2023.01.30更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?



(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 



2.お子様の意向確認


 監護者指定事件では、お子様が就学年齢以上の場合には、その意向確認を実施するケースが大半で、就学年齢未満の場合でも、お子様の理解力によっては、その意向確認を実施するケースも多々見受けられます。
 お子様の意向確認は、まだ年齢が小さい子の場合には、家庭訪問時にご自宅で行うこともありますが、年齢が上がっていくにつれて、裁判所の一室で行うことが多いです。
 このような意向確認は、家庭裁判所調査官が行います。

 

 

3.洗脳されていると指摘されるのはどのような場面か?


 前述のような裁判所での意向確認の際のお子様の発言について、洗脳されているとか、洗脳されている可能性があるので注意して子供から話を聞いて欲しいと言われることが多いです(これを、【ケース1】とします)。
 それ以外には、同居中のお子様の音声などが録音データとして証拠提出された際、それがお子様の本意ではないとか、洗脳されていると指摘されるケースもあります(これを【ケース2】とします)。
 最後が、事後的にお子様の手紙等が出されるケースです(これを【ケース3】とします)。

 このように夫側の主張のタイミング等によって位置付けが異なりますので、上記の【ケース1】から【ケース3】に分類した上で、それぞれ解説していきます。

 

 

4.【ケース1】の場合


 前述の通り、【ケース1】とは、裁判所で行われるお子様の意向確認の際に、妻から洗脳されている可能性が高いので慎重に子供の発言を見極めて下さいといった話が、予め夫からなされるケースです。
 なお、お子様の意向確認の程度は、お子様の年齢によって異なってきます。
 就学年齢に達している場合には、事情確認をすることが多いですが、まだ小学1年生になったばかりというような場合には、難しい質問をしてもお子様は回答できませんし、過去のことを聞いても、まだお子様の年齢が小さい頃の話なので、記憶していないというケースも多いです。


 そのため、お子様が小学1年生もしくは、来年小学校に上がるといった年齢の場合、事情は聴くけれども、詳しくは聞かないということも多いです。
 逆に、お子様がもう中学生だといった場合には、より踏み込んで事情を確認することの方が多いです。
 このように、夫側が主張する「洗脳」といっても、お子様の年齢が小さい場合には、そもそも、調査官はあまり詳しくお子様から話を聞きませんので、あまり洗脳を問題にする必要がないということもあります。


 逆に、お子様の年齢が大きい場合には、ときには1時間以上の時間を取って事情を確認することもありますので、あなたからの影響の有無についても、家庭裁判所調査官は、ある程度は注意して見極めることが多いです。
 ただ、あなたがお子様に対して、「しっかりと話してくるんだよ」と伝えて、話をさせているのであれば、特に、そのことで「洗脳だ」といった形で言いがかりをつけられる謂れはありません。

 

 

5.【ケース2】の場合


 【ケース2】の場合とは、夫とも同居中のお子様の音声等が録音データとして証拠提出されたような場合に、その音声が、あなたに「言わされている」などと夫が指摘してくるケースです。
 このような場合には、裁判官によっては、どのような場面、配置状況で録音を取ったのかということを気にしてくることもありますが、特に録音時の状況におかしな点がなければ、その録音は、当時の状況を示す重要な証拠と評価してもらえることが多いです。
 このような過去の音声は、夫も一緒に生活している中で録取されたものですので、あなたからの影響はより少ないはずだからです。

 

 

6.【ケース3】の場合


 【ケース3】の場合、というのは、例えば、家庭裁判所調査官によるお子様の意向確認が終了した後に、お子様がしっかりと気持ちを調査官に伝えきれなかったので、後から、お子様の気持ちを補足すべく手紙を書かせて提出するといったものです。
 なお、このような手紙を出すことについて、私は、基本的に反対しています。
 このような手紙を出したいという場合には、その手紙の内容が調査官の前での発言と異なる内容の場合が多いからです。


 例えば、お子様が調査官の前では「たまにはお父さんに会いたい」と言っているのに、あなたがお子様に確認したところ、会いたくないと言っているから「本当は会いたくない」という手紙をお子様に書かせるといったケースです。
 このような手紙を事後的に作成しますと、裁判官からは、このようなものを書かせること自体が不適切だと指摘されてしまうことも多いので、オススメできないのです。

 

 

7.「うちの子に限ってそんなことを言うはずがない」という指摘は非常に多い


 前述のような「洗脳」という表現は極端な表現でして、夫側も弁護士を付けている場合には、「洗脳」という表現は避けることも多いです。
 ただ、夫側から見ると、「うちの子に限ってそんなことを言うはずがない」と反論してくるケースは非常に多いです。
 しかし、実際にお子様から事情を伺ってみると、父親には遠慮して本当のことが言えなかったとか、本当のことを言うと怒られることが分かっているので怖くて言えなかったと発言するお子様も非常に多いです。
 いずれにせよ、お子様が本当にそのように思っているのであれば、思っていることをしっかりと家庭裁判所調査官に伝えさせるということが最も重要になってきます。

 

 

8.まとめ


・夫側が「洗脳」だと指摘してくるのは、調査官によるお子様の意向調査の場面が多い。
・それだけではなく、同居中のお子様の発言など過去の資料に対して指摘してきたり、事後的なお子様のお手紙について指摘してくることもあり、大きく3つのケースに分けて考えることができる。
・調査官による意向調査の場面では、調査官もお母様であるあなたの影響がどの程度及んでいるのかについての見極めは行うことの方が多い(但し、お子様の年齢が小さい場合には深く話を聞かないことも多い)。
・過去の資料については、資料の採取方法に不自然な点がなければ、重要な証拠になることが多い。
・事後的な手紙等は書かない方が良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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1.そもそも「監護者」って何だ?



(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 



2.同居中も散々そのように言われていた


夫が神経質なので、妻から子への虐待ということを言われることが多かったというケースもあります。私が直接担当した事件でも以下のようなものがありました。

・こちらは何もしていないのに、子どもが泣き出すと「また泣かせたのか?」と詰め寄られる。

・子供がいけないことをしたので注意をしていると、夫が「虐待だ」と騒ぎ出す。

・子供が公園で転んで怪我をすると、夫から「お前が怪我させたのか」と騒ぎ出す。

・子供が外で怪我をすると、夫から「一瞬でも目を離したお前が悪い」と責められた。

・子供に片付けを促すべく、後ろから軽く子供の肩を押したところ、子どもが倒れてしまい、夫が虐待だと騒ぎ出す。

 

 

3.言いがかりに近い主張は、ほとんど影響しない


 前述の例で記載したように、夫側の言い分が、「言いがかり」に近いようなレベルの場合、そのことが監護者指定事件に影響を与える可能性は低いです。
 同居中、前述のように言われてしまっていると、あなたも自信を無くしてしまっているかもしれませんが、安心して下さい。

