2023.01.09更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「児童虐待」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的には以下の通りです。

 

【児童虐待防止法より引用】

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

3.それぞれの詳しい解説


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。今回は、特に、親権紛争で重視されるような「児童虐待」について解説していきます。


(1)お子様への暴力
 前述の通り、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
 もちろん、このようにお子様に対して直接暴力を振るい、お子様に現実に怪我ができたり、怪我ができる可能性がある場合には、親権者として即不適格ということになろうかと思います。


 ここでの「怪我ができる可能性がある」というのは、それだけの強い威力の暴力ということですので、例えば、①DV夫がお子様を殴ったケースなどで、お子様がよけたので怪我をしなかったけれども、拳が壁に当たって壁が大きくへこんでしまったとか、②お子様が咄嗟に逃げたので怪我をしなかったけれども、DV夫が凶器を振り回したケースなどがこれに該当します。
 ただ、このようにお子様が怪我をする危険性があるような暴力でなくとも、お子様自身がDV夫からの暴力被害を記憶していて、そのことが理由でDV夫のことを怖がっているといった事情がある場合には、親権紛争においても、夫側に大きく不利な事情になります。

 

(2)お子様へのわいせつ行為

 夫側がお子様に対してわいせつ行為に及んだことがあったり、お子様自身にわいせつな行為をさせたことがあるような場合には、直接の児童虐待に該当しますので、親権者として即不適格ということになろうかと思います。
 親権紛争で争われる場合には、上記のような直接的な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。


 このようなケースでは、このような性的虐待についてどこまで客観的に証明できるのか、それがお子様にどこまでの悪影響を及ぼしているのかがキーポイントになってくるかと思います。なお、お子様の年齢によっては、性的虐待の意味合い等をお子様自身が十分認識できず、そのことについて自ら口に出して表現できないことも多いと思いますが、実際にはお子様の心の奥底に傷跡を残していることも多いので、小児心理の専門医に相談してケアをしていったほうが良いケースもあろうかと思います(当該医師から、性的虐待の後遺症が残っているような診断がなされた場合、その診断結果も重要な証拠になります)。


(3)ネグレクト
 上記の通り、児童虐待防止法にて「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」と規定されているものですが、いわゆるネグレクトのことを意味します。
 親権紛争では、同居中の言動や行動を問題にすることが多いので、ネグレクトは取り上げにくいというのが実際のところではないかと思います。


 例えば、あなたが週末出かけた場合で、夫が自宅でお子様の面倒を見ていた際、ネグレクトをしていたというようなケースですと、夫がそのようなことを繰り返していた場合、残念ながら、あなた自身に対しても、裁判所は「どうしてそんな夫にお子さんを任せて出かけたのか」ということで責められる危険性が高いのです。
 このように同居中の夫側のネグレクトは、あまり極端なものであった場合には、どうしてあなたが防止できなかったのか、ケースによっては、防止する意識が薄かったのではないか?とか、黙認していたのではないか?と裁判所から言われてしまい、あなた自身の育児の問題点とされてしまう危険性もあるのです。


(4)お子様への暴言・面前DV
 児童虐待防止法2条4号は、DV夫からお子様への直接の暴言と面前DVを児童虐待と定めています。以下では暴言と面前DVに分けて解説していきます。


ア 暴言
 児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義しています。要するに単なる暴言ではなく「著しい」暴言のみを対象にしているのです。
 ただ、その暴言が「著しい」ものなのかの区別は非常に難しく、こと親権紛争では、著しいものかどうかを問わず、暴言を受けることでお子様にどのような悪影響が生じてしまっているのかという観点を重視する傾向が強いです。実際のところ、DV夫が発した口頭の言動を細かく確定することは不可能に近いので、お子様自身がどう受け取ったのか、どう感じているのかといった観点から検討していく他ないのです。
 特に、お子様が①DV夫からの言動が怖かったとか、そのことで夜なかなか寝付けなかったといった話をしているとか、②DV夫の言動を真似て他の友人にそのような発言をしてしまったといった場合には、DV夫側は親権紛争で大きく不利になるケースが多いと思います。


イ 面前DV
 面前DVは、児童虐待防止法上、児童虐待と位置付けられているのですが、親権紛争では、あまり重視されない傾向が強いです。裁判所は、妻側に対する暴力は、夫婦間の問題と考える傾向が強く、そのことがストレートに監護者としての適格性に大きな影響を与えないと考える傾向が強いのです。
 もちろん、面前DVでお子様の心身に具体的な悪影響が生じてしまっているといったケースでは、そのような事情も親権紛争にあたって重視されますが、そうでない場合には、残念ながら、あまり重視されないとお考え下さい。

 

 

4.親権紛争で争っていくにあたっての基本的な視点


 このように児童虐待のお話をしますと、「夫がそのような発言に及んでいたことがないかよく思い出してみます」と反応なさる方が非常に多いのですが、どちらかと言いますと、昔のことを思い出すというよりも、「どのような裏付けがあるか」をしっかりと確認することの方が重要性が格段に高いです。
 裏付けもなく言い分を述べても、DV夫側は「そのような事実はない」と否定してくることが多いので、そうなると、裁判所も、そのような言動があったかなかったかを明確に判断できないのです。

 

 

5.まとめ

・児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義している。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV
・親権紛争の中での児童虐待の重要性は、児童虐待防止法の定めとずれる部分もあるので注意が必要である。
・親権紛争では、「過去の児童虐待をよく思い出す」というよりも「その裏付けを探す」ということの方が、重要性が高い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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