2024.03.18更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

なお、④の「心理的虐待」について、児童虐待防止法は「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」としていますので、単なる暴言等では足らず、その内容が「著しいもの」、すなわち、悪質であったり執拗であることが必要になります。

 

 

2.そもそも「子どもへのモラハラ」


 モラハラについては 「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと定義されたりしますが、これだけではピンと来ない方が多いと思います。具体的にお子様との関係での夫の発言や行動で「モラハラ」と評価し得るものとしては以下のようなものがあります。
なお、夫がお子様に直接手をあげるケースは、もはやDVに該当しますので、一旦モラハラとは分けて考えます(以下では、このようなDVにまでは達していないケースを想定して解説いたします)

【お子様へのモラハラの具体例】
①直接お子様に暴言を吐く(例:「お前なんか俺の子じゃない」、「ゲームばっかやってるからいつまでもバカなんだよ」「ほんとママに似て言い訳だけはうまいよな」等々)

②お子様を注意する際などに、わざわざ大きな声を出すなど、怒鳴ってくる。

③時間に関係なく(深夜等)説教や叱責が行われる。説教時間等が異常に長い(2,3時間続くことがある等)

④凶器(キッチンの料理包丁等)を持ち出して脅してくる。

⑤お子様に危害を加えるような発言をする(例:「今度同じことをしたら殴るからな」、「殴られないと治らないのか?」等々)

⑥説教等の際に土下座や正座を強要してくる。

⑦お子様を困らせようと「離婚」や「別居」の話を出してくるが、本気ではないことが多い(「ママに似てお前がバカだから、もう離婚だな」とか)

⑧敢えてお子様が傷つくようなことを言う(「お約束を守れなかったから、昨日買った誕生日プレゼントは捨てるぞ」とか「テストの点数が悪かったから、週末のお出かけは無しな」とか)

⑨機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)

⑩お子様が大切にしているものを壊される、捨てられる。

⑪唐突に怒り始めるため、その理由が分からない、理由を話してくれないので、(あなた自身もお子様も)いつも相手の動向を気にしながら緊張感を持って生活しなければならない。

⑫平気で嘘をつく、シラを切る(例えば、相手の了解を得て行動したのに、「そんな話聞いていない」とか「勝手に決めるな」と怒られるとか)

⑬考え方がコロコロ変わるため振り回される(昨日までは合成着色料が入った菓子は食べてはいけないと言っていたのに、今日帰宅すると「同僚がお菓子を持ってきてくれたんで分け合って食べるんだぞ」などと言って着色料入りのお菓子を配ってくるとか)

⑭相手の行動や言動の矛盾を指摘すると、あなたのせいにされる、あなたの方が侮辱される(お子様が叱られたので、お子様が「パパだってこういうことしてたじゃん」などと反論すると、あなたに対して「お前の教育がなってないから子供がこんな言い方をするんだ」とか「ほんとママに似て生意気だよな」とか言ってくる等)

⑮相手の生活態度等を注意すると逆ギレする、聞き入れない(夫の洗面所の利用時間が長いので、娘が「もうパパどいて、遅刻する」というと、「焦らせるな」とか「誰にそんな口を聞いてるんだ」と怒り始めるとか)

⑯お子様の容姿を侮辱する(「どうしてこんなにブスに生まれたんだろうな」「相撲みたいに太ってるな」「こりゃ整形しないと一生結婚できないな」等々)

⑰一定期間意図的にお子様を無視してくる。

⑱気に入らないことがあると舌打ちやため息をついてくる。

⑲自宅に監視カメラやレコーダーを設置して、あなたやお子様の行動を監視する。

⑳お子様の携帯電話や郵便物、財布の中身、手帳等を頻繁にチェックされる。

㉑お子様の携帯電話にGPSアプリ等をダウンロードすることで監視してくる。

㉒お子様の行動を執拗に確認してくる(少し帰宅時間が遅かっただけで、どこに行っていたのかとか誰と会っていたのかと執拗に聞かれるとか)

㉓お子様の行動を制限してくる(門限を20時と決めて、それ以降の帰宅を認めない、休日の外出着などについて事細かくチェックしてくる等々)

㉔金銭感覚が自分に甘く、あなたやお子様に対しては厳しい(自分は自身の趣味のものなどは頻繁に買ってくるのに、お子様が学校帰りにお菓子を買ってきただけで「勝手なことをするな」と怒り始めるとか)

㉕自分の労働や給料を誇示してくる(「お前の学費は、おれが苦労して稼いできたお金で払ってるんだぞ」「俺の仕事は特別なんだからな、そのことに毎日感謝しろよ」等々)

㉖ほとんど家事・育児をしていないのに、やっているように話してくる。

㉗あなたやお子様の意見を聞き入れない、自分の考えが正しいと固執する(高校進学先などについて「俺がここに入学させたいんだから、お前は合格するために必死に勉強だけしとけばいいんだ」とか旅行先について「お前らの行きたいとこなんて聞いてない」といった発言等々)

㉘友人や親戚の前でお子様の悪口を言う。

㉙SNS等でお子様の悪口を拡散する。

㉚他の兄弟姉妹の前でお子様の悪口を言う(通常はこちらにも聞こえるように言ってくる)

㉛身内や(お子様の)友人を侮辱する(「お前の友達の○○ってやつは最悪だな」「お前の友人の○○みたいにはなるなよ」等々)

㉜異常なまでに話を誇張してくる、大げさに言う(風邪を引いただけなのに「私はもう長くないかもしれないから、娘のことをよろしく頼む」と言ってくるとか、すれ違いで通行人の肩がぶつかっただけなのに「今殺されそうになった。この道は危ないから今後二度と通らない方が良い」と発言する等)

㉝被害妄想的な行動や言動が多い(お子様がその様な発言をしていないのに、「この前○○と言われてすごく傷ついた」とか、相手の仕事が計画通りに行かなかった事の責任をお子様に転嫁してくるとか、極端なケースだと「もう死にたい」「こんなにイライラするのはお前のせいだ」といった発言をしてくる)

 


3.「虐待」との線引きは?


前述の通り、「心理的虐待」について、児童虐待防止法は「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」としていますので、単なる暴言等では足らず、その内容が「著しいもの」、すなわち、悪質であったり執拗であることが必要になります。
 上記で具体例として挙げた33個のモラハラ行為のうち、複数のモラハラが行われているケースも多いのですが、その数が多ければ、心理的虐待になって、数が少なければ心理的虐待にならないというわけではありません。
 具体的な虐待の線引きは難しい判断が必要になりますので、詳しく知りたい方は弁護士にご相談なさってください。

 


4.「何をされたのか」ということも重要だが、それ以上に「どれだけの証拠があるか」という視点がより重要


 上記のようにモラハラ行為の具体例を挙げますと、自分のお子様については、何番と何番が当てはまる、具体的にはこういう被害を受けたというチェックにばかり目を奪われる方が多いです。
 もちろん、このような思い出し作業はとても大事なのですが、思い出す際には、どこまでの証拠・裏付けがあるのかという点もしっかりと確認する必要があります。
 モラハラ発言については、夫側が「そのようなことは言ってない」などと反論してくるケースが非常に多いため、裏付けが乏しいと、そのような事実があったのかなかったのかという点で大きくもめることが多いからです。
 もちろん、証拠が乏しいと、それだけで不利になるというわけではないですが、証拠があった方が有利に働くことは間違いありません。

