2023.08.21更新

弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.裁判所から分厚い書類が届いた!


 監護者指定事件は、何の前触れもなく起こされるのが通常です。
 そのため、①夫側が弁護士を立てたと思ったら、突如監護者指定の分厚い書類が届いた、とか、②弁護士間でやり取りをしていたと思ったら、裁判所からの通知が届いた、というようなケースが大半です。
 監護者指定事件は、緊急の事件として起こされることが多いので(夫側からすると、至急お子様を取り戻さなくてはいけないという意味で「緊急の事件」と位置付けてくるのです)、突如申し立てられることが多いのです。
 そのため、あなたとしても「書類は受け取りましたが、どのようなことが起こっているのかがよく分かりません」と感じてしまうことも多いのです。

 


3.夫側がやたら細かいことばかり言ってきているがどう対処すべきか


 監護者指定申立書や主張書面が、夫側の言い分を示す書類ですので、その確認も重要なのですが、大きく二つに大別して検討する必要があります。
 即ち、①言い分は細かいけれども、裏付け証拠があまりない場合と、②言い分が細かく、その裏付け証拠も非常に細かい場合に大別できます。
 まず、裏付け証拠があまりない場合には、夫側の言い分をこちらから否定する必要はありますが、そこまで事細かに対応しなくても問題ないケースが多いです。仮に、夫側の言い分が緻密に練り上げられているとしても、裏付けがない言い分については、裁判官も関心を持たないことが多いので、そこまで心配しなくても良いことが多いのです。
 これに対して、夫側が裏付け証拠を沢山提出してきている場合には、その証拠のしっかりとした整理が必要になります。

 

 

4.夫側の証拠を検討する視点


(1)まずは、証拠の分類
 夫側の裏付け証拠を漫然と通読・確認していても、分量が多いので、逆に整理が難しくなってしまいます。
 そのため、監護者指定における重要な6個のポイントに沿って整理するのが有効です。
 即ち、監護者指定にあたっては、以下の6個のポイントが重要視されますので、夫の証拠がどの項目にどの程度影響を与える証拠なのかを分類していくのです。
 【6個の重要ポイント】
1)監護実績
2)連れ去りの違法性
3)現在の監護状況
4)過去の児童虐待の有無・程度
5)子供の意思
6)面会交流の姿勢

 例えば、別居直前に娘様が夫側に対して「お父さん大好き、お父さんのお嫁さんになる」と書き、夫の似顔絵も書いてある手紙が証拠で出された場合、上記の「5)子供の意思」に関係する証拠になります。


(2)分類にあたっては、証拠の重要性を見極めつつ分類
 前述のように証拠の分類をするのですが、夫側が大量に証拠を提出してきている場合、それを全て分類するのは、かなりの労力が必要になります。
 そのため、ある程度夫側の証拠の重要性を見極めた上で、重要なものを優先して整理する方が得策です。
 監護者指定事件は、こちらの準備期間がある程度限られるケースが多いので、夫側の証拠を順番に全て整理するよりも、重要なものから順番に整理・検討していく方が効率的なのです。
 また、夫が提出してきた証拠が、関連性が乏しい証拠という場合もあり、それに対して逐一対抗していくことは、手続きを複雑にしていくだけで得策でもありません。

 

 

5.夫側の証拠に対する対抗策


 前述の通り、裁判官は、どのような裏付け証拠があるのかという点を重視しますので、夫側の証拠に対抗するために、こちらも一定の証拠を準備し、提出していくことになります。
 その場合には、夫側の証拠に対して直接対抗していくものと、逆に、こちらがかなり不利な証拠の場合には、敢えてその証拠には言及せず、こちらがアピールすべき項目についての裏付けを集めていくという作戦をとる場合もあります。
 このあたりの判断・見極めは弁護士でないと難しいことが多いので、弁護士にご相談されることをオススメします。

 


6.最も重要なのは、文章の量や表現の上手さの問題「ではない」ということ


 たまに、私が事件を担当しておりますと、夫側が30ページの主張書面を書いてきた場合、「こちらは30ページ以上の文章を返してください」とか「もっと沢山書いてください」と言われることもあります。
 また、文章の表現についても、「もっと裁判官に訴えかけるような書き方をお願いできないでしょうか」とおっしゃる方もいます。


