2022.12.26更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?



(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

 

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

 

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 



2.夫の方が経済力があるというケースは非常に多い


 夫婦共働きというケースでも、奥様の方が収入が高いというケースは少数で、旦那側の収入の方が高額だというケースの方が多いと思います。
 また、結婚を機に、仕事を辞めて、専業主婦をしているという場合には、あなた自身の収入はゼロ、もしくは、パート勤務なので、大した収入がないというケースも多いと思います。
 このように、夫側の方が経済力が高い場合、特に、あなたが専業主婦で、ほとんど収入が無いような場合、監護者を決める時に、どのように影響するのでしょうか。

 

 

3.同居中、夫から散々言われていたので不安


 特にあなたが専業主婦の場合には、同居中に、夫側から「生活力がないから、お前が育てていけるはずがない」とか「仕事を辞めてこんなに立っているんだから、誰もお前のことを雇ってくれるはずがない」とか、散々に言われているケースもあります。
 そもそも、あなたが専業主婦になったのは、結婚や出産といった出来事があって、夫側とも相談しての結果なので、これを責められる謂れはなく、夫の発言そのものがモラハラ発言と言えるものです。
 ただ、夫からそのように言われていると、今後のことが不安になるのもよく分かるお話ですので、専業主婦であることが不利に働くのかという視点も踏まえて解説していきます。

 

 

4.キーポイントは家計が維持できていること


 監護者指定事件で重視されるのは、別居後の家計が維持できていることです。
 例えば、実家に転居し、実家の支援を受けることで、お子様の生活費も含めて家計を維持できているようでしたら、そのことで、不利に扱われることはほとんどありません。
 また、今は、貯蓄を切り崩して生活しているという場合でも、貯蓄が少なくなった段階で生活保護を申請して、生活保護費で暮らしていく予定だということでも、そのことで家計を維持できるのであれば、それほど大きく不利になるケースは少ないです。

 

 

5.家計維持にあたっては、婚姻費用も考慮して良い?


(1)夫側から婚姻費用が支払われている場合
 現在夫側から任意に婚姻費用の支払いがあり、今後の支払も期待できるような場合には、このような婚姻費用も家計維持にあたって考慮して差し支えありません。
 ただ、あなたが、夫との離婚を希望する場合、離婚した後は、養育費しかもらえなくなりますので、養育費しかもらえなくても家計を維持できるのか、といった点は考慮しておく必要があります。その際、児童扶養手当や児童育成手当等、行政の支援が期待できるような場合には、どのような支援が期待できるのか、いくらぐらい貰えるのかといった点を確認しておくと、より安心かと思います。


(2)夫側から婚姻費用が支払われていない場合
 これは、夫側の勝手な言い分ですが、「勝手に出て行ったやつには一銭も払わない」といったことを言ってくる夫もいます。
 そうやって婚姻費用がなかなか支払われない場合には、一旦は、婚姻費用の支払いが期待できないことを前提に家計を維持できるかを確認する必要があります。
 もちろん、婚姻費用は夫側に支払い義務がありますし、いずれは支払わなければならないものなのですが、現段階で支払われていないという場合には、「今は、今月分の婚姻費用も入ってきていませんが、いずれ、今月分も後から払われるから、その後払い分も考慮して下さい」と主張しても、現実に「今」あなたの手元に入ってきていない収入なので、家計維持にあたって考慮することは難しいです。

 

 

6.いつまでに就職すればよいか?


 たまに監護者指定等で有利に話を進めたいということで、就職活動に熱心に取り組んでくださる方もいます。
 もちろん、あなた自身がしっかりと稼いで、家計の状況がもっと良くなるようであればプラス材料にはなります(但し、前述のように現状でも家計を維持できているのであれば、あまり無理をする話ではありません)。しかし、一つ気を付けなければならない点があります。
 それは、就職活動や仕事をすることによって、お子様の世話や家事が疎かにならないかという点です。
 監護者指定事件では、現在のお子様に対するケアが行き届いているかどうかという点を重視することが多く、あなたが就職しているかどうかという点よりも重要性が断然高いです。
 そのため、就職活動や業務開始に伴って、お子様へのケアが疎かにならないようにして下さい。

 

 