 

 

4.ただ、反論は必要


 前述のように、夫側の言い分が言いがかりに近いようなものだったとしても、監護者指定事件で争われる場合には、夫側も弁護士を付けてきますので、上手い言い方をしてくることが多いです。要するに、簡単に「言いがかり」とは思えないように言い分を組み立ててくるのです。
そうすると、裁判所側も重大な関心を抱くケースもあります。実際に虐待行為が繰り返されていた場合には、あなたを監護者に選んで大丈夫なのか、裁判所もしっかりと見極める必要があるからです。
 そのため、夫側の言い分が事実無根なものである場合には、事実無根であることをしっかりと指摘・反論していく必要があります。

 

 

5.躾の範囲でも暴力はNG


 たまに、子どもがあまりに言うことを聞かないので手をあげることは多かったです、とか、言っても聞かない子は叩いても許される、というようなことを奥様側から言われることもあります。
 ただ、いかなる理由があろうとも、お子様の身体に危害を加えることは、裁判所から見ると問題行動と評価されるリスクが高いです。
 そのため、仮に、事実としてあなたが暴力を振るったことがある場合には、そのことの影響を極力小さくしていくために、どのように裁判所にアピールしていくのかといった点をしっかりと弁護士と入念に準備していく必要があります。

 

 

6.逆に「虐待」と騒ぐ夫の発言は脅迫じゃないのか?


夫側の言い分が「言いがかり」に近い場合、頻繁に「虐待」と責め立てて来ることは、あなたに対する心理的虐待という側面も持ちます。
 ただ、裁判所に対して、このような点をクローズアップしても、裁判所の反応は薄いことが多いです。監護者指定事件では、対お子様との関係の問題が重要であって、夫婦間の問題は重要性が落ちるからです。
 そのため、先方からの「言いがかり」に対しては、そのような事実がないこと、もしくは、過去の実際の出来事等を正確に裁判所に伝えるという対応に徹した方が良いことが多いです。

 

 

7.夫も子供に手をあげていたので「お互い様だ」という主張は?


 たまに、私にご相談に来られた方から、多少子供に手をあげてしまったことは事実だが、夫も手をあげることがあったのでお互い様だとおっしゃる方もいます。

 ただ、「お互い様」という点を強調し過ぎてしまいますと、裁判所から見ると「この夫婦はどっちもどっちなので、この人たちにお子さんを預けて大丈夫なのか?」とか「むしろ児童相談所に預けてもらった方が安全なんじゃないか?」という発想を持ちかねません。

 

 そのため、いずれにしましても、あなたが多少お子様に手をあげてしまったことが事実だとしても、その影響は最小限にとどめる必要が出てきます。

そして、お互い様というよりも、夫の側がお子様に対して何度か手をあげたことがある場合には、その虐待の点をしっかりと強くクローズアップしていく必要があります。

「お互い様」というと、あなた自身が行ったお子様への行動について、反省もなく「開き直っている」という印象を裁判所に与えかねませんので、注意が必要です。

 

 

8.まとめ


・夫が神経質だと、頻繁に虐待だと責められる事態もある。
・夫の言い分が「言いがかり」に近いような場合、影響は少ない。
・ただ、「虐待」の有無については裁判所も関心を持つことが多いので、しっかりと反論する必要がある。
・躾の範囲でも暴力はNGなので、そのことを頭に入れて準備する必要がある。
・夫の虐待発言は、あなたに対しる心理的虐待の側面もあるが、監護者指定事件では、あまりそこをクローズアップしないことの方が多い。

・夫婦お互い様という視点は、裁判所に悪印象を持たれるリスクがあるので注意が必要である。

 

 

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こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「調査報告書の重み」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 


2.調査報告書って何だ?


(1)調査報告書とは?
 調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものです。調査報告書は、家庭裁判所調査官が担当裁判官宛に報告するというスタイルを取っていますので、その内容を確認するには、弁護士が裁判所にて調査報告書のコピーをとってくる必要があります。

 なお、一口に調査報告書といっても、面会交流の手続きに役立てるための調査報告書や、離婚調停手続きの中で作成される調査報告書などもあるのですが、親権との関係で重要になりますのは、①離婚の裁判に至っているケースで、②夫婦のどちらを親権者に指定した方がよいのかを決めるための調査報告書ということになりますので、今回は、このような調査報告書を前提に解説していきます。


(2)調査報告書作成の流れ
 調査報告書がどのようなものなのかについては前述にて説明した通りですが、この説明だけでは、まだ今一つ理解しにくいと思いますので、時系列に沿って、より具体的にご説明しますと以下の通りです。
①裁判官が法廷等で調査内容を宣言(調査発令などと言ったりします)
 合わせて次回裁判期日を設定

②期日間で、調査官が必要な調査を実施

③調査官が調査報告書を書き上げて裁判官に報告

④弁護士がコピーをとって、あなたや夫側も調査報告の内容を把握

⑤調査報告の内容を踏まえて、次回裁判期日で今後の進め方等を議論

 

(3)調査報告書はどのように章立てされているの?
 前述の通り、調査報告書は、期日の間に調査官が実施した調査経過や結果をまとめたものなのですが、争点が多いケースなどですと、ボリュームが多いものですと30ページ近くに及ぶものもあって、最初から最後まで順に通読していると、概要は分かったけれども、詳しいところまでは理解が難しいということもあります。
 実際上、ボリュームが多い調査報告書でも、章立てがされていまして、特にあなたの関心が強い部分を何度か読み返すといったことをすると、より理解が進むと思います。
 具体的な章立ては、事件の内容によって順番が変わったりもするのですが、大きくは、以下のような章立てとすることが多いように感じます。
 なお、調査報告書では「第1章」「第2章」といった書き方はせず、ページトップに



 監護の経過



といった表記をして、このページ以降は「監護の経過」の調査結果を記載しているということが分かるようにしてあります。逆に言いますと、調査報告のページトップのタイトルを見れば、このページには何についての調査結果が書かれているのかが分かるようになっています。


 具体的な章立て(オーソドックスなパターンであって、タイトルの付け方や順序は調査官によって千差万別です)は以下の通りです。
①調査経過
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、調査官がいつ何を調査したのかということが分かる部分です(「令和4年4月10日 母及び母手続代理人弁護士と当庁において面接」というように端的にいつ何をしたのかだけが記載されています。

②関係者一覧
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、当事者やお子様、親族等を簡単に記載しています。稀に、調査官によっては、関係者一覧を省略するケースもあります。

③監護の経過
 これまでの育児における両当事者のかかわり方などを記載しています。お互いの言い分が食い違っている場合には、「父はこう説明した」「母の説明はこうであった」といった形で記載してあります。

