。例えば、夫婦の別居スタートは15年前だが、今の内縁の妻との交際開始は5年ほど前というケースもあり得ます。

 そうすると、夫婦の別居期間が長くても、内縁関係についての生活基盤がきちんと調っていないというケースもあります。

「重婚的内縁関係の固定性」というのは、内縁関係がきちんと夫婦共同生活としての基盤を調えており、流動的な関係ではないと言い切れる状況なのかということです。

 

(3)内縁関係が認められることの要件とは?

 前述の通り、重婚的内縁も内縁の一種ですから、内縁の要件を満たす必要もあります。

 内縁関係とは、婚姻届を提出していないけれども、婚姻意思を持って、夫婦共同生活を営んでいる関係などと言われたりします。事実上夫婦としての生活を送っているため「事実婚」と言われることもあります。

 要するに、①婚姻意思を持って(要するに「結婚するつもりがあって」)、②夫婦共同生活を営んでいる(同居して夫婦同様の生活を営んでいる)事が必要になります。

 

 なお、この同居生活の期間については、1週間でも同居していれば内縁と認められるということではなく、3年程度が一つの目安とされています(あくまで目安ですので、内縁生活スタートの経緯や内縁生活の実態等を考慮して、より短い期間で内縁関係が認められることもあれば、逆に、より長期間を要するケースもあります)。

ちなみに、前述の通り婚姻夫婦の別居期間は概ね10年程度が目安とされていますので、この点はご注意下さい(要するに、婚姻夫婦の別居開始が10年前で、夫は実家に7年間身を寄せ、内縁夫婦の同居開始が3年ほど前という場合には、婚姻夫婦の別居10年、内縁夫婦の同居3年を両方満たすことになります)。

 

 

4.まとめ


・重婚的内縁関係も条件を満たせば、法律的に保護される。

・重婚的内縁が法律的に保護されるためには、①法律上の婚姻関係が事実上離婚状態にあること、②内縁夫婦同士が婚姻意思を持って、③夫婦同然の生活を送っていることが必要になる。

・事実上の離婚状態になっているかどうかは以下のような要素から判断される。

①別居の経緯

②別居の期間

③婚姻関係を維持または修復するための努力の有無

④別居後における経済的依存の状態

⑤別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状態

⑥重婚的内縁関係の固定性

 

 

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