 確かに、文章の表現が良い方が、裁判官も読みやすいでしょうが、前述からお話しております通り、裁判官が最大の関心を持つのは「どんな裏付けがあるのか」という点です。
 夫側の言い分を読んでいると、「負けないためにも、それ以上に反論しないといけない」という気持ちに駆られることも多いのですが、そのことでこちらの文章が冗長になってしまっては元も子もないと思います。
 そのため、文章の分量や表現の上手さという点にとらわれ過ぎずに準備することが大切です。

 

 

7.まとめ


・夫側がやたら細かいことを言ってきている場合でも、裏付け証拠を伴うものなのかで対応が異なってくる。
・あまり裏付けを伴わない言い分は重視されないことが多い。
・夫側の証拠は、その重要性も考慮しながら、監護者指定重要6項目に照らし合わせて検討・分類するのが良い。
・夫側の証拠に対して、どのように対抗していくかは専門性が高いので、弁護士に相談しながら検討すると良い。
・文章の分量や表現の上手さで勝負するものではないという視点が最も重要である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.08.07更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 


2.監護者指定手続き中、お子様の友人付き合い等で注意すべき点はあるか?


 あまりこのような点を意識していない方の方が大半で、そうしますと、「どのような問題なんですか?」と首を傾げられるかもしれません。
 端的に言いますと友達経由でこちらの動向等が夫側に知られるリスク等をどのように考えるのか、といった問題のことです。
 このようなリスクの考え方は、あなたが別居の際に、夫側が全く知らないところに転居したケースと、そうではないケースで対応の仕方が異なってきますので、大別してご説明します。

 

 

3.【ケース①】あなたが、夫側が全く知らない場所に転居したケース


 夫との離婚を決意し、別居する際、別居先としては、①実家(夫も場所は知っている)、②近所だけれども夫は場所を知らないところ(お子様の通学する学校を変えたくないので、結局近所に住んでいるといったパターン)、③全くの新天地といったパターンがあろうかと思います。
 今回は、③の全く夫側が把握していない場所(新天地)に別居したケースを前提に解説していきます。


 このようなケースでは、あなたの現住所(新天地である住居)を夫側に知られないということが非常に重要になってくることが多いと思いますので、そのような切り口から解説します。
そもそも、お子様の友人関係につきましては、基本的にイチから友達を作り直すということかと思いますので、その友人経由で何かしら夫側に情報が洩れるリスクはないと思います。
 そのため、特に友人付き合いの関係で神経質になる必要はほとんどありません。但し、全くリスクがないわけではありませんので、注意すべき代表的なケースとともにご説明します。


(1)【注意すべきケース①】以前の友達との接触
 新天地に転居した後も、お子様の希望で、別居前のお友達と会ったり、遊んだりするというケースもあろうかと思います。
 そのご友人が信頼できるママ友、パパ友を介して連絡を取り合う分には、あまりリスクはないと思いますが、家族ぐるみの付き合いをしていて、情報が夫側に漏れるリスクがあるという場合には、注意が必要な場合もあろうかと思います。


 特に、夫側がどうしても離婚したくなくて、そのママ友やパパ友に協力を強く懇願しているような場合には、ママ友やパパ友も「断れない」という場合もありますので、そのママ友やパパ友経由で、あなたの現住所の情報や、現住所につながる情報(例えば、最寄り駅が○○駅であるとか)が漏れないよう注意が必要な場合もあります。


(2)【注意すべきケース②】以前の習い事を続ける場合
 新天地に転居した後も、お子様の希望で、習い事は別居前の習い事を続けるというケースもあると思います。
 その場合には、習い事で接触する友達や講師経由で情報が漏れないかという点に注意すべき場合もあります。
 その習い事での友人や講師が夫側とも親密だという場合には、そもそも、その習い事はやめて、新天地付近で新しく習い事を始めた方が良いかと思います。


(3)【注意すべきケース③】新天地で同じ種目の習い事をする場合
 新天地で同じ種目の習い事をする場合(例えば、別居前にお子様がサッカーチームに所属していて、別居後、新しく新天地近くのサッカーチームに入り直すといったケース)、友人経由で夫側に情報が洩れる可能性はほとんどないと思いますが、そのチームの対応等で注意が必要な場合もあります。
 特にスポーツ系の習い事で多いのですが、練習風景や試合での様子の写真をインターネット上で一般公開しているようなところもあると思います。
 そうすると、お子様の写真が一般公開され、夫側に、現在お子様が所属するチームが分かってしまうというケースもあります。
 また、サッカーや野球など他のチームと試合で対戦する場合、元のチーム等と対戦する心配もありますので、注意が必要です。

