2021.11.22更新

弁護士秦


こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「必要な準備事項」にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 


2.実際のところ、妻側の勝率は?



(1)あなた自身がお子様を今育てているケースでの勝率
 以下は、あなた自身が現在お子様と暮らしており、お子様自身もその暮らしに大きな不満を持っていないという前提でのお話になりますが、①から④の点をしっかりと準備しておけば、勝訴の可能性はかなり高いと考えてよいと思います。

① しっかりと陳述書の準備を整える
② しっかりと家庭訪問に備える
③ 学校・保育園への調査に備える
④旦那側の言い分に対する反論をしっかりと実行する

 

(2)しっかり準備することが前提だとしても、どうして「勝訴の可能性が高い」のか?
 結論から申しますと、あなたが現在お子様と一緒に住んでいるということが大きなアドバンテージになっているからです。
 現状の親権者指定の手続きにおいては、「今誰がお子様を育てているのか」という点を最も重視します(法律用語的には「現状の監護状況」などと言ったりします)。
 そのため、今現在あなたがお子様を育てているという事情がかなり有利に働くのです。




3.勝訴を確実にするためにどのような準備をすべきか?



 前述の通り、あなたの方が有利だとしても、手続きの中でしっかりと必要な準備を整えていく必要があります。
 実際に必要な準備は、離婚に当たっての手続ごとに異なってきますので、大まかに以下の①から③の段階に応じて解説していきます。
①旦那側から監護者指定審判申立てを受けてしまい、審判手続き中の場合

②調停手続き中の段階

③訴訟手続きに突入した段階

 

 

4.旦那側から監護者指定審判申し立てを受けてしまった場合


 監護者指定審判とは、親権の中でもお子様の身の回りの世話等を行う身上監護権を取り出して、その監護者を決定する手続きです。
 一般的には、あなたの別居に不満を持っている旦那側から、監護者の指定及び子の引き渡しを求める手続きになります(要するに旦那側が自分で育てていきたいのでお子様を引き渡すよう求めてくる手続きということです)。
 この場合には、こちらから先行して離婚調停を起こしていたり、離婚調停の準備中でも、この監護者指定審判手続きが先行して進行していくことになります。


 この監護者指定事件は、今後の親権紛争の今後を占う試金石ともいえるような極めて重要な手続きになりますので、しっかりと勝っておくべき手続きということになります。
監護者指定事件は、通常保全事件が同時に申し立てられており、通常の事件よりも進行が速いこと、事件の専門性が要求されるため、あなたも弁護士を頼むことを強くオススメします。
それでは、以下、監護者指定手続き内において必要な準備について解説します。


(1)要点①)しっかりと陳述書の準備を整える
 正式名称は「子の監護に関する陳述書」という書類になるのですが、監護者指定手続きにおいて準備すべき書類の中でも、一番大事な書類がこの「子の監護に関する陳述書」になります。

 「子の監護に関する陳述書」には主に以下のような記載が必要になります。どの記載項目も大切ですので、しっかりと記載する必要があるのですが、その中でも特に「これまでのお子様とのかかわり方」の記載が非常に重要になりますので、しっかりと詳細に記載する必要があります。
 ・あなたの生活状況(学歴・職歴、現在の仕事の状況、経済状況、健康状態)
 ・お子さんの生活状況(生活歴、これまでのお子様とのかかわり方、生活スケジュール、健康状態、通園・通学状況)
 ・監護補助者(どのような方がサポートしてくれるのか)
 ・今後の監護計画(今後お子様をどのように育てていくのか)


(2)要点②)しっかりと家庭訪問に備える
 監護者指定審判手続き内での「家庭訪問」というのは、家庭裁判所調査官が直接あなたの自宅を訪問し、ご家庭内の様子やお子様の様子等を直接確認することを指します。
 大半の監護者指定審判手続きでは、家庭訪問が実施されるのですが、家庭訪問の日時はこちらの都合も踏まえて日程調整しますので(抜き打ちで家庭訪問が行われることはないという意味です)、家庭訪問に向けては事前にしっかりと準備しておく必要があります。

