2020.01.20更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。本当に役に立つ詳しいブログ解説を目指して解説していきます。

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1.監護者指定事件は調停前置ではない。


 

 離婚について調べていると、手続のステップは、①協議→②調停→③裁判の3つ手続きを経るという記事を見かけることもあるのではないでしょうか。

 そして、離婚の場合、いきなり離婚裁判を起こすことはできず、必ず事前に調停を起こしておく必要があります(これを「調停前置主義」と呼びます)。

 

 これに対して、監護者指定事件には、調停前置主義が適用されませんので、調停を経ずにいきなり審判を起こすことができます。

 あまり聞き慣れない「審判」という手続がどのようなものなのか調停と比較しながら解説していきます。

 

 

2.審判と調停の違い


 

 審判と調停との間にはいくつもの違いがあるのですが、大きな違いとしては以下のような点が挙げられます。

①審判手続は審判を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。

②審判は原則法廷で行われますが、調停は調停室で行われます。

③審判には即時抗告という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできません。

④審判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではありません。

⑤審判では基本的に当事者本人が出席する必要がありませんが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要があります。

 

 それぞれについて具体的に説明して行きます。

 

(1)審判手続は審判を目指す

 冒頭でも説明しましたとおり、審判手続は審判を得ることを目的としており、審判が言い渡されて、その内容が確定すると、不満のある当事者も審判の内容に従わざるを得なくなります(そのため、イメージとしては「判決」に近いです)。

 調停の場合には、相手の提案に納得が行かない場合には、納得いかない旨を述べれば調停は成立しませんので、相手の言い分を強要されることはありませんので、この点が審判と調停の一番大きな違いと言えます。

 

(2)審判は原則法廷で行われる

 調停は調停室という会議室のような部屋で行われるのですが、審判は原則として法廷(テレビドラマなどに出てくるのは通常この「法廷」になります)で行われます。

 但し、監護者指定事件においては、調査官調査が重要な役割を果たしますが、その際の調査官面接などは、会議室のような部屋で行われます。

 

(3)審判に対しては即時抗告という不服申立ができる

 審判手続の結論として審判が言い渡された場合でも、その審判内容に不満がある当事者は、即時抗告をして、その判決内容を争うことができます。

 これに対して、調停が成立した場合、後で気持ちが変わったとしても調停の内容を覆すことはできません(不服申立手段がありません)。

 なお、審判手続の中で当事者間の話し合いが上手くいった場合には、裁判官が審判手続きを調停手続に変更した上で、調停が成立することがありますが、この調停に対しても不服申立ができませんので、注意が必要です。

 

(4)審判では書類のやり取りが中心になる

 審判では、最終的には裁判官が審判を書くことになりますので、当事者の言い分が不正確にならないように、お互いの言い分は主張書面といった書面に書き起こして主張してゆくことになります。

 離婚調停の場合には、特に調停委員が希望する場合を除いて、言い分は調停室内で口頭にて述べられますので、この点も審判との違いになります。

 このように審判では本人の言い分が裁判官にきちんと届くように書面をまとめることが非常に重要になりますので、審判期日当日というよりも当日よりも前の主張書面の準備が重要になります。

 

 なお、監護者指定事件では、最終的には調査官の調査報告書が作成されますので、書面提出のみではなく、調査官面接や自宅訪問が実施され、その際の様子も重要なポイントになります。

 ただ、このような調査官調査に入る前に、しっかりとこちらの言い分を裁判官や調査官にぶつけ、必要な裏付け資料は全て提出しておくことが最重要になりますので、いずれにしましても、口頭のやり取りではなく、書類のやり取り、特に裏付けのやり取りが重要であるという点は調停との大きな違いです。

 

(5)審判には原則本人は出席しなくて良いし、通常は出席しない

 調停手続の場合、仮に弁護士が代理人に就いたとしても、本人が調停手続に出席する必要があります(弁護士も同席します)。

 これに対して、審判の場合、代理人が法廷に出席すれば良く、本人が出席する必要はありません。

 審判の場合、上記の通り、書類のやり取りが中心になりますので、期日当日本人に事実確認をする必要がなく、御本人に出席していただく必要はなくなるのです。

 

 

3.審判の具体的イメージは?