 


4.【ケース②】別居後も比較的近所に住むケース


 別居後も比較的近所に住むケースとしては、①別居後にこちらが住んでいる場所を夫側にも知らせているケース(もしくは、既に知られてしまっているケース)と、②別居後にこちらが住んでいる場所を知らせていないケースがあろうかと思います。
 ただ、近所に住んでいる場合、共通の友人と顔を合わせたり、スーパー・飲食店その他店舗で夫と偶然顔を合わせてしまうということもあると思いますので、②のケースでも、こちらの住まいを全く知られない状況を保つということは難しいことが多いと思います。
 そのため、以下では、こちらの住まいを知られないようにするという視点よりも、こちらの動向等を探られないようにする、という視点から解説していきます。


(1)結局、どのような形で問題化するのか?
 あなたとしても、今は夫側に住所を隠しているけれども、遅かれ早かれ場所は知られてしまう可能性が高いと考えているような場合、「住所を知られないこと」は、そこまで重要性が高くないかもしれません。
 ただ、監護者指定事件を闘っておりますと、夫側の知人経由、友人経由で様々な情報が飛び交うこともありますので、その点に留意すべき場合もあります。
 例えば、当職が実際に担当した事件では、以下のような点が指摘されることがありました。
① まだ5歳の子供が公園で一人で遊んでいた。こんな小さい子を一人で遊ばせているなんて危険な行為だ。

② まだ小学校に入ったばかりの子が公園で一人で泣いていた。私(知人)が気付いて慰めてあげたが、母親の育児放棄ではないかと思う。

③ 久しぶりにお子様と道で会ったので元気にしているか話しかけたら、母親から殴られたと言っていた、別居して母親が児童虐待している疑いがある。

④ 久しぶりにお子様を見かけたので話しかけたが、何度話しかけても無視し続けられた、別居後の母親の教育には大きな問題があると思う。

 このような①から④の事情を、夫側の知人や友人が、直接見かけた・目撃した、といった形で、裁判所に訴えてくることがあるのです。


(2)どのように対処するのか。
 監護者指定事件の中での対処法としましては、事実と異なるところはしっかりと誤りであると指摘して毅然と対応していく、ということに尽きます。
 そもそも、夫側の知人や友人が目撃したという事情が、よほどの虐待を疑われるような事情であればともかく、そこまでの事情でなければ、裁判所も、その点を重視する可能性はほとんどありません。
 そのため、お子様の友人関係であまり神経質になり過ぎない方が良いと思います。
 ただ、前述の通り、お子様のお友達の中でも、あなたよりも、どちらかというと夫側と親密だというようなお友達の関係では、こちらの同行が夫側に知られるリスクはある程度意識してお付き合いした方が良いかと思います。

 

 

5.まとめ


・お子様の友人付き合いについてはあまり神経質になり過ぎない方が良い。
・新天地に引っ越したという場合、現住所を夫側に知られないということが重要なので、その点は母親としてある程度意識しながら生活した方が良い。
・近所に住む場合、現住所を知られないことの重要性は相対的に下がることが多いが、夫側に動向を知られないための配慮が必要なこともある。
・夫側の知人・友人経由で、監護者指定事件に何等か資料を提出された場合でも、事実と異なるところは虚偽である旨をしっかりと伝えて毅然と対応するのが一番である。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.07.31更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.監護者指定審判手続きにおける連絡帳の「重み」


(1)普段の生活では、何の気なしに記帳しているものだけれど…
 保育園や幼稚園の連絡帳については、普段の生活の中では、「重要書類」といった意識もなく記帳していることが多いと思います。
 しかし、監護者指定審判手続きの中では、非常に重要な書類と位置付けられることが多いです。
 なぜ、このように重視されるのかと言いますと、監護者指定審判手続きでは、これまで夫婦のどちらがどのくらい育児を担ってきたのかという点について、お互いの言い分が大きくずれることが多いです。そんなときに、連絡帳を見ると、おのずと夫婦のどちらの方が育児をメインで担当していたのかといったことが明確化することが多いので、重要な書類と位置付けられることが多いのです。