④当事者双方の状況
 お子さんのことではなく、両当事者の現在の生活状況や心身の状況、経済状況等を記載しています。

⑤○○に対する当事者双方の主張
 どちらかの親からお子様に対する虐待が疑われるケースやお子様の障害や疾患等との付き合い方でお互いの言い分が大きく食い違っているような場合には、別に章立てして、詳しくお互いの言い分を記載することもあります。

⑥現在の未成年者の状況
 現在のお子様の登校(登園)状況、生活ぶり、面会交流の状況等について記載してあります。この箇所の記載は、現在お子様の育児を担っている奥様側の陳述内容をかいつまんで記載するケースが多いです。

⑦関係機関の調査結果
 調査官が小学校・保育園、病院や児童相談所から見聞きした内容が記載されています。なお、児童相談所等からの回答が書面で回答された場合には、調査報告書の末尾に回答書が添付されているケースが多いです。

⑧家庭訪問の結果
 調査官が、あなたの家を家庭訪問した際の様子等が記載されています。

⑨未成年者との面接結果
 調査官がお子様と1対1で話をした際の様子等が記載されています。

⑩調査官の意見
 今回の調査結果を踏まえ、今後どのような進行が望ましいといったことが記載されています。今後の手続の進め方を見極めるにあたって、最も重要な記載箇所です。
 このように「調査官の意見」が最も重要な記載箇所なので、当職は依頼者に対して、調査報告書はボリュームがあるので、最初から順番に読むのではなく、まず、最後の方の「調査官の意見」の箇所を先に読んでみて下さい、とお伝えすることもあります。

 

 

3.調査報告書については、明確に結論が書かれてしまうケースが多い


 前述の通り、調査報告書は、家庭裁判所調査官が裁判官に対して結果報告するレポートです。このように聞くと、裁判官がそのレポートも参考にして結論を下すように捉えられがちですが、実際はそうではありません。
 前述の「調査官の意見」の章の中に結論、要するに、父母のどっちが引き続きお子さんの世話をしていくことが望ましいといったことまで書き込まれてしまっているケースが大半です。
 そのため、それを受け取った裁判官は、よほどの事情がない限り、調査官の意見の通りに裁判を下してしまいます。
 このように、調査報告書は非常に重みのある書類と言えます。

 


4.こちらの資料の準備


 前述の通り、調査報告書の中にほぼ結論が書きこまれてしまいますので、こちらの資料の準備も、調査着手前にほぼ出し尽くしてしまう必要があります(要するに、「調査報告書が出た後に、資料の補足などをしよう」というように悠長に構えていてはいけないということです)。
 このように親権紛争では、調査発令のタイミングを見極めながら、調査発令前、または、調査発令直後まで(遅くとも、調査官が本格的な調査に着手する前まで)に資料を出し尽くしてしまう必要があります。

 

 

5.まとめ


・調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものである。
・調査報告書はボリュームが多くなるケースも多いので、各章立てを意識して読み解くと理解が深まる。
・調査報告書の中でも「調査官の意見」の章が最重要である。
・調査報告書の中の「調査官の意見」の章には、父母のどちらが親権者としてふさわしいといった結論まで明記されるケースが多い。
・そのため、資料の提出は調査官の調査着手前までに出し尽くしてしまった方が良い。

 

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「お子さんの年齢に応じた特徴」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 


2.お子様の年齢に応じた手続きの特徴


 一口に親権紛争と言いましても、お子様の年齢に応じて、手続きには一定の特徴があります。
 親権紛争では、様々な要素を総合考慮して、あなたと夫どちらが親権者にふさわしいかが決まるのですが、その中でも、以下の7個の要素は特に重要だと思います。
 お子様の年齢が特に重要な意味を持つのは、下記の「4)過去の児童虐待の有無・程度」、「5)子供の意思」になります。


1)監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思

6)今後の監護計画
7)面会交流の姿勢
 以下詳しく解説していきます。

 

 

3.お子様の年齢区分


 私が親権問題を取り扱っておりますと、裁判所は、大まかに以下の年齢区分に応じて、対応の仕方を変えているように感じますので、以下の区分に応じて解説していきます。

(1) お子様が0歳から4歳ころ(以下では便宜的に「乳幼児時代」と言います)

(2) お子様が5,6歳から小学校低学年(9歳くらいまで)頃(以下では便宜的に「小学校低学年頃時代」と言います)

(3) お子様が小学校高学年(10歳ころ)以上(以下では便宜的に「小学校高学年以上時代」と言います)

 

 

4.「過去の児童虐待の有無程度」について


(1)「乳幼児時代」の場合
 「乳幼児時代」のお子様は、実際に虐待と思われる行為を受けたとしても、その意味等を理解しきれず、また、そのことをしっかりと説明する言語能力も備わっていませんので、家庭裁判所調査官が直接お子様から事情を確認することは基本的にありません。
 そのため、虐待の証明のためには、あなた自身がお持ちの証拠が相対的に重要になってきます。


(2)「小学校低学年頃時代」の場合
 お子様の年齢が5歳以上になってきますと、ある程度の会話は可能になっていることが多いので、裁判所調査官は、直接お子様と会話をすることが多いです(但し、5歳や6歳ですと、まだお子様の言語能力の発達には個人差がありますので、十分な会話が難しいと感じた場合には、家庭裁判所調査官も詳しい会話はしないことも多いです)。
 しかし、お子様の年齢に鑑みますと、事細かく過去の事実を説明することは難しい年齢ですので、調査官が虐待の有無等について事細かく確認するのかというと、そのようなことはなく、「お父さんってどんなお父さんかな?」とか「お父さんとの思い出の中で楽しかった思い出って何かな?」といった質問をして、お子様の反応に応じて虐待のこと等についても尋ねるといったケースが多いように感じます。


 もちろん、虐待の有無が非常に重要な争点になっているケースやお子様が9歳で十分な会話能力があるという場合などでは、ストレートにお子様に直接、虐待の有無や内容について確認するケースもあります。


(3)「小学校高学年頃時代」の場合
 お子様が小学校高学年以上の場合、ある程度の難しい会話も可能になっていることが多いので、家庭裁判所調査官は直接虐待の有無や具体的詳細を尋ねることが多いです。
 なお、このぐらいの年齢になると、お子様自身があなたに対して「調査官からどのようなことを聞かれるのか?」とか「どのようなことを聞かれるのか分かっているなら、事前に準備しておきたい」といったことを言ってくることもあります。
ただ、調査官調査は面接試験ではありませんし、面接試験対策のようにして準備をすると逆効果になるケースが多いので、あまり特別な準備はしない方が良いことが多いと思います(もちろん、どのようなことを聞かれそうなのかについて概要は説明しておいて良いと思いますが「○月〇日どこどこでこれこれのことがあったから、そのことはすごく記憶によく残っていると伝えなさい」といったような面接試験対策のようなことはしない方が良いという意味です)。