 実際の準備のポイントは、前述の「子の監護に関する陳述書」の内容を踏まえて、こちらにとって有利な点をしっかりとアピールし、こちらに不利になりそうな点をしっかりとカバーするという準備が必要になります。
 なお、家庭訪問の際には、監護補助者とも直接会って話をしたいと要望してくることもありますので、必要に応じてその準備も必要になります。

(3)要点③)学校・保育園への調査に備える
 特にお子様が小学校低学年よりも小さいご年齢の場合、小学校や保育園の調査が行われるケースが多いです。
 このような調査は、受け入れる小学校・保育園側の受け入れ体制にもよるのですが、通常は家庭裁判所調査官が直接小学校や保育園に足を運んで、担任教師・保育士や校長・園長から話を直接聞きたいという話になるケースが多いです。

 お子様が元気に登校・登園しており、小学校・保育園での様子にも特に大きな問題がないということでしたら、不安はないのですが、不登校・不登園、もしくは登校しぶり等がある場合には、事前に担任教師や担任保育士とも相談等をしておく必要があります。

(4)要点④)旦那側の言い分にしっかりと反論する
 上記の要点①から③の準備をしっかりとしておけば、基本的にはあなたの方が有利だと考えて大丈夫だと思います。
 ただ、同居中の家庭での状況や奥様のご体調、お子様の特性等、事件によっては、旦那側が主張した言い分が事件のカギを握るというケースも少なからずあります。
 そのため、上記の要点①から③をしっかりと押さえたから、それで準備完了ということではなく、相手の言い分に対する反論準備もしっかりと行う必要があります。

 



5.調停手続き内での準備


 前述のような監護者指定事件がなく、あなたの方から離婚調停を起こし、その離婚調停の手続進行中というステップです。
 離婚調停手続き中という場合、①旦那側が離婚拒否の姿勢なのか、②旦那側が離婚には応じる姿勢なのかによって進行が大きく異なります。


(1)旦那側が離婚拒否の姿勢の場合
 この場合、離婚が成立することを前提とする親権や財産分与といった話を前進させることができません。そのため、一般的には、あなたの方で離婚原因を詳しく説明したり、旦那側で復縁のための条件提示をするなどします。
 従って、ほとんど親権の話題は出ずに、調停が進捗します。
 もちろん、離婚以外に、あなたの方から婚姻費用分担調停を申し立てていれば、その件も議論になりますし、旦那側が面会交流を主張してきた場合には、面会交流条件等も議論対象になります。
 調停手続きの中で旦那側が離婚に応じる姿勢を見せればよいですが、終始離婚拒否の姿勢を貫いた場合には、(親権の議論はほとんどしないまま)離婚調停は不成立によって終了してしまいます。


(2)旦那側が離婚には応じる姿勢の場合
 この場合でも、夫婦で親権についての意見の対立が大きい場合には、通常、無理に親権の議論を進めようとするのではなく、財産分与の議論を先行して進めるケースが多いです。
 婚姻期間がそれなりの期間に及ぶ場合、どのような財産が財産分与対象になるのか、それをどう評価するのかといった点でお互いの意見が対立することも少なくなく、そのあたりの議論で期日を重ねていくことになるのです。
 このようにみると、あなたにとって一番心配な親権の問題が後回しになっていて不安に感じるかもしれません。しかし、このように時間が経てば経つほど、あなたは、お子様の監護実績を積み上げていくことができますので、一層有利になっていきます。そのため、財産分与などの議論をしている際には、財産分与の議論に集中して対応するという形で問題ありません。


 財産分与といった点の整理が終了した段階で、家庭裁判所調査官による調査を実施するかといった議論が出てきます。その後の進行は、大まかに①調停手続きの中で家庭裁判所調査官による詳しい調査を行う、②調停は裁判ではないので、詳しい調査を実施せずに調停を不成立にしてしまうという二つの進め方があります。
いずれにせよ、①のケースでも、財産分与等の整理が完了した段階で、前述の「子の監護に関する陳述書」の準備をしたり、家庭訪問への準備を進めれば問題ありません(これらの準備を要するという点では、親権の指定と監護者指定は類似しています)。
 前述の監護者指定事件は非常にスピーディーに手続きが進みますが、離婚調停事件は、親権以外の話題の整理を行った後、順を追って手続を進めていきますので、手続きの進行に応じて必要な準備を進めていけば問題ありません。
 そして、必要な準備は、監護者指定審判事件での準備事項と大きく変わりません。