(2)残念ながらあまりに簡素なものは、ほとんど証拠価値がない
 例えば、連絡帳はあるけれども、そもそも書く欄が、元気かどうか及びその朝の体温しか書けない形式のものだとか、連絡帳自体がなく、保育園に備え付けのボードにその日の出欠と朝の体温だけを書くといったものの場合、それだけを見ても夫婦のどちらが育児をメインで担当していたのかといったことはほとんど分からないので、残念ながらほとんど証拠価値はありません。


(3)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント①】
 前述のようにあまりに簡素な連絡帳は、あまり有力な手掛かりとはなりません。
 逆に、しっかりとコメント欄などもある連絡帳については、何が重要になってくるのでしょうか。
 まず大きなポイントの一つ目は、「夫婦のどちらが記帳しているのか」という点です。


 通常は、記帳者が保育園・幼稚園への送迎も担っていることが多いので、少なくとも保育園への送迎を夫婦のどちらがメインで担ってきたのかという点は分かることが多いです。
 そうしますと、保育園・幼稚園のお迎えという場合には、夫婦のどちらが先に自宅に帰宅しているのかが分かることも多いです(通常は、保育園にお迎えに行く方が先に帰宅していると思います)。先に帰宅した方の配偶者が、その分お子様と自宅で接する時間が長かったということになりますし、その間、育児を担っていた証明にもなります。


 また、連絡帳を記帳するにあたっては、連絡帳の形式にもよりますが、今朝の朝食や前夜の夕食メニューなどを書く形式のものがありますが、これらのメニューは、実際に食事の用意をしていた者でないと分からないことも多いです。
 お子様の食事について記帳しているということは、その食事の調理や配膳に関わってきた可能性が高いという推定が働き得るのです。


(4)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント②】
ポイントの二つ目は「どのような内容が記載されているのか」という点です。
このように解説しますと「他愛ない日常的なやり取りをしていない」ということで心配される方もいるかもしれませんが、それでも問題ありません。


そのような他愛ないやり取りの中でも、普段のお子様の生活や癖、成長具合などを探る貴重な手掛かりになることも多いからです。
後は、前日の夜に食べた食事の内容、その日の朝に食べた食事の内容なども細かく記載する形の連絡帳ですと、お子様の栄養面で配慮してきたかどうかといったことも分かりますので、そのような食事欄の記載の有無・内容も重要な要素になります。


(5)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント③】
 ポイントの三つ目は、連絡帳に記載している「分量」になります。
 家庭裁判所調査官も、ある程度は連絡帳の記帳内容を確認しますが、その全てをきめ細かく確認するのかというと、そこまで手が回らないということもあります。
 その場合に、調査官は、連絡帳の全体を確認し、あなたが書いた箇所の分量や空欄がどの程度あるのかという全体感を見ることも多くあります。

 

 

3.連絡帳は何年分必要になる?


 この点は裁判官によって対応が異なるのですが、大きく分けて、1年分の提出で足りるとする裁判官と2年分提出して欲しいと要請してくる裁判官に大別されるように思います。
 なお、裁判官から「2年前からのもの」と要請された場合でも、3年前の連絡帳の方が、あなたが熱心に育児に関わってきたことが分かるという場合には、敢えて戦略的に3年前のものまで提出することもあります。
 どの範囲の連絡帳を提出するかは、裁判官からどのように要請されたのか、及び、どのような戦略で対応するかを弁護士と相談しながら、対応していくことになります。

 

 

4.連絡帳提出の際の注意点


 あなたが別居後、旦那側に別居先を伝えていない場合(伝えたくない場合)には、連絡帳をそのまま提出してしまいますと、旦那側にこちらの居場所を知られてしまうリスクが生じてしまいます。
 そのため、連絡帳の保育園名はもちろん、クラスの名前はマスキングしますし、連絡帳の記載内容の中に、地名(園の近くの公園の名前とか)、お友達の名前、園での特別なイベントの名前(例えば、あまり東京の園では行わないような地方の踊りをイベントで踊るといった場合、その踊りの名前はマスキングしたりします)、記帳して下さった保育士の名前などにマスキングをすることが多いと思います。
 このように連絡帳を提出する際には、マスキングにかかる時間も考慮して、裁判所への提出期限を設定すると安心です。

 

 

5.小学校での連絡帳は?