 

 

5.「お子様の意思」について


(1)「乳幼児時代」の場合
 「乳幼児時代」のお子様は、現在自分が置かれている状況を正確に理解したり、自分の意思をしっかりと説明する言語能力も備わっていませんので、家庭裁判所調査官が直接お子様の意思を確認することは基本的にありません。
 但し、お子様と夫とを面会交流させてきた場合には、交流時の反応や、交流後のお子様の様子等は、参考情報として考慮されることがあります。


(2)「小学校低学年頃時代」の場合
 お子様の年齢が5歳以上になってきますと、ある程度の会話は可能になっていることが多いので、裁判所調査官は、直接お子様と会話をすることが多いです(但し、5歳や6歳ですと、まだお子様の言語能力の発達には個人差がありますので、十分な会話が難しいと感じた場合には、家庭裁判所調査官も詳しい会話はしないことも多いです)。
 ただ、お子様に対して「お父さんのところとお母さんのところどっちと一緒に住みたい?」といった質問をすることはなく、通常は「今の生活はどうか?」とか「引越前の生活はどうだったか?」といった尋ね方をするケースが多いと思います。
 また、お子様の理解力に応じて、簡単な心理テスト等を行い、内心を確認することもあります。


(3)「小学校高学年以上時代」の場合
「小学校高学年以上時代」の場合も「小学校低学年頃時代」の場合と大きな差はなく、調査官がお子様に直接意思確認をすることが多いです。但し、この年齢になると心理テストを実施することは少ないと思います。

 

 

6.調査官調査の特徴


 お子さんの年齢に応じて、家庭裁判所調査官による調査にも差が生じますので、以下概要をご説明します。

(1)「乳幼児時代」の場合

 乳幼児の場合には、まだお子さんは十分に発言できない年齢ですので、家庭裁判所調査官は、お子さんの発言ではなく、保護者であるあなたの気配りや対応という部分に重きを置いて調査が実施されることが多いです(但し、もうお子さんが4歳に達していて、かなりコミュニケーションをとれる状況になっている場合には、調査官がお子さんと直接会話するケースもあります(これは、お子さんの成長の具合によります))。

 具体的には、まず、家庭訪問の際には、お子さんが誤飲・転倒等をしないような配慮がなされているか(要するに、引出し等にチャイルドロックがかかっているのかとか、小物がお子さんの手の届かないようなところに置いてあるのかといった点)、お子さんの反応に応じてどのようにあなたが対応するのかといった点を中心に確認が行われます。

 また、お子さんが十分に言葉を発することができない年齢ですので、あなたとお子さんが遊んでいる様子などから、あなたとお子さんとの関係性等を見極めようとすることが多いです。

 

(2)「小学校低学年時代」の場合

 お子さんが小学校低学年時代の場合、小学校教育が開始して(または、小学校入学に向けた準備が開始して)いますので、お子さんの学習環境がどのように整えられているのかという点が相対的に重要になってきます(但し、お子さんが小学校入学前であると、ある程度の教育面の確認はしますが、どちらかというと、「乳幼児時代」の際同様、あなたの気配り等の方を重視して調査するケースも多いです)。

 そのため、家庭訪問の際にも、どの程度学習環境が整っているか、学校から出された宿題や課題への取り組み方等を確認することに重きが置かれていきます。合わせて、もうお子さん自身が自発的に挨拶や自宅内の案内等を出来る年齢ですので、その様子等を調査官は見極めようとしてくることが多いです。

 また、お子さん自身が平易な会話は可能なので、調査官はお子さんと1対1で話をすることが多いです。

 

(3)「小学校高学年以上時代」の場合

 お子さん自身が難しい言葉もある程度理解するようになっており、合わせて、家庭環境やそのような環境の中で自分が置かれた立場等についても大なり小なり理解していることが多いため、お子さん自身の発言や意思が、より重要性を増してくることになります。

 このようにお子さんが「小学校高学年以上時代」の場合でも、家庭訪問は行い、その際に、監護環境の確認は行われますが、それ以上に、調査官とお子さんとの1対1での会話の内容がより重要性を増していくことになります。また、そのような会話の際には、お子さん自身が過去の経緯等についても十分自分の経験や意思を言葉にすることができる年齢ですので、より突っ込んだ確認が行われることも多いです。

 

 

7.その他


 その他にも、「乳幼児時代」の場合、監護実績の証明にあたっては、保育園の連絡帳の持つ意味合いが非常に重要になるとか、面会交流にあたっても、お子様だけを預けることが難しいので、交流方法についても慎重な検討を要するなど、お子様の年齢に応じて、証拠集め等の準備や手続きへの取り組み方が異なってくるのですが、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

8. まとめ


・お子様の年齢区分としては、以下の3区分で特徴が変わってくる。
① お子様が0歳から4歳ころ(以下では便宜的に「乳幼児時代」と言います)
② お子様が5,6歳から小学校低学年(9歳くらいまで)頃(以下では便宜的に「小学校低学年頃時代」と言います)
③ お子様が小学校高学年(10歳ころ)以上(以下では便宜的に「小学校高学年以上時代」と言います)
・監護者指定の重要要素の中でも「過去の児童虐待の有無・程度」「お子様の意思」の項目で対応が異なってくることが多い。

・家庭裁判所調査官による調査の際にも、お子さんの年齢に応じた特徴がある。

・その他にもお子様の年齢に応じて対応が異なってくる箇所やケースがあるので、詳しくは弁護士に相談してみるとよい。

 

 

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2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「夫から浮気を疑われていること」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 


2.夫から浮気を疑われている


 夫から浮気を疑われているという場合、その浮気が事実なのかどうかによって対応が異なってきます。
 なお、ここでの「浮気」というのは、法律上の不貞行為を意味する言葉として使っておりまして、要するに夫以外の男性と肉体関係に及ぶことを意味します。他の男性と二人で食事に行くこと等は含まないという前提で解説していきます。

 


3.【ケース1】浮気は事実ではないし、それを疑われる事情もないケース


 例えば、こちらが別居を開始したことについて、夫側が、「浮気しているに違いない」などと勝手に想像しているケースなどです。
 その場合には、あなたが浮気しているという事実がありませんし、そのような事実がない以上、疑わしい証拠や事実もないため、夫側が「浮気している」と主張していたとしても、当然親権紛争への影響は全くありません。

 


4.【ケース2】浮気は事実ではないが、疑わしい事情はあるケース


(1)どんなケースか?
 浮気が事実ではないので、それが疑われるということが分かりにくいかもしれませんが、例えば以下のようなケースなどです。
 例えば、別居後、知人を含めた4,5人でシェハウスに住んでいるが、その中に男性も含まれている。特にその男性と関係はないが、その男性と二人で食事に行っているところを夫側の探偵に写真を取られてしまったとか、その男性と日帰りで遊びに出かけたことがあって、その時のメールのやりとりが証拠で提出されてしまったといったケースになります。
 浮気の確たる証拠はないのですが、普段の生活がその男性も含めたものでして、そのことに加え、男性と出かけた証拠もあるとなると、浮気が「疑わしい」状況ではあると思います。