7.将来の教育の充実等は、そこまで重視されない


 夫の方が経済力がある場合には、夫側から、「自分が育てていくのであれば、私立の小学校に入学させ、小学校時代から、遠足で海外に行かせたり、小学校高学年からは英語学習にも力を入れ、グローバルな教育を受けさせられる」というように、教育面で充実させられるといったことが主張されることがあります。逆に、あなたの元では、小学校受験や中学校受験をするだけの費用も出せないといったことを批判してくるのです。
 確かに、経済力の差がある場合、ある程度教育を受けさせる資金面での差は否定できません。
 ただ、裁判所が重視するのは、これまで誰がお子様の面倒を見て来て、今後もお子様のケアをしっかりと行っていくことができるのか、という点でして、教育を充実させられるかどうかといった点は「二の次」というように考えることが多いです。

 

 

8.お子様も充実した教育に期待してしまっている場合


 同居中、あまりに夫側がバラ色の教育のように話をするので、お子様の方も、詳しいところは分からないまでも、そのような「バラ色の教育」に期待してしまうというケースもあります。
 ただ、お子様の年齢からして、その「バラ色の教育」の詳しい内容が分からないまま、「なんとなくパパが言ってたから、そっちの方が良いと思っていました」という程度の話であれば、そのことが影響することはほとんどありません。
 また、お子様がもう中学生や高校生で、そのような教育に期待している面があったとしても、普段の生活面では、母親であるあなたとの生活でないと、生活が成り立たないと考えているのであれば、やはり、教育面よりも普段の生活面の方が重視されます。

 

 

9.まとめ


・妻側よりも夫側の方が経済力があるケースの方が多い。
・だからと言って、それだけで夫側が有利になるというわけではない。
・むしろ、普段の生活のケアを夫と妻どちらの方が担えるのかということの方が重要なので、経済面は「二の次」とされることの方が多い。
・経済面で重視されるのは、こちらの家計が維持できているかどうか、である。
・あまり就職を焦って、お子様へのケアが疎かにならないよう注意が必要である。
・現に婚姻費用が支払われているのであれば、婚姻費用が支払われることで家計が維持できていれば、それで差し支えない。
・お子様が将来の充実した教育に期待していても、普段の生活の方が重要性が高い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2022.12.19更新

 弁護士秦

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。


(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.関係機関調査って何だ?


 関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることを言います。通常は、家庭裁判所調査官がその関係機関まで直接足を運んで話を聞くという形をとります。
一般的に関係機関調査の対象になるのは、①現在お子様が通っている保育園・小学校、②お子様がメンタルケアなどを受けている場合には、通院している病院、③児童相談所が関わっている事件の場合には、児童相談所等となります。


(1)関係機関調査の位置付け
 児童相談所が深く関わっている事件の場合、お子様への虐待の程度や頻度、虐待親の危険性等の判断にあたって、児童相談所の見解は非常に重要になりますが、①児童相談所が関わってはいるが、かかわりが薄い場合や、②児童相談所が全く関わっていない場合などでは、関係機関調査の重要性は、そこまで高くないことが多いです(家庭訪問やお子様の意思確認の方が、格段に重要性が高いです)。
 要するに、普段の学校での生活に問題等がないかを確認するといったものですので、あまり関係機関調査の結果を心配し過ぎない方が良いと思います。


(2)各関係機関調査ごとの特徴等
ア 保育園・小学校の調査
 保育園や小学校の調査は、現在お子様が通っている保育園・小学校の調査を行うことが多く、別居直前の保育園(転園前の保育園)・小学校(転校前の小学校)の調査までは行わないことの方が多いです。
 一般的には、家庭裁判所調査官が、その保育園・小学校まで足を運び、保育園ですと担任の保育士と園長先生から話を聞く、小学校ですと担任教師と教頭先生(又は校長先生)から話を聞くという形がオーソドックスかと思います(但し、保育園によっては、「うちは書面での回答しかしない」という方針のところもあって、その場合には、調査官が書面で質問事項を送り、保育園から書面で回答が来るということになります)。
調査の際、調査官は、お子様の普段の保育園・学校生活の様子(積極性や普段の態度、他の児童とのトラブルの有無・内容、宿題など提出物や授業準備の状況)や、小学校の場合、学校成績等を尋ねることが多いです。
 このような調査に先立って、あなたまたは夫側から保育園の連絡帳コピーや小学校の通知表コピーなどを事前に裁判所宛に提出し、調査官もある程度も事前に情報を得た上で、調査に臨むことが多いです。