 小学校でも連絡帳を活用している学校が多いと思いますが(最近はタブレットで管理している学校も多いように思いますが)、学校の連絡帳は、何か病欠や行事等があった際にしか記帳しないと思いますので、監護者指定事件で重視されることはほとんどありません。
 ただ、お子様が学校でトラブルを起こしてしまったり、いじめを受けたりしていて、その際の担任教師とのやり取りを記帳していたというような場合には、その内容を確認することはあります。

 


6.育児日記は?


 育児日記は、保育園の保育士とやり取りするというものではなく、あなたご自身が任意にお子様の成長を記帳しているものだと思います。
 このような育児日記は、監護者指定事件でどの程度重みがあるのでしょうか。


(1)連絡帳との比較では?
 もし連絡帳がある場合、それに重ねて育児日記を提出しても、効果は少ないことが多いと思います。
 連絡帳は、第三者である保育士も記帳しているので、その資料の中立性が高まっていると言えるからです(育児日記は、あなただけが記帳していますので、どうしても、中立な保育士も記帳している資料よりも証拠価値が落ちてしまうのです)


(2)真価を発揮するのは、連絡帳がないとき、又は簡素な連絡帳の時
 前述のように、保育園の連絡帳がある場合、そちらの内容の方が重視され、育児日記の内容はあまり効果が少ないことが多いです。
 他方で、①そもそも、まだお子様を円に入園させていないという場合には、連絡帳そのものがありませんし、②年長さんになって連絡帳を書かなくなったという場合、もしくは、③連絡帳は書いているけれども、体温だけを記載するだけの簡単な連絡帳である、というようなケースですと、連絡帳を見ても、お子様の普段の様子は分かりませんので、育児日記が真価を発揮することもあり得ます。


(3)連絡帳がないときは、育児日記はかなり重視されるのか?
 前述のように、連絡帳がないとき、または、連絡帳の内容が非常に簡素な連絡帳な場合には、育児日記が重視される場合もありますが、これも、その記載内容次第です。以下ポイントに絞って解説します。


ア)【重視される育児日記のポイント①】毎日欠かさず記帳していること
 最も重要なポイントになりますのが、「毎日欠かさず記帳していること」です。
 毎日記載することで、お子様の成長や変化等を漏らさず記帳することができますので、重要なポイントになるのです。
 もちろん、たまに1日だけ記帳しなかった、というだけで、その育児日記にほとんど価値がなくなる、ということはないのですが、記帳の頻度が低ければ低いほど、その証拠としての価値は落ちてしまいます。


 例えば、お子様の記念日だけ記帳している育児日記(誕生日や誕生後ちょうど1か月のバースデイ、寝返りを打った、首が座った、立った等の特徴がある日のことしか書いていないような育児日記)は、残念ながら証拠としての価値が薄くなってしまいます。
 または、例えば、週末である土日だけ記帳している育児日記も、平日という週5日間の記録が抜けていることになってしまいますので、残念ながら証拠としての価値は薄くなってしまいます。


イ)【重視される育児日記のポイント②】それなりの分量記載していること
 次のポイントは、記載の分量です。
 毎日欠かさず記帳しているとはいっても、毎日1行だけしか記載していないということですと、残念ながら証拠としての価値は薄くなってしまいます。


ウ)【重視される育児日記のポイント③】あまり古くないものであること
 次のポイントは、「あまり古くないものであること」です。
例えば、現在お子様が6歳だとして、育児日記が0歳児の時の日記だとすると、記録として「古過ぎる」と評価されてしまう可能性が高いと思います。このような古い記録は、あまり重視されないと思います。

 


7.まとめ


・保育園・幼稚園の連絡帳は、監護者指定事件で重要な資料として扱われることが多い。
・但し、あまり簡素な連絡帳(体温だけを記載するものとか)はあまり役に立たない。
・連絡帳の評価にあたっては、①夫婦のどちらが記帳しているのか、②記帳内容、③その分量が重要なポイントになる。
・連絡帳提出の際には、部分的にマスキングが必要になることも多いので注意が必要である。
・小学校の連絡帳は、ほとんど重視されないことが多い。
・連絡帳がない場合、又は簡素な無いような場合には、育児日記が重視される場合もある。
・どのような育児日記が重視されるのかは、最近のもので、かつ、毎日欠かさず、それなりの分量記載してある育児日記だと心強い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.07.18更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫はどのように主張してくるのか?