(2)そもそも浮気と親権者は関係があるのか?
 そもそも、浮気の問題と親権者の問題が関係あるのか?という点ですが、基本的には、浮気の問題は、夫婦の間の問題でして、親権者の問題とは切り離されて取り扱われることが多いです。
 要するに、浮気の確たる証拠があるならば、夫側はあなたに対して慰謝料請求をすることができるなど、夫婦としての紛争にはなっても、お子さんを育てていくにあたって的確なのかどうかとは基本的に別問題だということです。
 しかし、浮気との関係であなたの夜間の外出が頻繁だとか、あなたとその男性との外出にお子様も同行させていて、お子様の就寝時間がかなり遅くなることが多いという場合には、それは、お子様の育児にも関わってくる問題になります。
 このように「浮気を疑われる状況がある」ことそのものは親権者選びに直接関係しませんが、そのことでお子様の育児が疎かになったりする場合、その限度では問題になることもあるのです。

 

 


5.【ケース3】浮気は事実だが、夫側が全く証明できていない場合


 仮に浮気が事実だとしても、そのことを夫側が全く証明できていない場合には、敢えてご自身に不利な対応をする必要はないかと思われます。
 証拠がない以上、裁判所も、浮気の事実はないものとして、親権の問題を審理していくことになります。

 

 


6.【ケース4】浮気は事実で、夫側にかなりの証拠を握られてしまっている場合


 実際にあなたが浮気をしていて、夫側にかなりの証拠を握られてしまっている場合でも、前述の通り、浮気そのものは、親権者選びには直接影響しません。
 ただ、この場合、大きく2点問題となることが多いです。


(1) 浮気を認めるか
 夫側は、あなたが浮気しているという事実を強く主張してきて、「そのような不健全な親に親権を任せることはできない」と強く責めてくることが多いです。
 このケースでは、浮気の証拠を握られてしまっているため、浮気そのものを否定することは得策ではないことが多いです。なぜなら、浮気の証拠がある以上、裁判所は、浮気があることを前提に審理を進めますし、あなたが「浮気は事実ではない」と言い張ると、裁判所から見て「嘘をつく人」と見られてしまうリスクがあるからです。

(2) 住居の問題
 浮気をして別居しているケースの場合、新居に浮気相手が関わっているケースが多いです。
 別居先が正に浮気相手の家で、お子様とあなた、浮気相手の3人で暮らしているケースとか、一緒に住んではいないけれども、新居は浮気相手が経営する会社名義の部屋であるといったケースです。
 そのような場合には、新居がお子様の福祉にかなう生活環境と言えるのか、その住居の安定性が保たれているのかという観点から審査が行われることになります。

 このように夫側に浮気の証拠を握られている場合には、親権紛争との関係でどのように対応すべきかの判断が難しいケースも多いため、早めに弁護士に相談した方が無難かと思います。

 

 

6.まとめ


・浮気を疑われていると一口に言っても複数のケースが想定されるので、ケース分けが必要である。
・実際には浮気の事実などなく、疑わしい事情もないなら何も心配はいらない。
・実際には浮気の事実がないとしても、それが疑われる事情があるのであれば、そのことがお子様の育児面で影響がないかの確認が必要になる。
・実は浮気しているが、夫側に確たる証拠がないならば、敢えてこちらから不利になる対応をする必要はないものと思われる。
・実は浮気していて、夫が確たる証拠を持っている場合、浮気は認めた上で、育児面への影響の検討が必要になる。

 

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「弁護士へのセカンドオピニオン」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.セカンドオピニオンとは?


 私のところには、離婚・親権の問題で既に弁護士を雇っているけれども、他の弁護士にも意見を聴きたいということでご相談に来られる方もいらっしゃいます。
 このようなセカンドオピニオンには、①あなた自身の事件について、どの程度有利に手続きを進めているのか、結論はどうなりそうなのか、という点を尋ねてくるケースと、②あなたが提出したいと考えている証拠について、どの程度効き目がありそうなのかを尋ねてくるケースがあります。

 

 

3.セカンドオピニオンの限界


 セカンドオピニオンは、現在あなたが雇っている弁護士よりも、より客観的に状況を把握する利点があります(あなたが雇った弁護士は、あなたと一緒に事件を戦っているため、どうしてもあなたの味方としての立場が表れてしまっていて、客観的な状況把握がしにくくなっていることもあります)。
 また、あなたが今雇っている弁護士の方針に疑問や不安があった場合、セカンドオピニオンで、その弁護士の方針に誤りがないと聞くことができれば、大きな安心材料になります。
 そのため、セカンドオピニオンは、「今雇っている弁護士と違う意見を聴く」ということではなく「今雇っている弁護士と同じ意見を聴いて安心する」というメリットもあります。
 ただ、セカンドピニオンは、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限があることは否めません。

 

 

4.あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない


 たまに、今後の手続や結論への不安が強く、何人もの弁護士にセカンドオピニオンを繰り返しているという方もいます。
 前述のように、セカンドオピニオンは、、限られた時間内で、限られた資料の中で意見を述べるに過ぎませんので、時間的、資料的な制限がありますので、「弁護士によって少しずつ言うことが違う」と感じることも出てくるかと思います。
 そうなると「沢山の弁護士に話を聞いて、余計混乱した」とか「余計に不安が増してきた」ということにもなりかねません。
 そのため、セカンドオピニオンを求めるにしても、多くても2,3件程度にとどめておいたほうが良いと思います。

 

 

5.定期的アドバイザリーは?


 セカンドオピニオンからさらに進んで、今の弁護士を雇いながら、定期的なアドバイザリーをお願いしたいと依頼されることもあります。
 ただ、定期的アドバイザリーは、裁判所の法廷に足を運ばずに弁護士がアドバイザーになるというものですので、どうしても、裁判所が考えている方向性とずれてしまう側面が否定できません(実際に法廷に足を運ぶと、裁判官の発言や表情を直接見聞きできますので、アドバイザリーとして、そのような直接見聞きができないという点は大きなビハインドと言えます)。
 そのため、私自身は、そのような定期的アドバイザリーを引き受けることはしていません。
 他の弁護士も、「定期的アドバイザリーは引き受けない」という弁護士も多くいますので注意が必要です。

 

 

6.今雇っている弁護士を変えたほうが良いのか?