 

 

6.訴訟手続き内での準備


 離婚訴訟がスタートした場合、序盤は、離婚の当否が争点になります。旦那側が離婚を特に争わない場合には、踏み込んだ議論をしないことが多く、旦那側が争う場合には、しっかりと離婚原因の主張・立証を展開していくことになります。
 その後は、財産分与の争点整理を行った後か、これと同時に並行で親権の主張整理を実施していくことになります。
 訴訟の場合も、順を追って手続を進めていきますので、手続きの進行に応じて随時必要な準備を進めていけば問題ありません。

 

 

7.まとめ



・旦那側から監護者指定事件を起こされた場合、以下の準備が必要である。
① しっかりと陳述書の準備を整える
② しっかりと家庭訪問に備える
③ 学校・保育園への調査に備える
④旦那側の言い分にしっかり反論する

・離婚調停手続き中で親権紛争になった場合、大まかに以下の二通りがある。
 ①旦那側が離婚に応じない場合、調停手続き中では親権の議論はほとんど進展せずに調停不成立になる。
 ②旦那側が離婚に応じる場合、調停手続き内で親権調査まで進むことの方が多い。(訴訟に持ち越しになる場合もある)

・離婚訴訟手続き中は、離婚の当否の議論後に準備を要する。

 



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投稿者: 弁護士秦真太郎

2021.11.15更新

弁護士秦


こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配


 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、妻側の勝率にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 


2.実際のところ、妻側の勝率は?(あなたが現在お子様を育てている場合)



(1)あなた自身がお子様を今育てているケースでの勝率
 以下は、あなた自身が現在お子様と暮らしており、お子様自身もその暮らしに大きな不満を持っていないという前提でのお話になりますが、①から④の点をしっかりと準備しておけば、勝訴の可能性はかなり高いと考えてよいと思います。

① しっかりと陳述書の準備を整える
② しっかりと家庭訪問に備える
③ 学校・保育園への調査に備える
④旦那側の言い分に対する反論をしっかりと実行する

 

(2)しっかり準備することが前提だとしても、どうして「勝訴の可能性が高い」のか?
 結論から申しますと、あなたが現在お子様と一緒に住んでいるということが大きなアドバンテージになっているからです。
 現状の親権者指定の手続きにおいては、「今誰がお子様を育てているのか」という点を最も重視します(法律用語的には「現状の監護状況」などと言ったりします)。
 そのため、今現在あなたがお子様を育てているという事情がかなり有利に働くのです。




3.実際のところ、妻側の勝率は?(あなたが現在お子様を育てていない場合)



(1)まず、あなたが現在お子様を育てていない状況になった経緯が非常に重要になります。大きく分けると、①旦那側がお子様を連れ去ってしまったケースと、②(体調や仕事その他の理由で)あなた自身が旦那側にお子様の監護を委ねたケースの二つに分かれると思います。


(2)旦那側がお子様を連れ去ってしまったケース
 この場合、旦那側がお子様の育児を一手に担うという状況が長期化することを防止する必要があります(この状態を認めると、親権紛争で大きく不利になってしまうため)。
 そのため、この場合には、離婚や親権の紛争の前に、まずは、監護者指定・子の引き渡し審判の申し立てをしていくことになります。
 要するに、離婚が成立する前には夫婦がお子様の共同親権をお互いに持っていますが、その中でもお子様の実際の身の回りの世話をする方(監護者)を決めるよう裁判所に求めるのです。
 この監護者指定手続きで勝訴することができれば、今後の親権紛争でも一歩リードすることができます。


 監護者指定手続きの勝率については、①別居前の監護状況(要するに、夫婦どちらがメインで子育てに関わってきたのか)、②連れ去りの経緯、③お子様の意思等を考慮して決定しますので、一概にあなたが有利と言い切れるものではありません。
 いずれにせよ、監護者指定審判を申し立てるにあたっては、弁護士はほぼ必須になりますので、弁護士に頼む前に、あなたの具体的な事情を説明して、勝率等を尋ねてみたほうが良いと思います。