イ 病院の調査
 ここでの病院の調査というのは、お子様が現状もメンタルケア等で病院に通院している際に、その病院医師から調査官が事情を聴くというものです。
 たまに、夫が過去に心療内科等への通院歴がある際に、こちらから、その病院への調査を希望する場合もありますが、裁判所側は、まず、夫側から診断書を提出させ、診断書で症状等が把握できるのであれば、それ以上に調査まではしないケースがほとんどだと思います。
 お子様の病院への通院期間が長い場合、調査の事前準備として、カルテを提出したり、または、主治医の意見書を提出するケースが多いと思います。このように事前にある程度の情報を把握した上で、調査を実施するのです。
 その後の対応は、主治医がどこまで協力してくれるかにもよるのですが、多忙な医師の場合、調査官が来訪して直接話をする時間をとることが難しいということで、電話での事情確認にとどめるケースもあります。
 なお、病院への調査の場合、カルテのコピー、主治医の対応、いずれも、費用が発生するケースも多いです(要するに、その医師に対して手間賃を支払うということです)。費用負担について両当事者間で話し合いが円滑に進めばよいのですが、円滑に進まない場合には、病院への調査(専門用語では「医療機関調査」などと言ったりします)をどこまでどのように実施するかに影響を及ぼすケースもあります。


ウ 児童相談所への調査
 お子様の関係で児童相談所が関係している場合、基本的には、家庭裁判所調査官の調査を実施していくことになります。
 ただ、あなた又は夫側が児童相談所に事情を話して相談しただけ(要するに、児童相談所としては調査等を一切実施していない)といった場合には、調査官の調査までは行わないこともあります。
 児童相談所は、調査官からの質問をまとめた書面を受け取り、書面で回答するという対応が多いですが、各児童相談所で対応が統一されているわけではないようで、調査官と直接面接して事情を話してくれることもあります。
 また、調査に先立って、あなた又は夫側から児相側に個人情報の開示申請を行い、その資料を事前に提出するよう裁判所から求められることもあります。

 

 

3.関係機関調査の順序


 関係機関調査を実施する場合、同時期に実施してしまうことが多いのですが、家庭訪問との先後では、①関係機関調査を早急に実施する場合と②家庭訪問と同時期に実施する場合とがあります。
①の進め方にするか、②の進め方にするかは、裁判官によっても異なるのですが、一般的には、②のパターンが多いかと思います。

 

 

4.まとめ


・関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることである。
・関係機関調査としては、保育園・小学校、病院、児童相談所などが対象になることが多い。
・虐待の事案の場合、児童相談所への調査の重要性は非常に高いが、そうでない場合、関係機関調査はそこまで重要ではないことの方が多い。
・関係機関調査は、関係機関ごとに特徴がある。特に医療機関調査は、費用が発生する可能性がある点で注意が必要である。
・関係機関調査のタイミングは家庭訪問と同時期に行うケースが相対的に多い。

 

 

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1.そもそも「監護者」って何だ?


 

(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。


(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)

(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 


2.調査報告書って何だ?


(1)調査報告書とは?
 調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものです。調査報告書は、家庭裁判所調査官が担当裁判官宛に報告するというスタイルを取っていますので、その内容を確認するには、弁護士が裁判所にて調査報告書のコピーをとってくる必要があります。


(2)調査報告書作成の流れ
 調査報告書がどのようなものなのかについては前述にて説明した通りですが、この説明だけでは、まだ今一つ理解しにくいと思いますので、時系列に沿って、より具体的にご説明しますと以下の通りです。
①裁判所の審判廷にて、裁判官が調査内容を宣言(調査発令などと言ったりします)
 合わせて次回審判期日を設定

②期日間で、調査官が必要な調査を実施

③調査官が調査報告書を書き上げて裁判官に報告

④弁護士がコピーをとって、あなたや夫側も調査報告の内容を把握

⑤調査報告の内容を踏まえて、次回審判期日で今後の進め方等を議論

(3)調査報告書はどのように章立てされているの?
 前述の通り、調査報告書は、期日の間に調査官が実施した調査経過や結果をまとめたものなのですが、監護者指定事件ですと、ボリュームが多いものですと30ページ近くに及ぶものもあって、最初から最後まで順に通読していると、概要は分かったけれども、詳しいところまでは理解が難しいということもあります。
 実際上、ボリュームが多い調査報告書でも、章立てがされていまして、特にあなたの関心が強い部分を何度か読み返すといったことをすると、より理解が進むと思います。
 具体的な章立ては、事件の内容によって順番が変わったりもするのですが、大きくは、以下のような章立てとすることが多いように感じます。
 なお、調査報告書では「第1章」「第2章」といった書き方はせず、ページトップに



 監護の経過



といった表記をして、このページ以降は「監護の経過」の調査結果を記載しているということが分かるようにしてあります。逆に言いますと、調査報告のページトップのタイトルを見れば、このページには何についての調査結果が書かれているのかが分かるようになっています。