 セカンドオピニオンを受けていると、「今雇っている弁護士を変更したほうが良いのでしょうか?」という質問を受けることが多いです。
 ただ、私がお話を聞いていると、その弁護士が、そこまでおかしな弁護活動を行っているようには感じず、相談に来られた方も、引き続きその弁護士にお願いするということでお帰りになることが大半です。
 そのため、私が途中から交代して弁護につくことは、「ごく少数」という印象です。

 

 

7.セカンドオピニオンを受けるのが非常に遅いと感じることが多い


 親権紛争でセカンドオピニオンのご相談を受けるタイミングとしては、家庭裁判所調査官からこのように言われたとか、裁判官からこのように言われた、もしくは、調査報告書でこのように書かれてしまったというケースが多く、残念ながら、「そこまで手続きが進んでしまっていると、弁護士を交代して劇的に好転させることは難しいです」という状況のことが多いです。要するにセカンドオピニオンの相談が「遅過ぎる」ということです。
 特に、「知り合いの紹介で弁護士を雇ったんですが、離婚問題の取り扱い経験がほとんどなかったみたいなんです」などと言われることも多いのですが、各弁護士には専門分野がありますので、最初の段階で対応を誤ってしまっている側面が否定できません。
 そのため、離婚・親権問題では、最初から専門性が高い弁護士にお願いするということが重要と言えます。

 

 

8.まとめ


・セカンドオピニオンは客観的な意見を聴けることが多いが、時間的・資料的限界がある。
・あまりセカンドオピニオンを多用することはオススメしない。
・定期的アドバイザリーについては、そもそも、そのような契約形態は引き受けないという弁護士も多いので注意が必要である。
・今雇っている弁護士を交代させたほうが良いというケースは稀である。
・事件途中でセカンドオピニオンの相談をするのではなく、最初から弁護士をしっかりと選んだほうが良いケースが多い。

 

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「お子さんへのモラハラ」という点にスポットライトを当てて解説していきます。


 


2.子供へのモラハラって?


 モラハラについては 「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと定義されたりしますが、これだけではピンと来ない方が多いと思います。具体的にお子様との関係での夫の発言や行動で「モラハラ」と評価し得るものとしては以下のようなものがあります(これが「モラハラ」の全て、というわけではなく、あくまで代表例とお考え下さい)。
なお、夫がお子様に直接手をあげるケースは、もはやDVに該当しますので、一旦モラハラとは分けて考えます(以下では、このようなDVにまでは達していないケースを想定して解説いたします)


(1)お子様に対して暴言を吐く
 お子様へのモラハラの典型例のようなケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。なお、暴言やあなたやお子様ご本人に向けられるケースだけでなく、パパ友やママ友、お子様の友人等が集まる場所等で発言されると、より一層お子様は傷つくことになると思います。
①お子様を侮辱するような発言をする(「バカ」「アホ」だとかの単純なものから、お子様の容姿を侮辱するもの、お子様の学習能力や知識不足等を侮辱するものなどがあります)
②お子様に危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)
③叱責する際などに敢えてお子様が傷つくようなことを言う(例えば「テストの点が悪かったから、おまえのこのゲームは捨てるからな」、「朝の勉強をさぼっていたから、週末はお出かけ禁止な」とか「遊びに行ってる暇があったら、ドリルを1ページでも進めとけよ」等)

 

(2)執拗な責め立て等
 これもお子様へのモラハラとしてはよく見られるケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。
①些細な問題を執拗に責め立てる(「この前のテストで90点だった理由をしっかりと説明しろ」「昨日音楽の笛を学校へ持って行き忘れたことの反省文を書け」「この前の誕生日会で俺に恥をかかせたことについて、参加者に謝ってこい」等々)
②責め立てが何時間も延々と続く
③責め立てが夜中や早朝など時間を問わず長々と続く
④責め立ての際、正座や土下座を強要する

 

(3)物への八つ当たり等
 例えば、機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)といったものです。
 特にお子様が大事にしているものとか、お子様のデスクや衣装ケースなどを傷つける行動は、お子様にもショックが大きいと思います。

 

(4)行動監視や強要
 例えば、以下のようなものがあります。
①お子様のスマートフォンにGPSアプリを入れて頻繁に位置情報を確認してくる
②門限その他家庭内のルールを作って、お子様に強要する(勉強の時間は何時からとか、入浴の時間は何時からなどと細かく決めた上で、1分でも過ぎると執拗に責め立ててくるとか)
③お子様が口にするお菓子等について夫の気分次第で種類や値段を制限してくる

 


3.お子様へのモラハラは、どこまで考慮されるか


 上記のようなモラハラは、頻繁であったり、執拗であったりすると、お子様はもちろん、あなた自身も非常に窮屈で、普段の生活において常に緊張を強いられるような大きな心理的負担を生じるケースも多いと思います。
 ただ、これらのモラハラがストレートに親権紛争に大きな影響を与えるのかと言いますと、残念ながら、影響は「大きくない」という印象です。
 裁判官や裁判所調査官は、第1次的には暴力行為があったかなかったか、そのことでお子様自身が怪我をしたことがあったかなかったかという点を気にかけ、これらがなかったということになると、虐待事案としては、大きな虐待はなかったと捉えがちなのです。

 


4.お子様への意思確認で生きてくる


 上記のようにご説明しますと、「それなら子供へのモラハラを主張しても意味ないんですね」とか「子どもへのモラハラの証拠は不要ですね」とおっしゃる方もいますが、そうではありません。
 モラハラそのものは、直接親権者指定に大きな影響はないとは言っても、全く無関係ではないからです。
 また、特に、お子様が夫側を嫌がっているとか、接点を持ちたくないと発言しているような場合には、その根拠として意味を持ってきます。
 要するに、親権紛争では、様々な要素が考慮されるのですが、お子様が一定の年齢に達している場合、「お子様の意思」も重要な判断要素の一つになります。
 お子様が夫側を嫌がっているとか、接点を持ちたくないと発言しているような場合、家庭裁判所調査官は、必ず理由を尋ねますので、その際に、モラハラ行為の存在が生きてくるのです。

 

 


5.モラハラ行為をこちらに有利に活かすには


 前述の通り、お子様の意思確認の段階で、モラハラ行為の存在はそれなりに意味を持ってくることになります。
 ただ、こちらが夫のお子様に対するモラハラ行為を主張しても、夫側が全否定してくるケースも往々にしてあります。
 そのため、モラハラ行為を親権紛争で活かしていくにあたっては、やはり、その証拠がどの程度あるのかという点が重要になってきます。
 録音が最たるものですが、夫側が壁や床、物を破壊したといった場合には、その写真も有効な証拠になります。

 

 

6.まとめ


・お子様へのモラハラには、①暴言、②執拗な責め立て、③物への八つ当たり、④行動監視や強要といったものがある。
・DVに至らないモラハラは、裁判官も重要視しないケースが多い。
・だからと言ってモラハラを指摘しなくて良いということではない。
・モラハラの存在は、お子様の意思確認の際に活きてくる。
・重要なのはモラハラの証拠集めである。