 


5.まとめ方にも工夫が必要


 前述のモラハラ行為の思い出し作業にあたっては、特にあなたが何を求めるのか、夫側が何を強く争ってくるのかによって、まとめ方等に工夫が必要になることが多いです。
 夫側が離婚を強く争ってきそうだという場合には、お子様への虐待という視点よりも、むしろ、あなた自身がどのようなモラハラ被害を受けてきたのかという視点で過去の事実をまとめることの方が大事です。
 逆に、夫側が離婚には応じる可能性が高いが、親権を強く争ってきそうだという場合には、お子様への虐待という視点を重視してまとめる必要が出てきます。

 


6.まとめ


・一口にお子様へのモラハラと言っても多様な事例がある。
・心理的虐待との線引きは、その行為が「著しい」ものと言えるかどうかで区別されるが、専門的なことは弁護士に確認した方が良い。
・どのような虐待行為があったのかを思い出すことは大事だが、その証拠の有無ということの方がもっと大事である。
・離婚を中心にまとめるのか、親権を中心にまとめるのか、によって、まとめ方の考え方が変わってくる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2024.03.11更新

 弁護士秦

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神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

 今回は、上記の4つの児童虐待のうち、①の身体的虐待があることを前提として、警察や児童相談所に早めに通報した方が良いのかという点について解説します。

 

 

2.悪質なケースなどでは通報を躊躇すべきではない。


 例えば、お子様への暴力が何度も繰り返されているとか、お子様への暴力でお子様が怪我をしてしまったというような場合、夫の暴力は明らかに度を越していますので、警察への通報は躊躇すべきではないと思います。
 なお、警察に通報すると、夫が逮捕されて勤務先から解雇されてしまうと不安に感じる方もいるかもしれませんが、どうしても解雇を避けたいという場合には、「被害届を提出しない」という対応をすれば、あまり大事にせずに済むと思います(被害届を出さないと、警察も捜査に着手できなくなります)。
 このように被害届を出さなくとも、お子様が怪我をしているような場合には、警察官が夫のことを厳重注意し、今後暴力を振るわないことの誓約書を書かせるなどしっかりと対応してくれることが多いので、今後の夫の行動の歯止めとすることができます。夫側としても、次に警察を呼ばれたら逮捕されるかもしれないと考えれば、今後安易に暴力を振るうことが難しくなります。

 

 

3.通報先は警察なのか児童相談所なのか?


 お子様への身体的虐待のケースで、通報する目的は、今後夫が暴力を振るわないようにすることが最大の目的になると思いますので、その意味で、ほとんどの方は警察に110番通報しています。
 また、警察官が臨場した際に、お子様が怪我などをしている場合には、警察官から児童相談所に通報しますので、あなたの方で別途児童相談所に通報しなくても、情報は児童相談所に共有されることになります。
 なお、児童相談所に情報が共有されると、後に児童相談所の担当者が家庭訪問してきて、あなたやお子様から事情を聴き、その後に夫側からも事情を聴くという流れがオーソドックスです。

 

 

4.事前に警察に相談しておいた方が良いのか


 夫がこれまでにも何度かお子様に暴力を振るったことがある場合や、あなたに対しても暴力を振るったことがあるような場合には、事前に警察に相談して、情報を共有しておくことも有益です(相談する警察署は、あなたのご自宅の最寄りの警察署になります)。
 このように事前に相談しておくと、いざ110番通報した時に、円滑に対応してもらうことができます。
 なお、警察への相談の際には、①いつどのような暴力があったのかについてある程度思い出しておく、②暴力の証拠がある場合、その証拠も持って行くことが必要です。
 また、事前に相談をしておくと、1か月おきに定期連絡として様子に異変等がないか警察の方からあなたに電話をかけてくれることも多く、あなたとしても安心感を持つことができると思います。

 

 

5.逆に、児童相談所に相談するケースって?


 児童相談所に相談するのは、お子様のケアという側面が中心になると思います。
 夫からの身体的虐待によって、お子様の情緒が不安定になっているとか、発達に遅れ等が見られるとか、不登校や学校を休みがちになってしまったというような場合、児童相談所や子ども家庭支援センター(地域によっては、子ども家庭支援センターと児童相談所が同一だという地域もあります)に相談して、しっかりとお子様をケアして行く体制を整えていくということです。
 ちなみに、夫からの暴力をあまり深刻に説明し過ぎてしまいますと、児童相談所からお子様の一時保護を勧められてしまうこともあります。一旦、一時保護になりますと、何か月、ケースによっては1,2年近くお子様を返してもらえないということになってしまうケースも多いので、一時保護を利用するかどうかは慎重にも慎重に検討する必要があります。

 


6.警察や児童相談所から猛烈に別居を勧められるんですが


 警察や児童相談所の目から見てお子様の被害の内容が深刻だと感じた場合、お子様と夫が一緒に暮らすことは適当ではないということで、強く別居を勧めてくるケースもあります。
 そのような場合、客観的に見て被害が深刻なケースが多いものですから、真剣に別居を検討したほうが良いと思います。

 


7.まとめ


・お子様への暴力が繰り返されていたり、お子様が怪我をしたようなケースでは、警察への通報を躊躇すべきではない。
・今後の夫の暴力を改めさせるという点からは、児童相談所ではなく、警察に通報した方が良い。
・警察にだけ通報しても、警察経由で児童相談所に情報共有してくれる。
・警察に円滑に対応してもらうためには、事前に警察に相談しておいた方が良い。
・お子様のケアの必要がある場合には、児童相談所に相談するケースもある。
・警察や児童相談所が別居を強く勧めてくる場合には、被害が深刻なケースが多いので、真剣に別居を検討したほうが良い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2024.02.26更新

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神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

今回は、上記の4つの児童虐待の中でも「心理的虐待」に絞って解説していきます。

 

 

2.子供への心理的虐待(モラハラ)って?



 モラハラについては 「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと定義されたりしますが、これだけではピンと来ない方が多いと思います。具体的にお子様との関係での夫の発言や行動で「モラハラ」と評価し得るものとしては以下のようなものがあります(これが「モラハラ」の全て、というわけではなく、あくまで代表例とお考え下さい)。
なお、夫がお子様に直接手をあげるケースは、もはやDVに該当しますので、一旦モラハラとは分けて考えます(以下では、このようなDVにまでは達していないケースを想定して解説いたします)

 

(1)お子様に対して暴言を吐く
 お子様へのモラハラの典型例のようなケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。なお、暴言やあなたやお子様ご本人に向けられるケースだけでなく、パパ友やママ友、お子様の友人等が集まる場所等で発言されると、より一層お子様は傷つくことになると思います。
①お子様を侮辱するような発言をする(「バカ」「アホ」だとかの単純なものから、お子様の容姿を侮辱するもの、お子様の学習能力や知識不足等を侮辱するものなどがあります)
②お子様に危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)
③叱責する際などに敢えてお子様が傷つくようなことを言う(例えば「テストの点が悪かったから、おまえのこのゲームは捨てるからな」、「朝の勉強をさぼっていたから、週末はお出かけ禁止な」とか「遊びに行ってる暇があったら、ドリルを1ページでも進めとけよ」等)