 具体的な章立て(オーソドックスなパターンであって、タイトルの付け方や順序は調査官によって千差万別です)は以下の通りです。
①調査経過
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、調査官がいつ何を調査したのかということが分かる部分です(「令和4年4月10日 母及び母手続代理人弁護士と当庁において面接」というように端的にいつ何をしたのかだけが記載されています。

②関係者一覧
 ほとんどの調査報告書では1ページ目に記載がある記載事項でして、当事者やお子様、親族等を簡単に記載しています。稀に、調査官によっては、関係者一覧を省略するケースもあります。

③監護の経過
 これまでの育児における両当事者のかかわり方などを記載しています。お互いの言い分が食い違っている場合には、「父はこう説明した」「母の説明はこうであった」といった形で記載してあります。

④当事者双方の状況
 お子さんのことではなく、両当事者の現在の生活状況や心身の状況、経済状況等を記載しています。

⑤○○に対する当事者双方の主張
 どちらかの親からお子様に対する虐待が疑われるケースやお子様の障害や疾患等との付き合い方でお互いの言い分が大きく食い違っているような場合には、別に章立てして、詳しくお互いの言い分を記載することもあります。

⑥現在の未成年者の状況
 現在のお子様の登校(登園)状況、生活ぶり、面会交流の状況等について記載してあります。この箇所の記載は、現在お子様の育児を担っている奥様側の陳述内容をかいつまんで記載するケースが多いです。

⑦関係機関の調査結果
 調査官が小学校・保育園、病院や児童相談所から見聞きした内容が記載されています。なお、児童相談所等からの回答が書面で回答された場合には、調査報告書の末尾に回答書が添付されているケースが多いです。

⑧家庭訪問の結果
 調査官が、あなたの家を家庭訪問した際の様子等が記載されています。

⑨未成年者との面接結果
 調査官がお子様と1対1で話をした際の様子等が記載されています。

⑩調査官の意見
 今回の調査結果を踏まえ、今後どのような進行が望ましいといったことが記載されています。今後の手続の進め方を見極めるにあたって、最も重要な記載箇所です。
 このように「調査官の意見」が最も重要な記載箇所なので、当職は依頼者に対して、調査報告書はボリュームがあるので、最初から順番に読むのではなく、まず、最後の方の「調査官の意見」の箇所を先に読んでみて下さい、とお伝えすることもあります。

 

 なお、上記の章立ては、調査官が期日間に関係機関調査や家庭訪問、子の意向調査といった調査を一挙に進めてしまうケースでの章立てです。事案によっては、まずは、関係機関調査だけを先行して実施するというケースもあり、その場合には、調査報告書には関係機関調査の結果だけが記載されます。

 

 


3.調査報告書については、明確に結論が書かれてしまうケースが多い


 前述の通り、調査報告書は、家庭裁判所調査官が裁判官に対して結果報告するレポートです。このように聞くと、裁判官がそのレポートも参考にして結論を下すように捉えられがちですが、実際はそうではありません。
 前述の「調査官の意見」の章の中に結論、要するに、父母のどっちが監護者としてふさわしいといったことまで書き込まれてしまっているケースが大半です。
 そのため、それを受け取った裁判官は、よほどの事情がない限り、調査官の意見の通りに審判を下してしまいます。
 このように、調査報告書は非常に重みのある書類と言えます。

 


4.こちらの資料の準備


 前述の通り、調査報告書の中にほぼ結論が書きこまれてしまいますので、こちらの資料の準備も、調査着手前にほぼ出し尽くしてしまう必要があります(要するに、「調査報告書が出た後に、資料の補足などをしよう」というように悠長に構えていてはいけないということです)。
 このように監護者指定事件では、調査発令のタイミングを見極めながら、調査発令前、または、調査発令直後まで(遅くとも、調査官が本格的な調査に着手する前まで)に資料を出し尽くしてしまう必要があります。

 

 

5.まとめ


・調査報告書とは、家庭裁判所調査官が、調査した内容をまとめたレポートのようなものである。
・調査報告書はボリュームが多くなるケースも多いので、各章立てを意識して読み解くと理解が深まる。
・調査報告書の中でも「調査官の意見」の章が最重要である。
・調査報告書の中の「調査官の意見」の章には、父母のどちらが監護者としてふさわしいといった結論まで明記されるケースが多い。
・そのため、資料の提出は調査官の調査着手前までに出し尽くしてしまった方が良い。

 

 

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