(3)あなた自身が旦那に育児を委ねたケース
 この場合には、①あなたが育児を委ねた経緯・理由、②旦那側のみが育児を担ってきた期間がどのくらいの期間に及ぶのか、③現在はあなたがお子様を育てられる事情の詳細、④お子様の意思等を考慮して夫婦どちらが親権者として適格か判断されます。
 特に、旦那側のみで育児をしていた期間が長期間に及べば及ぶほどこちらには不利になっていきます。
 この点も、上記の①から④を含めた様々な事情を考慮して、親権者の適格性が決まりますので、詳しくは弁護士に相談することをオススメします。

 

 

4.現在あなたが育児を担っていないけれども、確実に親権を獲得したい場合


 前述のように、現在あなた自身が育児を担っていないという事情はかなり不利に働いてしまいます。
 そのため、あなたが旦那側に明確に離婚等の話をしていない場合、旦那側と話し合って、旦那側の了解のもと、こちらがお子様の育児を担っていくという形を作れた方が良いです。
 このようにしてあなただけがお子様の育児を担うという期間をある程度長期化させれば、親権獲得にあたってかなり有利に働くことが多いです。
 他方で、あなたがお子様を育てていれば何でも良いということではありませんので、①無理やりあなたのところにお子様を連れてくるというやり方は逆に不利に働く危険性がありますし、②お子様と暮らす以上は、お子様の衣食住をしっかりと面倒見る必要があります。
 そのような前提で、旦那側と話ができるようであれば、旦那側と話をして、あなたがお子様を育てていくという形を整えてください。

 

 

5.まとめ


・現状あなたが子育てを一手に担っている場合には、親権の勝率はかなり高いと考えてよい。
・現状あなたが子育てを担っていない場合には、大きく以下の2パターンがある。
① 旦那側が連れ去った場合→まずは、監護者指定審判事件の対応を要する。
② 旦那側にこちらから委ねた場合→その経緯等の詳しい事情の確認が必要になる。
・現状あなたが子育てを担っていない場合、旦那側の了解を得られるならば了解を得て貴方だ子育てを一手に担うという形を整え、それをある程度長期化させたほうが良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2021.11.01更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋(神田至近)の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかり勝つ」をモットーに、分かりやすく解説していきます。

 

 

1.インターネットを調べても情報があふれていて結局よく分からない。


 いよいよご夫婦の離婚が避けられない状況になると、今後お子様は夫婦のどちらが引き取って育てていくのかについて決めていく必要があります。
 このような「親権者」を夫婦のどちらに決めるのかについて、インターネットなどを調べていると、色々な情報があるため、「逆に分かりにくい」とか「結局、夫婦のどちらが有利なのかがよく分からない」といった声が寄せられることもあります。
 そこで、今回は、親権というテーマに絞って、どのようなポイントをもとに親権者が指定されるのかを解説していきたいと思います。

 



2.親権者として指定されるための7個のポイント




 親権者指定のポイントは実際には多岐に渡るのですが、その中でも特に重要なポイントは以下の6つの点に集約できると思います。
1)現在の監護状況

2)(別居前の)監護実績

3)連れ去りの違法性

4)過去の児童虐待の有無・程度

5)子供の意思

6)今後の監護計画

7)面会交流の姿勢
 以下でそれぞれについて詳しく解説していきます。

 

(1)現在の監護状況
 「現在の監護状況」とは、現時点で夫婦のどちらがお子様と一緒に生活し、育児を担っているのかという点です。例えば、奥様がお子様とともに別居を開始し、以後一緒に生活しているという場合には、「奥様が現在お子様を監護している」ということになります。
 親権者を定めるにあたっては、このような監護が現在まで相当の期間に及ぶ場合には、「今お子様を育てている親」の方を有利に扱うことが非常に多いです。これは「継続性の原則」と言われたりもしますが、これまで継続的に育児を担ってきた場合には、その親を親権者とする方が、お子様も混乱しないし安定した生活が送れるということです。


 親権者指定にあたって、一番重視される要素と言っても過言ではないと思います。
 なお、現在の監護状況については、あなたがお子様と一緒に生活していればなんでも良いというわけではなく、お子様が健全で安定した生活を送れているのかについては、家庭裁判所調査官が家庭訪問をして確認に来るということも多いです。
 調査官が家庭訪問した際には、室内の様子やお子様の暮らし向き、お子様の様子や調査官と接したときの反応等を見ていくことになります。