(2)執拗な責め立て等
 これもお子様へのモラハラとしてはよく見られるケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。
①些細な問題を執拗に責め立てる(「この前のテストで90点だった理由をしっかりと説明しろ」「昨日音楽の笛を学校へ持って行き忘れたことの反省文を書け」「この前の誕生日会で俺に恥をかかせたことについて、参加者に謝ってこい」等々)
②責め立てが何時間も延々と続く
③責め立てが夜中や早朝など時間を問わず長々と続く
④責め立ての際、正座や土下座を強要する



(3)物への八つ当たり等
 例えば、機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)といったものです。
 特にお子様が大事にしているものとか、お子様のデスクや衣装ケースなどを傷つける行動は、お子様にもショックが大きいと思います。



(4)行動監視や強要
 例えば、以下のようなものがあります。
①お子様のスマートフォンにGPSアプリを入れて頻繁に位置情報を確認してくる
②門限その他家庭内のルールを作って、お子様に強要する(勉強の時間は何時からとか、入浴の時間は何時からなどと細かく決めた上で、1分でも過ぎると執拗に責め立ててくるとか)
③お子様が口にするお菓子等について夫の気分次第で種類や値段を制限してくる

 このように、一口にお子様へのモラハラと言ってもいくつかの態様があるのですが、いかでは、特に暴言といった形態を中心として、どのようなものが証拠になるのかを解説していきます。

 

 

2.やはり確実なのは録音データ


 DVのケースですと、怪我を負わされるケースが多いため、診断書や怪我の部位を撮影した写真がもっとも確実な証拠と言えます。これに対して、モラハラの場合には目に見える怪我は残りませんので、診断書や写真を準備することはできません。

 そのため、相手がどのような雰囲気でどのような言葉を発したのか、こちらからの発言に対してどのように抵抗してきたのかと言ったところを正確に記録できますので、その意味で録音データは確実な証拠になるといえます。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。


(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなたやお子様がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、あなたがどのように対応したのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、あなたの反応やお子様の反応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。




3.メールやLINE


 例えば、夫があなたに対してお子様のことを非難するメールを送ってきたとか、夫がお子様に直接送ったメールでモラハラ発言をしてきたというような場合、有力なモラハラの証拠になります。


 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分モラハラの証拠にはなります。

 LINEやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやLINEをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、場合によってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやLINEをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。LINEのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやLINEの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、あなた自身が、お子様のモラハラ被害の内容を親友や親族に対してLINEやメールで相談してきたという場合、内容次第ではモラハラの証拠になり得ます。なお、どの程度モラハラの立証に役立つかは、LINEやメールの文面はもちろん、タイトル名、相談しているモラハラ被害の具体性、文面全体の位置づけ等を考慮する必要があります。

 


4.物の被害



 物に深刻な被害が生じた場合、モラハラと言うよりDVに近くなる様にも思えますが、モラハラの延長で、夫が投げつけてきた場合、破損した物は証拠になり得ます。例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 



5.子ども家庭支援センター等への相談記録



 モラハラ夫の暴言に悩まされている場合、その間に子育て支援センターにご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、相談した際のやりとりがセンターの方に保管されていますので、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。

 なお、モラハラの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ子ども家庭支援センターに相談するはずないんだから、相談をしているだけで、モラハラの証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「子ども家庭支援センターに相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 



6.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。


 例えば、お子様が、当時のモラハラの様子を証言してくれるという場合、お子様はモラハラの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、モラハラに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親のモラハラを誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 



7.モラハラの証拠が少ない、ほとんどないという場合



 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった夫が豹変して暴言を吐いてきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、夫の暴言を受け入れられず、また元の優しい夫に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。
 私の経験上、今ある証拠をもとにモラハラ夫を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 ただ、そのような場合、どのようにモラハラ夫と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

8.まとめ


・一口に心理的虐待(モラハラ)と言っても複数の態様があるので、どのようなものがモラハラなのかを把握しておく必要がある。

・録音データはモラハラの最有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。
・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、モラハラ発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。
・子ども家庭支援センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・物の被害を写した写真は、直接モラハラの証明にすることは難しいケースもある。
・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・モラハラの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

 


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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

 今回は、上記の4つの児童虐待のカテゴリーの中から①の「身体的虐待」に絞って、どのようなものが証拠になるのかについて解説していきます。

 


2.やっぱり最も確実なのは診断書と写真



 法律用語で言いますと「客観的証拠」などと表現しますが、お子様が怪我をさせられた診断書や怪我の部位を撮影した写真は、身体的虐待の証拠として最も確実な証拠といえます。

(1)ただ、診断書につきましては、その内容にも注意が必要になります。
  まず、複数怪我を負った場合に、病院によっては、大きな怪我だけを記載し、小さな怪我は一切記録を残していないと言うことがありますので、診察を受ける際には小さな怪我を含めて全ての怪我を病院に申告することが重要です。

 次に、診断書の発行を受ける際には、治療期間も記載してもらうようにして下さい。例えば「左上腕打撲で当院通院中」だけだと、どの程度の怪我で、どの程度の期間通院すれば完治するのかが分かりません。そのため「左上腕打撲で加療2週間の見込み、現在当院通院中」といった形で、治療期間が分かると望ましいです。

 もう一つの注意点としては、病院に本当の怪我の原因を話すと言うことです。なかなか医者に対して「父親に殴られた」といった話はしづらいのですが、「階段で転んだ」とか、「他人の喧嘩に巻き込まれた」と嘘の申告をしてしまいますと、カルテにその様に記載されてしまいます。相手が裁判で争い、病院にカルテの開示を求めると、カルテが裁判所に提出されることになりますので、裁判官は「本当は父親の暴力ではなく、階段で転んだだけなのではないか?」と疑問に感じてしまう虞があります。



(2)次に写真ですが、怪我の部位のみの写真にしないよう注意が必要です。
 より分かりやすく言いますと、その写真にあなたの顔も写るようにして欲しいということです。よくありがちなのが、怪我をした手の甲の部分だけの写真や足の膝の部分だけの写真を撮っている人がいらっしゃいますが、これでは、その手や足があなたの手足なのか、実は他人の手足なのかが写真だけでは分かりません。裁判になると、相手は、「それは友人の写真で本人の写真じゃない」といった形で争われる原因になりかねません。

 そのため、写真は必ず複数撮影し、お子様の顔と怪我両方が写った写真と、怪我の部位をより拡大した写真を撮るようにして下さい。

 



3.警察への通報記録や子ども家庭支援センター等への相談記録



 先ほどお話ししましたとおり、診断書や写真が確実性の高い証拠と言えるのですが、次いで確実性が高い証拠としては、警察への通報記録や子ども家庭支援センター等への相談記録があります。
 旦那の暴力に対して警察に110番通報したことがある場合、その通報記録が警察の方に残りますので、申請をすれば、その開示を受けることができます。子ども家庭支援センター等への相談記録も同様です。

 なお、DVの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、110番通報簿については、警察の方で大して詳しい記載をしてくれていないという場合があり得るのと、プライバシー保護等の観点から開示資料に黒塗り部分が多いというケースもあります。そのため、どの程度DVの証明に役立つかという点に関しては、資料の内容を精査する必要があります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ110番通報なんてするはずないんだから、警察が来てくれただけで、DVの証拠になるでしょう?」とおっしゃる方もいますが、安易にその様に考えるのは危険です。
 例えば、旦那が酔っぱらって騒ぎ始めたのですぐ110番通報したが、警察が来たときには旦那は外出してしまっていたと言ったケースですと、記録としては「旦那不在」としか書かれませんのでDVの証拠にすることは難しいと思います。

