2022.10.03更新

弁護士秦


こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。


(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.監護者指定事件は実は3個の事件が同時並行で審理されている


 「監護者指定審判事件」と言いますと、事件は「1個」のように誤解されがちですが、監護者指定審判事件では、子の引渡し審判事件と、これらの事件の保全事件も一緒に申し立てられているのが通常です(よく「三点セット」などと言われたりします)
 そして 保全事件(仮処分などと言ったりもしますが)は、一般的な審判事件よりも特に急いで結論を出してほしいと要求する事件ということになります。言い換えると、暫定措置として子の引渡し等の結論を出してほしいという申立てになります。

 

 

3.裁判官から「保全の結論を先に出す」と言われたがどういうことか?


(1)前述の通り、監護者指定事件では、①監護者指定事件と②子の引渡し事件、③保全事件の3つの事件が同時並行で審理されています。
 「保全の結論を先に出す」というのは、上記の①と②の事件の結論が出る前に、先に③の結論を出すということになります。


(2)要するにどういうことか?
 特にお子様をあなたが育て続けることで問題がないようでしたら、保全事件のみ先行して結論を出す必要はありません(上記の①から③の事件を同時並行で審理継続すれば良いという意味です)。
 そのため、「保全の結論を先に出す」という意味は、監護者指定を申し立てた夫側のいう通りに、暫定的にせよ、仮の監護者を夫に指定する、お子様を引き渡せという結論を出すという意味です。
 そして、保全についての結論が出た場合、これに対して不服申し立て(即時抗告と言います)をしても、執行停止が認められないと、保全に基づく執行が実行されて、お子様を夫側に引き渡さなければならなくなります。
 そのため、裁判官が「保全の結論を先に出す」と発言したことは、こちらにとって不利な結論を想定しているとイメージした方が良いです。

 

 

4.どんなケースで保全先行となるのか?


 保全先行となる事件は複数あり得るのですが、以下では代表的なものをご紹介いたします。


(1)あなたが海外での生活を近日中に予定している
 一時的に海外出張を予定しているとかであれば、それだけで保全の結論が先行する可能性は低いのですが、数年単位で海外に生活する予定であるといった場合には、仮に夫側の監護者指定事件の申立てが認められても、それを執行し得ないという事態になり得ますので、保全の結論が先行することがあり得ます。


(2)連れ去りの違法性が顕著な場合
 特に夫側に事前に別居のことを相談していなかったとしても、①これまであなたが中心となってお子様の育児を担ってきたこと、②お子様自身は別居に同意していたことという両方の条件を満たす場合には、それが「違法な」連れ去りと評価される可能性は極めて低いです。
 逆に、上記の①と②の条件のいずれか又は両方を満たさず、連れ去りの違法性が顕著だと認定されてしまいますと、裁判所も「早くお父さんのところにお子さんを返してあげたほうが良い」と考えて保全の結論を先行させることもあり得ます。


(3)虐待の危険性が高い場合
 監護者指定事件になりますと、夫側があなたの逆外を疑っている旨の主張がなされることが多いのですが、それだけで保全が認められることはまずありません。
 ただ、その虐待主張に裏付けがあり、その内容次第では裁判所が保全の結論を先行させるということもあり得ます。


(4)住居の不安定性
 あなたの住居が友人宅を転々としているというような場合には、残念ながらお子様の住環境が一定しないと言ことになり、お子様にとって少なからず悪影響となっていることは否めません。
 そのため、その内容によっては、保全の結論先行となるケースもあります。


(5)上記のような事情があればすぐに保全先行となるわけではないこと
 保全事件の結論を出すためには、監護者指定事件が認められる「蓋然性」が必要だとされています。
 すなわち、「夫側が監護者としてふさわしいという結論に至る可能性が高い」という状況が必要だということです。
 そのため、代表的なケースを前述の通りに紹介しましたが、そのような事情があっても、それまでのお子様の育児をあなたが担っていて、今後もその育児を継続した方が望ましいというケースですと、保全先行となることはほとんどないかと思います。

 

 

5.まとめ


・保全事件(仮処分などと言ったりもしますが)は、一般的な審判事件よりも特に急いで結論を出してほしいと要求する事件のことである。
・保全先行というのは、暫定的に夫側を仮の監護者に認める結論を想定している可能性が高い。
・代表的なケースとしては、以下のようなケースで保全先行とされることがあり得る。
 ①あなたが海外での生活を近日中に予定している
 ②連れ去りの違法性が顕著な場合
 ③虐待の危険性が高い場合
 ④あなたの住居が不安定な場合
・上記の①から④の事情があっても、夫側が監護者にふさわしいというような事情がないと保全先行で結論を出すことは少ない。

 

 

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