 

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「児童虐待」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的には以下の通りです。

 

【児童虐待防止法より引用】

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

3.それぞれの詳しい解説


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。今回は、特に、親権紛争で重視されるような「児童虐待」について解説していきます。


(1)お子様への暴力
 前述の通り、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。
 もちろん、このようにお子様に対して直接暴力を振るい、お子様に現実に怪我ができたり、怪我ができる可能性がある場合には、親権者として即不適格ということになろうかと思います。


 ここでの「怪我ができる可能性がある」というのは、それだけの強い威力の暴力ということですので、例えば、①DV夫がお子様を殴ったケースなどで、お子様がよけたので怪我をしなかったけれども、拳が壁に当たって壁が大きくへこんでしまったとか、②お子様が咄嗟に逃げたので怪我をしなかったけれども、DV夫が凶器を振り回したケースなどがこれに該当します。
 ただ、このようにお子様が怪我をする危険性があるような暴力でなくとも、お子様自身がDV夫からの暴力被害を記憶していて、そのことが理由でDV夫のことを怖がっているといった事情がある場合には、親権紛争においても、夫側に大きく不利な事情になります。

 

(2)お子様へのわいせつ行為

 夫側がお子様に対してわいせつ行為に及んだことがあったり、お子様自身にわいせつな行為をさせたことがあるような場合には、直接の児童虐待に該当しますので、親権者として即不適格ということになろうかと思います。
 親権紛争で争われる場合には、上記のような直接的な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。


 このようなケースでは、このような性的虐待についてどこまで客観的に証明できるのか、それがお子様にどこまでの悪影響を及ぼしているのかがキーポイントになってくるかと思います。なお、お子様の年齢によっては、性的虐待の意味合い等をお子様自身が十分認識できず、そのことについて自ら口に出して表現できないことも多いと思いますが、実際にはお子様の心の奥底に傷跡を残していることも多いので、小児心理の専門医に相談してケアをしていったほうが良いケースもあろうかと思います(当該医師から、性的虐待の後遺症が残っているような診断がなされた場合、その診断結果も重要な証拠になります)。


(3)ネグレクト
 上記の通り、児童虐待防止法にて「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。」と規定されているものですが、いわゆるネグレクトのことを意味します。
 親権紛争では、同居中の言動や行動を問題にすることが多いので、ネグレクトは取り上げにくいというのが実際のところではないかと思います。


 例えば、あなたが週末出かけた場合で、夫が自宅でお子様の面倒を見ていた際、ネグレクトをしていたというようなケースですと、夫がそのようなことを繰り返していた場合、残念ながら、あなた自身に対しても、裁判所は「どうしてそんな夫にお子さんを任せて出かけたのか」ということで責められる危険性が高いのです。
 このように同居中の夫側のネグレクトは、あまり極端なものであった場合には、どうしてあなたが防止できなかったのか、ケースによっては、防止する意識が薄かったのではないか?とか、黙認していたのではないか?と裁判所から言われてしまい、あなた自身の育児の問題点とされてしまう危険性もあるのです。


(4)お子様への暴言・面前DV
 児童虐待防止法2条4号は、DV夫からお子様への直接の暴言と面前DVを児童虐待と定めています。以下では暴言と面前DVに分けて解説していきます。


ア 暴言
 児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義しています。要するに単なる暴言ではなく「著しい」暴言のみを対象にしているのです。
 ただ、その暴言が「著しい」ものなのかの区別は非常に難しく、こと親権紛争では、著しいものかどうかを問わず、暴言を受けることでお子様にどのような悪影響が生じてしまっているのかという観点を重視する傾向が強いです。実際のところ、DV夫が発した口頭の言動を細かく確定することは不可能に近いので、お子様自身がどう受け取ったのか、どう感じているのかといった観点から検討していく他ないのです。
 特に、お子様が①DV夫からの言動が怖かったとか、そのことで夜なかなか寝付けなかったといった話をしているとか、②DV夫の言動を真似て他の友人にそのような発言をしてしまったといった場合には、DV夫側は親権紛争で大きく不利になるケースが多いと思います。


イ 面前DV
 面前DVは、児童虐待防止法上、児童虐待と位置付けられているのですが、親権紛争では、あまり重視されない傾向が強いです。裁判所は、妻側に対する暴力は、夫婦間の問題と考える傾向が強く、そのことがストレートに監護者としての適格性に大きな影響を与えないと考える傾向が強いのです。
 もちろん、面前DVでお子様の心身に具体的な悪影響が生じてしまっているといったケースでは、そのような事情も親権紛争にあたって重視されますが、そうでない場合には、残念ながら、あまり重視されないとお考え下さい。

 

 

4.親権紛争で争っていくにあたっての基本的な視点


 このように児童虐待のお話をしますと、「夫がそのような発言に及んでいたことがないかよく思い出してみます」と反応なさる方が非常に多いのですが、どちらかと言いますと、昔のことを思い出すというよりも、「どのような裏付けがあるか」をしっかりと確認することの方が重要性が格段に高いです。
 裏付けもなく言い分を述べても、DV夫側は「そのような事実はない」と否定してくることが多いので、そうなると、裁判所も、そのような言動があったかなかったかを明確に判断できないのです。

 

 

5.まとめ

・児童虐待については児童虐待防止法で大きく以下の5つを定義している。
 ①お子様への直接暴力
 ②お子様への性的虐待
 ③ネグレクト
 ④お子様への著しい暴言等
 ⑤面前DV
・親権紛争の中での児童虐待の重要性は、児童虐待防止法の定めとずれる部分もあるので注意が必要である。
・親権紛争では、「過去の児童虐待をよく思い出す」というよりも「その裏付けを探す」ということの方が、重要性が高い。

 

 

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2023.01.09更新

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「監護実績の判断方法」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.裁判官は監護実績についてどう判断するのか?