(2)(別居前の)監護実績
 (別居前の)監護実績というのは、お子様と同居中、どの程度お子様の身の回りの世話をしてきたのかということです。
ポイントとしましてはお子様の衣食住にどの程度関わってきたかという視点で考慮されることが多いです。要するに、①「衣」とは、お子様の普段着るものや身につけるものを誰が購入し準備していたか(これには学校・保育園の制服や学校用品等の準備も含む)、小さいお子様だと普段のお着替えやおむつ替えは誰が行っていたのか等のことを指し、②「食」は普段のお子様の食事の支度を誰がしていたのか、小さいお子様だと授乳やミルク上げを含むことになります。③「住」はお住まいの賃貸名義が誰かという話ではなく、普段の躾や教育を誰が行っていたのかという問題です。
 過去の監護実績についてはご夫婦で主張が大きく対立することも多いので、保育園の連絡帳の記載内容等が重要な判断証拠になることも多いです(要するに保育園の連絡帳を夫婦のどちらが記入し、どのような記入がなされているか)。



(3)連れ去りの違法性
 離婚紛争が起きているときには、夫婦が別居状態にあることの方が多いかと思います。そうしますと、ご夫婦のどちらか一方がお子様と一緒に別居を開始しているということになりますが、この別居が「連れ去り」にあたるとして紛争になることもあります(但し、連れ去りかどうかといった問題は監護者指定事件で問題になることが多く、親権紛争では問題にならないこともあります)。
 「連れ去り」という主張は、奥様が旦那様に事前に伝えずに別居を始めたときに、旦那様側から主張されるケースが非常に多いのですが、親権紛争にあたって重要な争点になることもありますので、詳しく解説します。


1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 お子様と一緒に別居することを余儀なくされたとしても、その態様によっては、お子様の心情をひどく害してしまうというケースもありますので、違法な連れ去りかどうかの重要なポイントの一つが、その「態様」ということになります。
 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。

2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 あなたが別居を余儀なくされた側だとしても、そのことにお子様が納得しないケースもあると思いますし、ある程度の年頃にいったお子様ですと、明確に別居に反対したり、自宅に残るという意思表示をするケースもあると思います。
 このようなお子様の意思に反して別居を始める場合、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。
 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は就学年齢(小学校入学後)以上を一つの目安として確認することが多いと思います(お子様の意思確認については、離婚調停で親権が争われる場合には、就学年齢が一つの目安となることが多いですが、離婚訴訟の場合には、10歳以上が一つの目安になることが多い印象です)。

3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 前述の通り、お子様が就学年齢(または10歳)以上の年齢の場合には、一般的にお子様の意思や別居時の様子についてお子様から直接話を聞くことができますが、お子様の年齢がまだ小さい場合には、お子様の意思確認をすることはあまり期待できません。
 そのため、一般的には、普段お子様の面倒を見てきた奥様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」とは評価されないケースが多いのが実情です。他方、普段お子様の面倒をほとんど見てこなかった旦那様がお子様と一緒に別居を開始したという場合には、「違法な連れ去り」のおそれがあると見られるケースが相対的に多いように感じます。

4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 奥様がお子様と無断別居したケース、要するに事前に旦那様に何も別居等の相談をせずに別居を開始したケースでは、旦那様側では「違法な連れ去りだ」と声高に主張なさる方も多いのですが、無断別居と言うだけでは、直ちに違法な連れ去りとは言えないことが多いです。
 「違法な連れ去り」かどうかは、前述のポイント1からポイント3までを総合考慮して決定することが多いです。



(4)過去の児童虐待の有無・程度
 例えば、ご夫婦のどちらかが、お子様に対して暴力を振るってきた過去があり、そのことでお子様が怪我をしたとか、心の傷を負ってしまったと言った程度に至っている場合には、明確な児童虐待がありますので、そのような親に監護権を認めることは不適切ということになります。
 そのため、極端な虐待があったような場合には、そのことも親権者指定に影響を及ぼします。
 ただ、暴言を吐くことがあったというケースですと、その内容にもよりますが、多少汚い言葉を使ったことがあったとしても、そのことのみで親権者として不適格とされるケースは少ないかと思います。