  

 審判というと、よくドラマでやる様な相手を証言台に立たせて尋問することをイメージする方も多いと思いますが、実際の審判は大きく異なります。

 監護者指定事件の大きなイメージとしては、①第1回期日までにお互いの言い分をほぼ言い尽くしてしまう→②調査官による調査の実施(調査官面接や自宅訪問、関係先訪問等が実施されます)→③調査報告書に基づく調停の勧告もしくは審判の言い渡しという流れになります。

  お互いの言い分の矛盾した点等については、調査官面接時に調査官が丁寧に事情を確認していきますので、通常証人尋問のような手続は実施しないことの方が多いです。 

 

 

 4.まとめ


・審判手続は調停と比較してみてみると分かりやすい。

・比較の結果の大きな相違点は以下のようなものである。

①審判手続は審判を目指すものであるのに対して、調停は当事者間の合意を目指す。

②審判は原則法廷で行われますが、調停は調停室で行われます。

③審判には即時抗告という不服申立ができますが、成立した調停に対する不服申立はできません。

④審判は書類の提出をメインで行い、調停のような口頭での説明がメインではありません。

⑤審判では基本的に当事者本人が出席する必要がありませんが、調停では基本的に当事者本人が出席する必要があります。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2020.01.13更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。

 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。

 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

 

(2)親権の意味のおさらい

 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。

 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。

1)身上監護権

2)財産管理権

3)身分行為の代理権

 要するにこれらの権利をまとめて「親権」と呼んでいるということです。

 これらの3つの権利についてそれぞれ説明していくと以下の通りです。

 

 まず、身上監護権とは、お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。

 財産管理権とは、お子様の財産を管理についての代理権限を言います。馴染みがある例ですと、TSUTAYAなどでお子様だけでトレーディングカードやゲームソフトなどを売却しようとすると、親御さんの同意を得て下さいと言われると思いますが、これは、親権者に財産管理権があるため、お子様だけで高価な物品の処分等ができなくなっているのです。

 身分行為の代理権とは、例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等をイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。

 

(3)要するに監護権って?

 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

 監護権が問題となるのは、奥様がお子様を連れて別居を開始してしまったというように、ご夫婦が別居状態になっているときに、旦那様と奥様どちらがお子様を育てていくのが適切なのかということで争われるケースが大半です。

 

 

2.子の監護者指定って?


 

 夫婦が別居している場合、当然お子様はどちらか一方の家で暮らしていくことになります(頻繁な面会交流をしているケースもあるでしょうが、普段の寝起きをする場所としては通常夫婦どちらかの家と言うことになろうかと思います。)

 そして、このようなお子様の生活そのものに不満がない場合には、敢えて監護権者指定を申し立てる必要はありません。

 

 しかし、例えば、普段お子様の面倒をほとんど見ていなかった旦那様が勝手にお子様と一緒に自宅を出てしまったとか、逆に、DV夫から妻だけが追い出されてしまった(お子様を自宅に残さざるを得なかった)というように、現在のお子様の生活が子の福祉にかなっていないという状況に陥っているというケースもあります。

 これらのような場合には、お子様のために、現在の監護状況を脱し、お子様を本来あるべき生活環境に戻す必要があります。

 

 このようにして主たる目的としては、お子様を合法的に引き戻させるべく申立を行うのが子の監護者指定(+引渡)となります(このように通常はお子様の引渡をさせる必要がありますので、監護者指定と共に引渡も申し立てていくことになります)。

 

 

3.一般的に事件の数は3個になる


 

 前述の通り、現在もお子様の生活環境に問題があるので、そのお子様をこちらに戻させることを主目的として監護権者指定の申立は行われます。

 そして、通常、このような状況は早急に改善する必要があります。

 

 そのため、監護権者指定を申し立てる際には以下のように事件数は3個となることが多いです。

1)監護者指定

2)引渡し

3)保全処分

 

 1)は前述で説明したように、夫婦共に親権を有する状態から、一方のみに監護権を付与する手続です。

 ただ、監護者が決まっただけでは、相手が任意に引渡に応じないケースもあります。そのため、合法的にお子様をこちらに引き戻させるために、2)の「引渡し」も請求するのです。

 さらに、このようなケースは緊急性が高いものですから(このような状態を長期間放置するとお子様の身の安全が保障できないことになるため)、保全処分、要するに緊急措置として暫定的に仮の監護者を定めて欲しい、暫定的に仮の引渡をして欲しいという申請も出すのです。

 と言いますのは、本来の正式な審判は、慎重に審理しなければなりませんので、結論が出るまでに時間がかかってしまいます。ただ、時間がかかればかかるほどお子様は劣悪な環境での生活を余儀なくされると言うことになってしまいますので、至急暫定的にでもお子様を正常な生活環境に戻させる処分が「保全処分」なのです。

 

 

4.まとめ


・親権には、大きく分けて身上監護権、財産管理権、身分行為の代理権という3つの権利が含まれる。

・監護者指定とは、そのうちの「身上監護権」を夫婦のどちらか一方に与えるものである。

・監護者指定は、別居によりお子様が夫婦どちらか一方の生活だと劣悪な環境での生活になっているといったケースでお子様を救出する手段である。

・そのため、監護者指定は、①監護者指定、②子の引渡し、③保全処分という3つの事件が同時並行で進むことが多い。

 

 

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