(1)監護実績については言い分が大きく対立することも多い
 これまでの監護実績(同居中、お子様の育児にどのくらい関わってきたのか)は親権紛争の判断にあたって非常に重要な要素です。
 ただ、監護実績については、お互いの言い分が大きく食い違うケースも非常に多いのが実情です。裁判官によっては、アバウトにお互いの監護割合を確認したいので「これまでの育児の割合として、あなたの比率と旦那さんの比率だとどのくらいですか?」と質問してくることも多いのですが、そのようなときに、あなたは9対1と答え、夫側は、自分の方が比率が高く7対3(夫7で妻が3という趣旨)と答えるなど、言い分が大きく食い違うことが往々にしてあります。


 それでは、裁判官はどのように監護実績を判断するのでしょうか。


(2)一番大きな鍵になるのが連絡帳
 お子様を保育園に通わせている場合には、毎日連絡帳を記帳していることも多いと思います。このように連絡帳を誰が記入しているのか、どこまでの内容を書いているのかという点は非常に重要な判断要素になります。
 率直に言いますと、監護実績について端的に証明できる証拠は通常ほとんどなく、連絡帳がほぼ唯一の証拠と言えるからです。連絡帳は、日々、自然な形で記帳していますので、当時の様子を探る貴重な資料とされることが多いのです。


(3)育児日記は?
 親権紛争で時折問題になる「育児日記」というのは、自主的にノートなどに普段のお子様の様子やかかわり方等を定期的に記帳した日記のことを言います。
 当時から毎日記帳していたということを相手側も認めているようでしたら、育児日記も貴重な資料となります。ただ、相手が「妻は普段からそんな日記は付けていなかった。今回の手続きに備えてバックデートで作ったものに違いない」などと言ってきた場合には、それほどの証拠価値は認められなくなってしまうことも多いです。

 特に育児日記とは言っても、大切なイベントなどがあったときのことしか書いていないというものについては、本当にその日に作成したのかという点の証明が難しいのが難点です(連絡帳の場合、毎朝記帳しなければならず、その後に毎日保育園の保育士の返答コメントがありますので、バックデートで作成することは非常に困難です)


(4)お互いの勤務形態も重要
 同居中のお互いの勤務形態も、育児への関わり具合を探る重要な判断要素になります。
 例えば、夫側は毎日遅くまで仕事をし、他方妻側は専業主婦だったという場合には、妻側の方が育児に関わる場面は大きかったということになります。同様に、共働きでも、妻側は時間短縮勤務で、夫側はフルタイム勤務という場合にも、妻側の監護割合の方が大きいと判断されやすいと思います。


(5)写真は?
 写真をどこまで重視するかは裁判官によるところが大きいです。裁判官によっては、お子様との関わりを示す資料になるので、「写真も出してほしい」とリクエストしてくることもありますが、全体的には少数派ではないかと思います。
 写真はどうしても普段の様子というよりは、旅行等特別な行事の時などに撮影することが多いので、「普段の監護実績」の証明資料としては弱いという面があります。

 

 

3.まとめ


・監護実績についてはお互いの意見が大きく対立することが多い。
・連絡帳は監護実績を探る貴重な資料とされることが多い。
・育児日記は、それまでの作成経緯、相手がどこまで争ってくるのかによる
・お互いの勤務形態等も監護実績を探る客観的状況として重要である。
・写真は、あまり重視されない傾向が強い。

 

 

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1.離婚の際に親権のことが一番心配



 夫婦喧嘩の中などで離婚や別居を口走ったとき、旦那側から「お前ひとりで出ていけ」とか「親権は絶対渡さないからな」と言われる経験をしたことがある方も多いと思います。
 そうでなくとも、旦那側の普段の様子から、簡単に親権を諦めないと強く予想されることもあります。
 旦那との普段の生活を顧みるとこれ以上一緒に生活できない、離婚は覚悟しているという場合でも、親権のことが非常に心配に感じるという方は多いと思います。
 今回は親権のことで、特に、「今後の監護計画」という点にスポットライトを当てて解説していきます。

 

 

 

2.「今後の監護計画」って?


 「今後の監護計画」と言われても、初めて聞くとピンとこないことが多いと思いますが、要するに「今後お子様をどのように育てていくのか」といことです。
 より具体的に言いますと、①どこに住んで、②誰と一緒に生活し、③どの保育園・学校に通い、④週末や長期休暇時にお子様にどのような体験をさせ、⑤離れて暮らす夫との面会交流をどうしていくのかといった今後の具体的な計画になります。

 

 親権者について夫婦間で激しい争いがある場合には、裁判官から「子の監護に関する陳述書」を作成するよう指示されることがあるのですが、「今後の監護計画」も当該陳述書の記載項目の一つになります。

 このような監護計画は、短くまとめてしまいますと、「実家の両親が住む○○県○○市の一軒家で、子供にとっては母親である私、祖父母と一緒に暮らしていく予定です。実家から徒歩10分ほどのところに認可保育園がありますので、そこに通園させる予定です。実家の近くには大きな公園や山があるので、週末などは自然に存分に触れ合って暮らしていく予定です。夫とは月1回程度は直接子供と会ってもらう予定です」というような形になります。
 ただ、人によっては、もっとより具体的で、子供にとっても素晴らしい環境であることを強くアピールしたいということを強く仰る方もいます(人によっては、監護計画だけで、3,4ページほどの文章を練り上げてくる人もいます)。

 

 

3.監護計画はどこまで重視されるか


 監護計画については、特に「お子様について特別なケアが必要な場合」には、しっかりと記載する必要がありますが、そうでなければ、そこまで重視される要素ではありません。
 なぜなら、監護計画はあまり具体的な裏付けがなくとも記載できる項目なので、それを全て実現できる保障がないからです。


 なお、ここでの「お子様について特別なケアが必要な場合」というのは、例えば、お子様に障害等がある場合とか、不登校になってしまっていたりとか、現在は児童養護施設に保護されており、施設退所後のケアが必要になるケース等が想定されます。お子様に障害等がある場合には、どのような支援学校に通わせるのか、医療的措置が必要ならば、どのような病院に通院させるなどするのかといったことを具体的に書く必要がありますし、不登校になってしまっている場合には、学校とどのように連絡を取ってケアしているのか、スクールカウンセラー等をどのように利用しているのかといったことを書く必要があります。児童養護施設に保護されている場合には、児童相談所とどの程度連絡を取って、同所とどの程度の信頼関係が築けているのかといった点を記載していくことになります。

 

 

4.実績を伴わない計画は裁判官の心に響かない


 いくら素晴らしい監護計画を披露しても、これまでの監護実績が不十分ですと、そのような計画を実践できるのか、裁判官は疑念を持ってしまうと思います。
 なぜなら、これまでしっかりお子様と関わってこなかった人が、「これからはしっかりと育てていきます」と言っても簡単に信用されないからです。
 従いまして、やはり親権紛争については、今後の監護計画というよりも、これまでの監護実績の方が重要性が高いです。
 これまでの監護実績が十分なものでしたら、今後もその親に任せた方がお子様も安心だと感じるでしょうし、また、お子様のことを大切に思っていたからこそ、それだけこれまでも関わってきたのだと言えるからです。

 そのため、「子の監護に関する陳述書」を記載するときなどにも、「監護計画」よりもこれまでの育児やお子様への関わりの箇所の方に重点的に具体的な事情を記載してもらうよう私の方からお願いすることが多いです。

 

 

5.まとめ


・今後の監護計画は、そこまで重視される要素ではない。

・お子さんのケアが必要な事案では、どのようにケアしていくのかを具体的に記載しなければならない。

・実績を伴わない計画は、裁判官の心には響かない。

 

 

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