 現状の裁判実務を見ますと、「警察を呼んだ」イコール「大変なことが起こった」とは考えないことが多く、結局は通報記録簿に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 



4.録音データ



 録音データを記録している場合、通常は、診断書または写真の準備も調っていることが多いのですが、診断書・写真を補強するものとして、録音データも重要性が高い証拠と言えます。

 スマートフォン等で録音しておくと暴力時の打撃音等を録音することができる場合がありますし、DV夫がどのように発言しながら暴力をふるったのかと言う点や暴力前の言葉のやり取りを拾うことができます。何より当時の雰囲気を、臨場感を持って伝えることができますので、当時の雰囲気を伝える証拠としては有力な証拠になり得ます。

 また、DV夫が「嫁が挑発してきたから殴ったんだ」といった言い訳をする場合がありますので、録音データがあれば、暴力に至る経緯を詳しく証明できることもあると思います。

 



5.メールやLINE



 例えば、暴力をふるった翌日に旦那が暴力を詫びるメールを送ってきたとか、あなたの方から旦那に対して「昨日の暴力で子供の顔にアザがあるから、今日は保育園を休ませる」と言ったメールを送っている場合、それもDVの一つの証拠になります。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、暴力の程度が分かりにくいことが多いということには注意が必要です。

 また、LINEやメールの評価については、旦那から来たLINE・メールの方が、あなたが送ったライン・メールよりも証拠の価値は高いです。と言いますのは、旦那が自分の暴力を認めるメールは、いわば自白の様なものですから、他の方が書いたLINE・メール以上に価値が高いと言えるのです。

 これらの点を踏まえると、LINE・メールそのものを直接のDVの証拠にするというよりは、診断書や写真を第1の証拠とし、ライン・メールは補強として使うというイメージかと思います。なお、その場合、旦那が暴言を書き連ねているようなケースですと、そのLINE・メールは、普段の旦那の横暴な態度を示す証拠になると思います。

 



6.物の被害



 DV旦那が投げつけてきたために大破したスマートフォン、旦那が殴りつけて空いた壁の穴、旦那が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、お子様自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 



6.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、お子様が、当時のDVの様子を証言してくれるという場合、お子様はDVの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、DVに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の暴力を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては診断書や写真の方が格段に評価が高いのが実情です。

 



7.DVの証拠が少ない、ほとんどないという場合



 もちろん、上記の様な診断書や写真があれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった旦那が豹変してお子様に暴力をふるってきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、旦那の暴力を受け入れられず、また元の優しい旦那に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。
 私の経験上、今ある証拠をもとにDV旦那を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 ただ、そのような場合、どのようにDV旦那と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 



8.まとめ


・DVの証拠としては、診断書や写真が確実性が高いが、その内容については注意点もある。
・警察への通報記録や子ども家庭支援センターへの相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・録音データも当時の雰囲気を知るための有力な証拠になる。
・ラインやメールは書き込みの内容次第である。
・物の被害を写した写真は、直接DVの証明にすることは難しい。
・証言は、診断書等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・DVの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2024.02.05更新

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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

 

 

2.児童虐待は離婚理由になるか


(1)離婚を決意する理由としては十分
 お子様が上記のような虐待行為を受け、酷い目にあっている場合、あなたとしては、そのことで非常に胸が痛み、苦しい思いをすることになると思いますので、そのことは離婚を決意するだけの十分な理由になります。


(2)裁判上の離婚原因はまた別問題
 他方で、仮に夫側が離婚を強く争い、離婚裁判までもつれ込んだ場合、離婚裁判では、民法上、強力な離婚理由が必要になってきます。お子様への虐待は、その内容が非常に深刻なものであったり悪質なものである場合には、裁判上の離婚原因に該当する可能性もなくはないですが、直ちに裁判上の離婚原因とはしにくいケースの方が大半だと思います。
 離婚は、夫婦の関係を解消するものなので、第1義的には、夫婦の間でどのような問題があったのかという点が重視されるため、お子様への虐待を直接の離婚原因とはしにくいのです。

 

 

3.むしろ視点をあなたへの暴力・モラハラという点に移して戦うべき


(1)調停や裁判での戦い方
 もちろん、あなたとしては、夫の子供への暴力が許せないとか、夫の子供への性的虐待が特に見過ごせないと感じて、離婚を決意したのでしょうし、そのようなお気持ちを変える必要はありません。
 ただ、いざ調停や裁判で相手と対峙していくにあたっては、調停委員が賛同しやすい離婚理由、裁判官が納得しやすい離婚理由を掲げたほうが、有利に働きます。
 そのため、児童虐待の点を指摘するとしても、離婚したい理由としては、むしろ、夫側があなたに対してどのような行動・言動に出ていたのかという視点から整理した方が良いと思います。
 例えば以下のような整理を検討してみて下さい。


(2)夫がお子様への身体的虐待を繰り返す場合
 夫がお子様に対して身体的虐待を繰り返すケースですと、夫のあなたに対する暴力がゼロというケースはほとんどないと思います。
 仮に、最初は暴力を振るっていなかったとしても、あなたがお子様を守るために間に入れば、夫側の暴力の矛先はあなたに向かうことが多いと思います。
 そのような夫からあなたへの暴力をクローズアップして離婚理由として組み立てていくのです。
 そうすることで、あなたは夫から直接暴力被害を受けているということになりますので、離婚が認められやすくなる大きな要素になると思います。


(3)夫がお子様への性的虐待を繰り返す場合
 夫側がお子様に直接性的行為をしたり、実際の性的行為を実演している様子をお子様に見せるというケースは実際には少ないとは思います。現実的には、夫側が性的にかなり不適切な言動に及んだり、性的な映像等をお子様に見せたりというケースの方が多いと思いますが、このような不適切な行動に及ぶ夫は、あなたに対する関係でも不適切な行動に出ていることが多いと思います。
 例えば、あなたに対する性的な異常行動であったり、あなたに対しても性的にあまりに不適切な言動に出るといったことが代表例ですが、このような行動があった場合、夫のあなたに対する直接の被害と言えますので、この点をクローズアップして離婚理由とした方がより有効打になります。


(4)ネグレクト
 夫側が普段から家事や育児を全面的に担当しているというケースはほとんどないと思いますので、夫側のネグレクトというのは、実際には、①お子様への罰としてトイレや押し入れ等に長時間閉じ込めるとか、②不潔にさせるよう強いるといったケースが大半ではないかと思います。なお、②の「不潔にさせるよう強いる」というのは、例えば、「水道代がもったいないから、風呂には1か月に一回しか入るな」と命じられるとか、「お金がもったいないから娘は美容院に連れて行くな」と言われ、1年以上美容院に連れて行けずに髪が伸びっぱなしであるとか、「洋服代がもったいないから洋服は買うな」と言われ、友達のお古の洋服しか子供に着させられないといったケースを指します。このようなケースでは、夫側が家計を握っていて、あなたが自由にできるお金がほとんどないという状況が多いと思います。
 ネグレクトについても、上記の①のようにお子様に罰を与えるような夫の場合には、あなたに対しても気に障ることがあると罰を与えてくることが多いと思いますので、その点をクローズアップしていくことになります。
また、②については、あなたに対する経済的締め付けとセットのことが多いと思いますので、あなたに対する夫からの経済的締め付けということで離婚理由とすることが多いと思います。


(5)心理的虐待
 心理的虐待についても同様で、お子様に対して脅し文句を言ってきたり、暴言を吐く夫は、あなたに対しても脅し文句を言ってきたりすることが多いと思います。
 そのため、実際には、あなたに対する夫からのモラハラ行為といった形で離婚理由に結び付けていくことが多いと思います。


(6)実際の離婚の認められやすさはケースによる
 上記のとおり、夫と離婚したい理由という観点からは、夫のあなたに向けられる行動・言動という視点が大事なのですが、そのような事情があれば簡単に離婚できるというわけではありません。
 例えば、モラハラと一口に言っても、非常に悪質なものから、そこまで深刻とまでは言えないケースなど多様ですので、離婚の認められやすさは、その具体的な内容を精査して、しっかりと見極めていく必要があります。実際に、あなたのケースでどこまで戦っていけるか確認したいという場合には、是非弁護士秦の無料相談をご利用ください。

 

 

3.結局子供への虐待は、離婚では何も役に立たないのか?