 「ひどい叱り方」といっても、やや抽象的ですので、実際に私が担当した事件で、夫側がどのように言ってきたのかを、具体例として、ご紹介します。

(1)妻自身の機嫌が悪いと、昨日までは良かったことでも今日はダメと言うように叱りつけてくるので、子供も困り果てていた。

(2)妻は短気なので、何かがあると頭ごなしに叱りつけるので子供がかわいそう

(3)妻は怒り始めると止まらないので、30分近く延々と叱りつけるため、子供も疲れ果ててしまうことが多かった。

(4)妻は叱るだけで、何がダメでどのようにダメなのかを何も伝えないから、子供はダメな理由も分からないままのことが多かった。

(5)妻は大声で叱りつけるので、子供も怖がってしまっていた。

(6)妻は叱る際に子供が傷つくようなことを言うことが多く、子供が泣き出してしまうことが多かった。

(7)突如として子供に罰を与えることが多く(おやつを与えないとか、ゲーム機を突如取り上げるとか)子供が気の毒だった。

(8)他の兄弟と差別的に叱ることが多かった(例えば、次男には甘く、長男には異常に厳しいので、同じことをしても長男だけが叱られることが多かったなど)

(9)妻は叱る際に手をあげることが多かった。

 

 

3.監護者指定審判の中で問題となるような「ひどい叱りつけ」とは?


 お子様も時にはふざけてしまったり、悪戯をしてしまったりということもあって、その際には、ついこちらも「叱り方」が好ましくない形になってしまうということもあると思います。

 もちろん、お子様が何か悪いことをしたからと言って、①そのことに対して暴力を振るってしまったり、②お子様を閉じ込めるなどして恐怖を与えてしまうこと、③お子様の物を壊してしまうこと、④お子様の人格を否定するような発言をすること(例えば、「こんな子だったら産まなきゃよかった」とか)はNGです。これらは、お子様に対する健全な発達のための「叱りつけ」ではなく、もはや児童虐待になってしまっているため、許容できません。
 このように叱りつけが、あまりにも度を越してしまいますと、監護者指定審判の手続においても不利に扱われてしまいます。
 逆に、これらの①から④に当てはまるような度を越したものでなければ、そのことでこちらが大きく不利になることはほとんどないと思います。

 

 

4.逆に「良い叱り方」とは?


 このようなお話をしますと、逆にどのような叱り方が「理想なんですか?」とか「良い叱り方って何なんですかね?」とご質問を受けることがあります。
 そんな時には「お子さんに、叱られている理由がしっかりと伝わる叱り方が良いみたいですよ」とか「お子さんの目を見て正面から向き合って叱ると効果があるみたいですよ」などと回答することがあります。
 ただ、これらは一例でして、お子様がしてしまったことの内容、お子様の年齢、これまでのお子様との関係性、ご家庭の事情、地域の風習等によって、対応の仕方は様々だと思います。お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱るのが良いと思います。

 

 

5.夫側の主張に対する対応方法


 それでは、夫側の主張(詳しくは「2.夫はどのように主張してくるのか?」をご覧下さい)に対してはどのように対応すべきなのでしょうか。

(1)夫の言い分は虚偽・過剰であることが多い
 夫の言い分は、自分が有利に立ちたいがために、虚偽や過剰反応とも言える主張だということが多いです。
 そのため、虚偽や過剰なものに対しては、しっかりと「そのような事実はない」と指摘することが大事です。


(2)多少の叱り過ぎがあった場合は?
 多少の叱り過ぎがあったという場合でも、前述のような児童虐待という程度のものではない場合には、それほど恐れる必要はありません。
 この場合には、当時の経緯をしっかりと説明し、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。また、このような場合でも、夫側は実際の事実よりも過剰に演出してくることが多いので、過剰な部分が誤りであることもしっかりと指摘する必要があります。


(3)多少虐待的行為に及んでしまった場合は?
 前述のような虐待と称されるような行動に出てしまった場合にも、しっかりと経緯を説明して、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。
 ただ、その際に気をつけなくてはいけないのは、このような説明が「言い訳」と映らないようにすることです。折角詳しく説明している内容が、裁判官の目から見て「言い逃れの弁解を並べているだけ」と捉えられてしまいますと、逆に不利になってしまう虞があります。
 そのため、詳しい説明に加えて、自分としても反省していて今後二度と同じ行動に出ないことも明記することが大事です(こうすることで、「言い逃れ」ではなく、しっかり「反省」したうえで、事情を説明しているということが裁判官にも伝わりやすくなります)。

 


6.「お互い様だから問題ない」という言い分はどうなのか?