(5)お子様の意思
 お子様が15歳以上の場合、裁判所はお子様の意向を確認しなければならない義務があり、そこでお子様の意向が重視されることになります。
 また、15歳になっていなくとも就学年齢(または10歳)以上の場合には通常はお子様の意向を確認し、その意向が親権獲得に影響することが多いです。



(6)今後の監護計画
 今後の監護計画というのは、要するに、今後どのようにお子様を育てていく予定なのかということです。これだけですとまだ抽象的でわかりにくいと思いますので、より具体化しますと、①今後のお住まいに変更があるのかどうか、②今後の生活状況に変化があるのかどうか、③今後のお子様の教育環境に変化があるのかどうか、④その他の変化があるのかどうかという点が検証されることになります。


 例えば、離婚に伴う財産分与で自宅を売却する場合には、引越しが必須になりますので、上記の①の点で、住む場所が変化していくわけですし、例えば、引越しに伴って、親せきの家で一緒に住むことになれば、上記の②の点で、一緒に住む人間に変化が生じているということになります。また、引越に伴って、小学校も転校が必要になるのであれば、転校先の学校にお子様が馴染むことができるのか、新しい学童でも問題なく過ごすことができるのかという点などが問題になっていきます。
 また、上記の④の点としては、例えば、あなた自身がパート勤務から正社員になるとか、転職するといった場合には、これまでとは生活スケジュールや経済力に変化が生じる場合があります。
 これらのことを踏まえ、今後も現在と同様にお子様を育てていけるのかという点が検討されることになるのです。

 

(7)面会交流への姿勢
 一般的に裁判所は面会交流に積極姿勢です。と言いますのは、面会交流を通じて、お子様は両親の愛情を感じることで安心や自信を得られる、自分のルーツを知ることで人間関係の多様化を図れるといった利点があるからです。
 そのため、しっかりとした理由もなく面会交流を全面的に拒否するとか、理由があいまいであったり裏付けが不十分な場合には、そのことが親権者指定にあたって不利に働くこともあります。
このような面会交流の消極姿勢が親権者獲得にどの程度の影響を及ぼすかを非常に気にされる奥様も多くいます。ただ、率直に言いますと、しっかりとした理由があって面会交流の拒絶姿勢を取ることは、お子様を守ることにもつながりますので、親権獲得にあたってあまり大きな影響を与えないことの方が多いかと思います。

 

(8)その他
 上記の重要判断要素のほかに、ネットの記事等を見ておりますと、①母性優先の原則とか、②兄弟姉妹不分離の原則といった点を掲げている記事も見かけますので、以下ご説明いたします。


①母性優先の原則とは?
 母性優先の原則とは、特に乳幼児については、原則として母親が親権者になることが子供のためになるという考え方を言います。
 かなり以前の判例ですと、この母性優先の原則を大きな根拠にする裁判所等もありましたが、近年は、母性優先の原則は影を潜めている印象です。
  もちろん、お子様とお母様の関係性を無視するということではなく、その実態に応じて判断するという意味です。実際には、前述の現状の監護状況の確認にあたっては、家庭訪問時にお子様がお母様をどれほど慕っているのかといった関係性も確認することが多いです。「母親である」ということで紋切り型に決めてしまうのではなく、実際の母子関係を見極めて実態に則して判断されることになるのです。


②兄弟姉妹不分離の原則とは?
 兄弟姉妹不分離の原則とは、ご夫婦のお子様が二人以上いらっしゃるときに、その兄弟姉妹「全員」の親権者を夫か妻どちらかに委ねるべきで、例えば、長男の親権者を夫、次男の親権者を妻というように分離すべきではないという原則のことを言います。
 近年は、この兄弟姉妹不分離についても、お子様が複数いる場合には必ず一方に全てのお子様の親権を委ねるというように紋切り型で判断することはかなり少なくなっている印象です。これについても、兄弟姉妹の関係性等も考慮の上で、実態に則して判断されています。

 

 

3.まとめ



・親権者は以下の7個のポイントで決定することが多い。
1)現在の監護状況

2)(別居前の)監護実績

3)連れ去りの違法性

4)過去の児童虐待の有無・程度

5)子供の意思

6)今後の監護計画

7)面会交流への姿勢
・最近は、母性優先の原則や兄弟不分離の原則で紋切り型で親権を決めることはほとんどなくなっている。

 



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