 これまでの説明を見ますと、お子様への虐待は離婚との関係で何も役に立たないように感じてしまうかもしれません。
 確かに、離婚できるかどうか、離婚しやすいのかという点では、必ずしも大きな効果はないかもしれませんが、親権争いといったところで、虐待の有無・程度ということが大きく影響してくることが多いです。
 夫は虐待親であるにもかかわらず、親権を主張してくるようなケースも少なからずありますので、夫婦のどちらが親権を獲得するのかという場面で、児童虐待は大きな判断要素になります。

 

 

4.まとめ


・お子様への虐待は、離婚を決意する十分な理由になる。
・ただ、離婚裁判での離婚原因は厳格なので、児童虐待があっても直ちに「離婚原因あり」とはされにくい。
・調停や裁判で、離婚したい理由としては、あなた自身が受けてきた被害という視点でまとめていくことが重要である。
・お子様への虐待は、親権争いで重要な意味を持ってくる。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2024.01.29更新

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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、具体的な内容は以下の通りです。

第二条 この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。
一 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

 

 

2.それぞれの概要


 児童虐待防止法の定めは前述の通りですが、これだけを見ていても理解しにくいと思います。そこで、以下、それぞれの意味について、概要をご説明いたします。


(1)身体的虐待
 厚生労働省のサイトなどでは「殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など」と具体例が書かれていますが、もちろん、身体的暴力に該当する行為は全て含みますので、これらの行動に限定されるわけではありません。
 なお、児童虐待防止法上は、お子様に怪我ができるか、怪我ができる可能性があるものを一つの線引きとしています。

 

(2)性的虐待
 厚生労働省のサイトなどでは「子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など」と具体例が書かれています。
 なお、実際には、上記のような露骨な性的虐待ではなく、①夫がお子様に対して性的に不適切な言動に及ぶ場合や②お子様の前であるにもかかわらず、性的描写のある映画や動画、本等を鑑賞するといったケースの方が多いかと思います。これらの①や②のケースは、残念ながら、上記の露骨な性的虐待よりは悪質性が落ちるため、その言動の内容や鑑賞内容がかなり露骨なものであったり、執拗なものであったりしないと、直ちに「性的虐待には当たらない」ケースも多いので注意が必要です。

 

(3)ネグレクト
 厚生労働省のサイトなどでは「家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など」と具体例が書かれています。
なお、朝登校準備等で慌ただしく、お子様が朝食を食べずに出かけたことをもって、ネグレクトなどとおっしゃる方もいますが、児童虐待防止法は児童の心身の正常な発達を妨げるような「著しい」減食としていますので、直ちにネグレクトには該当しにくいかと思います。


(4)心理的虐待・面前DV
 厚生労働省のサイトなどでは「言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など」と具体例が書かれています。
 なお、児童虐待防止法は、「児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応」を児童虐待と定義していますので、多少のきつい言い方は、直ちに児童虐待には該当しないこともあります。

 

 

3.「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ではないこと


 上記のような児童虐待の解説をしますと、「夫は、機嫌が悪くなると子供に八つ当たりのようになるが、直接手をあげるわけではないから」とか「夫は、娘に対して、わいせつな冗談を言うけれど、児童虐待防止法の『性的虐待』とまでは言えないのかも」といった不安を持つ方もいらっしゃいます。
 ただ、上記の児童虐待防止法が禁止する児童虐待は、それ自体が犯罪に該当したり、直ちに児童相談所が対応しなければならないような「重大・深刻なケースばかりを想定しています」ので、「児童虐待にまでは至らない」イコール「許される」ということにはなりません。

 

 

4.結局「しつけ」との線引きは?


 結局、児童虐待と表現するかどうかはともかくとして、許容限度を超えるような不適切な関わりと、しつけとの線引きはどこにあるのでしょうか。なお、「性的虐待」はあまりしつけとは関係性が薄いため、「性的虐待」との関連性は割愛させて頂きます。


(1)身体的暴力
 前述の通り児童虐待防止法は、お子様が怪我をするとか怪我性があるという点が、児童虐待に該当するかの大きな線引きになっています。
ただ、怪我をするかどうかを問わず、夫がお子様を殴ったり蹴ったりするような行動をとること自体、かなり不適切な関わりと言えると思います。これは怪我をするかどうかの問題ではないと思います。
なお、暴力については、
・息子の勉強の出来があまりに悪かったからだ
・まじめに勉強しているように思えなかったから、こうした
・約束を破ったので、体罰は必要悪だ
・嘘をつくような子には、ある程度懲らしめることが必要だ
・妻が言うことを聞かせられないので、やむを得ず私がこうしている
・俺が小さい頃はこのくらいのことは普通だった
・少し殴られるくらいの方が体が頑丈になるんだ
・嘘をつくことが癖のようになってしまっているので、体で覚えさせる必要がある
・生意気な態度をとるので、社会の厳しさを教えてやってるんだ
などと、夫側が暴力の正当化の理由を述べることもありますが、暴力自体が許されないものですので、どのような経緯・理由があっても、それが「適切」になることはないと思います。


(2)ネグレクト
 しつけとの関係でよく問題になるのは、体罰のような形で、例えば、①押し入れやトイレなど狭い場所や暗所に長時間閉じ込める、②些細な約束違反で食事を一切与えない・そのようなことが何度も続く、③お風呂で遊ぶことが好きなお子様も多いと思いますが、何日も入浴を禁じる、④室内がゴミ屋敷のようになっており、長期間そのような状態が継続している、といったものが具体例として挙げられると思います。


 なお、相手のネグレクトを指摘する場合には、あなた自身がそれを改善できなかった事情等も証明しなければならないという問題があります。
 例えば、あなたが仕事から帰って来ると、先に帰ってきていた夫が娘をトイレに閉じ込めていたというようなケースですと、あなたが気付いてから、娘様を救出するまでに長時間がかかってしまいますと、あなたが閉じ込めの共犯のようになってしまう恐れがあるということです。
 閉じ込めだけではなく、お子様への食事禁止、入浴禁止、室内の清掃禁止の状況についても、同様のことが言えます。
 そして、こちらから、夫の問題行動として指摘すると、逆に、夫の方から「子供に食事を与えていなかったのは妻の方だ」などと、逆にあなたの問題行動として指摘し返してくるケースもあります。
 いずれにしましても、ネグレクトは「夫婦の連帯責任」というように捉えられやすいので、十分注意が必要です。


(3)心理的虐待
 一口に心理的虐待と言っても範囲が非常に広いので、なかなか特定が難しいのですが、少なくともお子様への執拗な誹謗中傷やきつい責め立て、脅しといった行動が不適切であることは間違いがありません。
 「身体的暴力」の箇所で解説しました通り、心理的虐待の経緯や理由がどうであろうと、その行動が「適切」となることはないと思います。

 

 

5.まとめ


・「児童虐待」については児童虐待防止法に定義があり、大別すると①身体的暴力、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVに分けられる。
・児童虐待防止法上の「児童虐待」に該当しないからと言って「許される」ということにはならない。
・身体的暴力は、いかなる経緯・理由があっても基本的には不適切な行為と言える。
・ネグレクトを指摘する場合「夫婦連帯責任」と言われてしまうことが多いので注意が必要である。
・心理的虐待についても、その言動が悪質であったり執拗であったりすると、許容し得ない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.10.02更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫は、いまだに「離婚はしたくない」と言っているが、こんなことはあるのか?