 たまに、奥様の方から「夫の方は、もっとひどい叱り方をしていた。こんな夫に言われる義理はない」といったことを指摘されることもあります。
 もちろん、夫側の不適切な育児等についてはしっかりと指摘しなくてはいけないのですが、「夫も悪いから、こちらのことも許される」という言い分は通りにくいです。
 そのため、前述のように、こちらの叱り方に実際に大きな問題があったという場合には、反省すべきは反省しているという姿勢を裁判所に見せたほうが効果的なことが多いです。

 


7.まとめ


・夫側は監護者として指定されたいがために、こちらの叱り方について様々な主張をしてくることも多い。
・虐待といえるような度を越した叱りつけでなければ、そこまで心配することはない。
・お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱ることが「良い叱り方」と言われることが多い。
・夫の言い分に対する対応方法は、指摘されている内容に応じて異なってくる。
・「お互い様だからこちらのことも許される」という言い分は通りにくい。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.07.10更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.同居中、夫は些細なことでも録音を取ったり証拠集めをしていたが大丈夫か?


 夫婦の関係が良好な場合には、夫側が家庭内で録音機を構えたり、スマートフォンで録音をするということはないと思います。しかし、夫婦の関係が険悪化してきますと、今後何かあったときのためにといったことで、夫側が証拠集めのようなことを開始する場合があります。
 あなたはお子さんの育児に奔走しているため、記録化があまりできていないのに対して、旦那側はほとんど育児に協力しないため、着々と記録化しているといったパターンが多いように思われます。
 具体的に私が担当した事件では以下のようなパターンがありましたので、各パターンごとに以下で詳しく解説していきます。
① こちらの家事不行き届を指摘するための証拠化

② こちらの育児不行き届を指摘するための証拠化

③ こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化

④ 旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化

⑤ こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化

 


3.【パターン①、②】こちらの家事不行き届や育児不行き届を指摘するための証拠化


 こちらの家事不行き届や育児不行き届を指摘するための証拠化というのは、具体的には、旦那側があなたに対して家事不行き届や育児不行き届を指摘している場面を録音して、これまでに不行き届があったこと及び旦那が気付いて指摘していることの両方を記録化するといったケースになります。
 以下では、具体的にはどのようなことをどのように記録しているのかに応じて解説していきます。


(1)音声録音での証拠化
 具体的には、前述のような、旦那側があなたに対して①家事不行き届(部屋が片付いていないとか、取り込んだ洗濯物が置きっぱなし、食事後の食器を洗い始めるのが遅いとか、料理の味が薄いとか)や②育児不行き届(保育園への持ち物の忘れ物が多い、おむつを替える頻度が少ない、目を離している隙にお子様が化粧品等を口にしようとしてしまっているとか)を指摘している場面を録音して、これまでに不行き届があったこと及び旦那が気付いて指摘していることの両方を記録化するといったケースがこれに該当します。


 このような録音に対する対抗策としては、録音中に、あなた自身の口から「録音している余裕があるなら手を貸して」「そうやって録音しているけど、あなたは何もしてくれないよね」と言った形の発言をして、あなただけの問題ではないという記録化をしていくというのが有効かと思います。


(2)写真や動画での証拠化
 写真や動画での証拠化というのは、よくあるケースとしては、①こちらが他の家事や育児で手が回らず、部屋が片付いていない状況を旦那側が写真撮影するとか、②こちらがお子様の幼児で外出しなければならないため、食後の食器類を洗い場にそのままにしている状況を旦那が動画にして、旦那自身のコメントを勝手に吹き込むといったことになります。
 そもそも、このような片付けや整頓の不十分については、数日不十分な状態が継続したということであればともかく、そうでない場合には、あまり大きな落ち度になるような問題ではないかと思います。
 また、監護者指定手続きの中で、旦那側がこちらを追及してきた場合には、「リビングは旦那もよく利用する部屋なので、リビングが片付いていないのは旦那側の責任でもある」といったような反論をすれば十分かと思います。