 実際、私が担当した事件ですと、夫が監護者指定事件を起こしながら、夫婦関係についてはヨリを戻したいと言ってくる夫はかなりの数います。
 そのため、私の感覚で申しますと、「そんなに特殊な話ではありません」という回答になります。

 

 

3.夫の監護者指定審判申立書を読む限り、妻への攻撃ばかりなんですが…


 夫の監護者指定審判申立書を見ますと、どれだけ夫が育児に関わってきたのか、逆に、あなたの育児が至らなかったのかを縷々述べていますので、読んでいて「これだけ私の事を攻撃しておいて、良く離婚したくないなんて言えたものだ」と感じる方もかなり多いです。
 しかも、夫の言い分が正確な事実でしたらまだしも、虚偽や誇張が多いため、一層妻側の不信感が増すというケースは多いです。

 

 

4.夫は何を意図しているのか?


 私が実際に担当した事件での夫側の様子を見ていると、いくつかのパターンがありますので、以下の通り整理します。


(1)【パターン1】こちらが主張している離婚理由を全く理解していない・理解しようともしない。
 監護者指定事件で争っている場合、こちらからは平行して離婚調停を申し立てるなどして対応しているケースも多いです。
 その場合、こちらからは離婚したい理由をしっかりと伝えているのですが、夫側が全く理解していない・理解しようともしないということもあります。
 極端なケースですと、夫側から「こちらが妻から嫌われる理由がない」とか「どうして離婚と言われるのかがよく分からない」という主張がなされることすらあります。


 そのため、夫側は、「監護者指定事件で争いはするけれども、妻と別れたいわけではないんです」などと主張してくるのです。
 また、このような夫がよく口にするフレーズは「自分は暴力を振るったり、浮気をしたこともないので、後ろ指を指されるようなことは一切ない」とか「こんなことは他の家庭でもよくあることだと思いますので、これで離婚というのはおかしいと思います」といったものです。


(2)【パターン2】法律上の離婚原因がないことを証明したいというパターン
 どちらかというと、夫側の反応としては【パターン1】のケースの方が多いのですが、たまに、「法律上の離婚原因がないことを証明したい」と言い出す夫もいます(【パターン2】のケース)。
 要するに、離婚裁判などで、自分に非がないことをしっかりと証明したいというパターンでして、実際には夫婦の今後というよりも、夫自身の正当性を証明することを重視しているのです。
 特に自身のキャリアなどを重要視する夫ですと、「これまでの婚姻生活で過ちを犯していないことを証明したい」という考えを持つことが多いようです。


(3)【パターン3】他の離婚条件の話を進めたくない
 このようなパターンも相当数あるのですが、夫側としても、あなたの様子などを踏まえて、内心では、離婚は避けられないと感じていても、離婚に応じてしまうと親権や養育費・財産分与といった議論をスタートしなくてはいけなくなるので、このような議論をしたくないがために、「離婚したくない」と言ってくるのです。
 夫側も内心では「離婚やむなし」と思ってはいますので、離婚裁判になる前に夫側が離婚には応じて来たり、離婚裁判になった直後から、「離婚は争いません」と言ってくることも多いです。


(4)【パターン4】単純に寂しい
 上記の【パターン1】から【パターン3】と複合して夫側が述べてくることも多いのですが、お子様もいる生活だとにぎやかだったのが、急に別居で家庭内があまりに静かで「やりきれない」「寂しい」というパターンです。
 このような一人だけの生活は「どうしてもやりきれない」という感情が強いと、今後の離婚についても長期化することも多いです。

 

 

5.こちらは粛々と手続きを進めていく他ない


 夫が上記のように離婚したくないと述べたとしても、こちらは離婚の意思が固いことが多いと思いますので、粛々と手続きを進めていくしかありません。
 ただ、夫側が真剣に「離婚する理由が分からない」と考えている場合には、最後の最後までこちらが夫を嫌悪していることは伝わらないというケースもあります(その場合には、最終的に離婚裁判の判決で離婚を決めてもらうことになります)

 

 

6.まとめ


・夫側が監護者指定事件を起こしつつ「離婚したくない」と述べてくるケースはそれほど珍しい話ではない。
・夫側は監護者指定事件の中でこちらのことを積極的に攻撃しているが、それと離婚するかどうかは別個の問題だと捉えている。
・夫の「離婚したくない」は、本当に「離婚すべき理由が分からない」というケースもあれば、内心離婚は避けられないと思いながらも、今は離婚に向けて話し合いたくないというケースもある。
・こちらは、夫の意思はどうあれ粛々と手続きを進めていくしかない。

 

 

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>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(2)ー妻側の勝率は?

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2023.09.18更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫が習い事に関して熱心に関わっていた


 夫側がお子様の習い事に熱心に関わっていたというのは、男の子のお子さんの場合、サッカーを習っていて、そのサッカーチームの送迎を手伝ったり、自主練習の時に練習の手伝いなどをしたとか、女の子のお子さんの場合、ピアノのレッスンの送り迎えをしたり、発表会に向けての自主練習の手伝いをするといったものです。
 なお、今回の解説は、夫側がかなりの割合で習い事に関わり、相対的にあなたの関わりが少ないというケースを想定して解説します。
 要するに、お子様が複数の習い事をしていて、その一つは夫側が直接かかわり、他の習い事はあなたが直接かかわるように、夫婦で習い事の関わり・負担をうまくシェアしていたようなケースは除きます(このようにシェアしていたケースですと、習い事の面で夫婦間で優劣がつかないと思われるからです)。

 

 

3.監護者指定事件で重視される「子どもとの関わり」って?


 監護者指定事件で重視されるのは、お子様の「育児」という面で、どこまで関与していたのかという点です。
 具体的には、お子様の衣食住にどの程度親御さんが関わってきたのか、という点が重視される傾向が強いです。


 「衣」というのは、お子様がまだ小さい年齢の時には、おむつ替えや着替えの補助、もう少し年齢が上がったお子様の場合には、季節に合った服装をさせること、そのような洋服を購入すること、および身だしなみや清潔さの確保を意味します。
 次に「食」というのは、お子様の食事の支度を意味し、お子様の栄養バランスを確保し、少なくとも平均的な健康状態や成長を保つことができているのかどうかという点です。お子様が持病を持っていたり、アレルギーを持っているような場合には、それに対してどのようにケアしているのかという点も重要な要素になります。
 最後に「住」というのは、お子様の安心できるような清潔かつ整理整頓された住環境が確保されていることを意味しますが、この中には、お子様の躾や教育面も含めた意味で使うこともあります。


 このように、お子様の習い事は、「住」にある程度関連する項目になってくると思います。

 

 

4.「習い事に関わっている」ということをどう評価するか


(1)衣食住にある程度関連してくる
 習い事は、スポーツですとお子様の身体づくりに役立ちますし、学校教育との関係でも体育等の科目にも影響があります。音楽関係ですと、学校教育との関係でも音楽の科目に影響があります。
 また、集団行動に関わってくることも多く、お子様の躾に関わってくる側面もあります。


(2)お子様の意識・希望への影響
 お子様の年齢にもよりますが、家庭裁判所調査官が、お子様と直接話をして、お子様にとって父親がどんな父親なのかといったことを確認することも多いです。
 その際には、お子様にとって、習い事によくかかわってくれる父親だという場合には、好印象を持っている場合もあり、このような心情調査で夫側が多少有利になる可能性はあります。


(3)以上のように、夫が習い事に熱心に関わっている場合には、多少なりとも夫側の有利に働くことにはなります。ただ、直接的な教育等とは別ですので、その内容がよほど特徴的な場合を除き、そこまで夫側に大きく有利になる話ではありません。

 

 

5.どのように対策するのか?


 監護者指定事件において、裁判官は、夫婦の言い分を鵜呑みにするのではなく、どの裏付けからどのようなことが言えるのかということを重視します(要するに、単なる「言い分」よりも裏付け証拠の方を重視するという意味です)。
 特に、夫側が習い事に関わってきたという場合には、習い事に関わっているときの写真などを提出してくるパターンが多いです。
 そのため、まずは、この写真について問題があるようでしたら、それを指摘して切り崩すという作業をすることが多いです。

 

 

6.習い事への関与がお子様の心理的負担になっている場合


 夫側が習い事に関わることがお子様の大きな負担になっているというケースもかなり多いです。
 実際に私が担当した事件では以下のようなものがあります。
① 野球の試合でミスをすると夫に強く叱責されるので、子供は試合に出たくないと言うことが多かった。

② 野球のレギュラーを取れないとペナルティーを与える(例えば誕生日やお年玉がなしになるとか)ので、息子が泣いてしまうことも多かった。

③ 夫からサッカーの自主練習に付き合わされて、子供は常にへとへとだった。

④ サッカーの練習の送迎の際、夫の小言がひどく、いつも子供は憂鬱そうであった。

⑤ 娘は嫌がっているのに、夫がいつもダンス教室の送迎をしたがるので困っていた。

⑥ 夫は楽譜も読めないのに、娘の自宅でのピアノ練習に口を挟んでくるので、練習の邪魔になっていた。

⑦ 娘のスイミングの送迎を夫が担当していたが、迎えの際にはビール片手に酔っぱらっていることが多く、娘はかなり嫌がっていた。

 程度の大小はあるのでしょうが、夫が習い事に関わることでお子様にとって心理的な負担になっていたという場合には、夫側の貢献というよりも、むしろ悪影響とも言えますので、このような問題がある場合には、しっかりと指摘していく必要があります。

 

 

7.まとめ


・夫がお子様の習い事に熱心に関わっていたという事情は、お子様の衣食住の「住」に関連する事情である。
・そのため、習い事での関わりも、監護者指定事件に多少なりとも影響はある(特別な関わりでもない限り、大きな影響はない)。
・夫側が習い事に熱心に関わってきたという場合、写真などを証拠提出してくるパターンが多い。
・対抗策としては、写真の問題点を指摘したりすることが多い。
・また、夫の関わりがお子様の心理的負担になってしまっているケースも多いので、そのような事情がある場合にはしっかりと指摘していく必要がある。

 

 

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2023.09.11更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.要するにどういう話?


 これは、お子様との関わり方のどこに重きを置くのかの違いでもあるのですが、お子様と一緒に遊ぶこと、一緒に出掛けることに強い重きを置く夫もいます。
 そして、このことを実践している夫側からは、夫の方が妻よりも子供に強くかかわっているという主張をしてくるのです。
 この説明だけですと、やや抽象的ですので、実際に、夫側がどのような言い分を述べてくるのかをご説明します。

 (1)子供は、いつも週末は私(夫)と出かけていて、妻とは出かけたがりませんよ。

 (2)子供は、知人や友人の目から見ても「パパっ子」で、どこに行くにも着いてきますよ。

 (3)地元の知人や友人に聞いてもらえば良いですが、子供がいつも公園で一緒に遊んでいるのは私(夫)で、妻が一緒に遊んでいることは見たことがないと口を揃えて言いますよ。

 (4)子供の好みに合わせてプレゼントや企画をするのはいつも私(夫)で、妻はいつも任せきりですよ。

 (5)パパ友やママ友との交流は、ほぼ私(夫)しかしておらず、妻は、ほぼ全く交流がありませんよ。

 (6)子供の長期休み(夏休みや冬休み等)も、子供は私と出掛けて、妻とは出掛けませんよ。

 (7)家族で室内で過ごすときにも、子供は私(夫)に○○をしようと、遊びをせがんできますが、妻にはせがんでいませんよ。
 そして、夫の方がお子様と過ごす時間が圧倒的に長いなどと言って、夫とお子様で撮った写真などを沢山証拠で提出してくることもあります。

 

 

3.結局「子どもとの関わり」って?


 監護者指定事件で重視されるのは、お子様の「育児」という面で、どこまで関与していたのかという点です。
 具体的には、お子様の衣食住にどの程度親御さんが関わってきたのか、という点が重視される傾向が強いです。


 「衣」というのは、お子様がまだ小さい年齢の時には、おむつ替えや着替えの補助、もう少し年齢が上がったお子様の場合には、季節に合った服装をさせること、そのような洋服を購入すること、および身だしなみや清潔さの確保を意味します。
 次に「食」というのは、お子様の食事の支度を意味し、お子様の栄養バランスを確保し、少なくとも平均的な健康状態や成長を保つことができているのかどうかという点です。お子様が持病を持っていたり、アレルギーを持っているような場合には、それに対してどのようにケアしているのかという点も重要な要素になります。
 最後に「住」というのは、お子様の安心できるような清潔かつ整理整頓された住環境が確保されていることを意味しますが、この中には、お子様の躾や教育面も含めた意味で使うこともあります。


 このように、お子様の遊びに熱心に関わってきたという点は、直ちにお子様の衣食住に関わる話ではありません。

 

 

4.「遊びに付き合っている」ということをどう評価するか


(1)単純に「遊び」と言い切れるのか
 前述の通り、「お子様と一緒に遊ぶ」ということは直ちにお子様の衣食住に関わる話ではありません。
 ただ、お子様と関わる時間が長くなれば、ただ単に遊んでいるだけではなく、間に一緒に昼食をとったり(食事の支度という意味での「食」に関わる)、遊んでいる途中で洋服が汚れてしまって着替えたり、帰宅後に汚れた洋服を洗ったりということも出てくると思いますし(これを夫側が担当すれば「衣」に関わったものと言える)、他のお友達との関わりで躾を学んだりすることもあるでしょうし(広い意味での「住」に関わる)、遊びに行く先では、学校で必要な文房具を購入したり、お子様のスポーツなどにも関わる機会が生まれるかもしれませんから(広い意味での「住」に関わる)、単純に「一緒に遊んでいるだけ」ではないことも多くなると思います。
 その意味で、衣食住と完全に切り離せないということも多いかと思います。


(2)お子様の意識・希望への影響
 お子様の年齢にもよりますが、家庭裁判所調査官が、お子様と直接話をして、お子様にとって父親がどんな父親なのかといったことを確認することも多いです。
 その際には、お子様にとって、よく遊んでくれる父親だという場合には、好印象を持っている場合もあり、このような心情調査で夫側が多少有利になる可能性はあります。


(3)以上のように、夫が長時間お子様と遊ぶなどしている場合には、多少なりとも夫側の有利に働くことにはなります。ただ、前述した「衣食住」の中心的な出来事ではありませんので、そこまで夫側に大きく有利になる話ではありません。

 

 

5.どのように対策するのか?


 監護者指定事件において、裁判官は、夫婦の言い分を鵜呑みにするのではなく、どの裏付けからどのようなことが言えるのかということを重視します(要するに、単なる「言い分」よりも裏付け証拠の方を重視するという意味です)。
 特に、夫側がお子様の遊びに関わってきたという場合には、遊んでいるときの写真などを大量に提出してくるパターンが多いです。
 そのため、まずは、この写真について問題があるようでしたら、それを指摘して切り崩すという作業をすることが多いです。また、逆に、こちらからお子様との写真を提出して対抗する場合もあります。

 

 

6.まとめ


・夫がお子様の遊びに熱心に関わっていたという事情は、お子様の衣食住に直接かかわる話ではない。
・ただ、衣食住に全く無関係と割り切れないことも多いし、少なくとも、お子様の心情には影響がある。
・そのため、遊びでの関わりも、監護者指定事件に多少なりとも影響はある(大きな影響ではない)。
・夫側が遊びに熱心に関わってきたという場合、写真などを証拠提出してくるパターンが多い。
・対抗策としては、写真の問題点を指摘したり、逆にこちらからも写真を提出するといった方法がある。

 

 

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2023.08.28更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.同居中、子供の勉強は主に夫が見ていた


 同居中は、お子様の勉強は主に夫側が見ており、あなたが同水準で勉強を見ることができるかというと難しい場合もあろうかと思います。特に、夫がモラハラ夫だという場合には、同居中、あなたに対して「お前じゃ子供の算数を教えることはできないから、中学受験で不合格になるぞ」とか「お前はただでさえ日本語が下手だから、子供に国語などを教えられるはずがない。子供に変な日本語が身についてしまうと困るから教えないでくれ」などと発言している場合もあり、不安に感じるケースも多いと思います。
 ただ、皆さん、別居後は、夫がいない状況でも、お子様の教育面をケアできている方が大半だと思いますので、過剰に不安にならない方が良いと思います。

 

 

3.監護者指定事件での「勉強面」の位置付け


 監護者指定事件では、お子様の衣食住にどの程度親御さんが関わってきたのか、という点が重視されることが多いです。
 「衣」というのは、お子様がまだ小さい年齢の時には、おむつ替えや着替えの補助、もう少し年齢が上がったお子様の場合には、季節に合った服装をさせること、そのような洋服を購入すること、および身だしなみや清潔さの確保を意味します。
 次に「食」というのは、お子様の食事の支度を意味し、お子様の栄養バランスを確保し、少なくとも平均的な健康状態や成長を保つことができているのかどうかという点です。お子様が持病を持っていたり、アレルギーを持っているような場合には、それに対してどのようにケアしているのかという点も重要な要素になります。
 最後に「住」というのは、お子様の安心できるような清潔かつ整理整頓された住環境が確保されていることを意味しますが、この中には、お子様の躾や教育面も含めた意味で使うこともあります。
 このように、お子様の勉強面・教育面は、上記の「住」に関わる項目なのですが、衣食住全体が考慮されますので、あくまでその中の「一つの項目」という扱いになります。

 

 

4.対策の基本的な視点


 このような場合の対策の基本的な視点は「同居の時と同じ成績順位を維持すること」とか「同居時の志望校にしっかり合格すること」ではありません。
 お子様の教育面には関心が高い方も多いので、「成績が落ちてしまうと夫から何を言われるか分からない」とか「息子にはこの学校に合格させてあげたい」といったことをおっしゃる方もいます。
 ただ、監護者指定事件で重視されるのは、学校で問題となるような成績・素行ではないことです。簡単に言いますと、同居時学年トップの成績で、別居後にある程度成績が落ちたとしても、「担任教師が問題視するような悪い成績ではない」ということなら、ほとんど問題視されることはありません。

 

 

5.夫の教育熱心さがお子様の負担になっていた場合には、それを逆用すると効果的


 夫側が非常に教育熱心で、自宅でも熱心に指導・教育してきたというケースもあります。
 ただ、そのような熱心さは、お子様のためというよりも、夫自身のため(自分の子供なので、このくらいの成績は取ってもらわないと困るとか、自分と同じくらいの社会的地位を確保するために、この学校に行かせる必要があるとか)であるというケースも多くあります。
 そうすると、夫が目指す目標に、お子様の意識がついて行っていないというケースも往々にしてあります。


 そのことで、時に夫がお子様に対して暴言を吐いたり、果ては暴力を振るっているような場合には、勉強を見ることはプラス要素ではなく、むしろマイナス要素と言えます。
 そのような場合には、夫の勉強の面倒が、逆にお子様の大きな心の負担になっていたこと、モラハラやDVに陥っていた場合には、明らかな有害行為であることをしっかりと指摘して対抗していくことになります。

 

 

6.あなた自身の学歴等はあまり重視されない


 お子様の勉強面との兼ね合いでは、教育面を重視する夫側は、あなたの学歴と夫の学歴を比較して、夫側の方が学歴が上で、お子様の教育面を充実させられるといったことを強調してくることもあります。このような学歴の差から、お子様の教育のケアは夫側が見た方が良いなどと主張してくるのです。
 しかし、学歴の差といった点は、監護者指定事件であまり重視されませんので、この点であまり不安にならない方が良いと思います。

 

 

7.重要なのは教育資源をしっかりと活用すること


 むしろ、今は、様々な教育資源がありますので、それをしっかりと活用することの方が重要です。あなたが自分で勉強を教えるということに固執し、無理をし過ぎてしまいますと、逆にそのことで家事・育児が疎かになるなど、悪影響を生じかねませんので、そうであれば、教育資源を活用した方が良いのです。
 例えば、学校の宿題のケアは、学童がしっかりと確認してくれるところもありますし、受験に関しても、課題が多くない塾に通塾させることで対応できることも多いです。
 お子様の心理面のケアなどは、スクールカウンセラーや子ども家庭支援センターに助言を受けるといった方法もあります。
 このように教育資源をしっかりと活用して、少なくとも学校教育に遅れがなく、宿題や課題もしっかりと提出できていれば、教育面で、あなたのケアが不十分だと指摘される可能性は低いと思います。

 

 

8.まとめ


・監護者指定事件では、お子様の衣食住の面倒を誰が見ていたかが重要であるが、教育面は「住」に関わる要素として考慮されることがある。
・基本的には、別居後、学校で問題になるような成績・素行でなければ問題ない。
・夫の教育熱心さが逆にお子様の心理的負担になっていた場合には、その点をしっかりと指摘していくのが良い。
・あなた自身の学歴等はあまり重視されない。
・現在は教育資源が充実しているので、それを活用することも重要である。

 

 

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