(3)日記やメモでの証拠化
 旦那側が問題に感じたことを逐一日記やメモ帳にまとめているというケースもたまにあります。
 単なる手書きのメモの場合、メモを何時作成したのかの証明が難しいことが多いので(要するに、旦那側が「令和2年2月2日に書いた」としても、実際には監護者指定手続き最中の令和5年5月5日に書いていることもあり得るということです)、あまり心配する必要はないかと思います。
 手書きの日記や手書きのメモは、その当時に記録したものであれば、一定の証拠価値があるのですが、「いつかいたのかが不明確なもの」(旦那側がいついつに書いたと言い張っているだけで、本当にその日に書いたのかが不明確なものも含みます)については、あまり証拠価値は認められないことが多いです。


 これに対して、携帯電話のメモ機能で作成したデータについては、作成日付を変更できない形式のものでしたら、少なくともその時に作成したデータということになり、一定の証拠価値が認められることになります。
 ただ、その場合でも、書いている内容次第というところでして、あまり旦那側の主観が多く含まれる場合には、あまり重要とは見られないケースがほとんどです。

 

 

4.【パターン③】こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化


 これは端的に、こちらがお子様を叱責しているときの様子を旦那側が録音したり動画にしたりするというパターンになります。
 最近は、新型コロナウイルス流行を機に、在宅勤務をする旦那が増えた関係で、在宅勤務中に、お子様の泣き声を聞くと、すぐに旦那が口を挟んでくるとか、携帯電話を構えて録音しようとしてくるといったケースが増加傾向にあります。
 そもそも、録音等されたとしても、その叱責が行き過ぎたものでなければ、特にこちらが不利になるわけではありません。お子様ですからふざけてしまったり、悪戯をしてしまったりと、しっかりと注意しなくてはならない場面は多くあると思いますので、そのような場合に、何も注意しないというのではむしろお子様にとっても良くないことだと思います。


 なお、そのような叱責が、旦那側が煽った結果だというケースもあります。
 例えば、お子様の悪戯が度を越していてしっかりと注意しなくてはいけないのに、旦那側が、「そのくらい大目に見てやれよ」とか「ヒステリーなママだねぇ」などと煽ってくるケースです。
 そのような場合、こちらが叱責している場面だけを切り取って記録化されてしまいますと、こちらに不利になりますので、その日のうちに、あなたの親族等にメールやLINEを送って、経緯を記録化しておくとよいと思います。


 旦那側は、あなたがお子様を叱っている場面だけを切り取って、監護者指定手続きの中でも「些細なことで子供を叱りつけている」といった言い方をしてくると思います。
 それに対抗するために、しっかりと経緯もあなたの方で記録化しておくという意味です。そして、その記録化は、早めに記録化しておく必要がありますので「その日のうちに」親族にメールを送るなどして、状況保存しておいた方が良いのです。

 

 

5.【パターン④】旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化


 よくあるパターンが、旦那側がお子様と会話をし、その中でお子様に対して旦那への感謝を言わせるというものです(その会話全体を録音しています)。例えば、あなたが所用で自宅を留守にしている際に、旦那がお子様の昼食を準備したとします。そのことについて、お子様に「パパが作るミートソーススパゲティは最高だよ」「いつもパパが料理してくれるよね。サンキューね」などと言わせ、録音するといったものです。
 こうした録音については、旦那側が意図的に言わせていることが多く、不自然な雰囲気、不自然な会話になっていることが多いので、このような録音が監護者指定手続きの中で出てきたとしても、あまり心配しなくても良いことが多いと思います。

 

 

6.【パターン⑤】こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化


 よくあるパターンが、旦那側がこちらを煽ってきた上で、もしくは、こちらを挑発してきた上で、こちらを怒らせ、怒っている様子だけを録音するといったものです。
 そもそも、そのようなあなたの発言が、聞いていて、周りを萎縮させるようなものでしたら問題になるかもしれませんが、そこまでのものでなければ、そこまで四敗する必要はないかと思います。また、その場面にお子様が同席していなければ、監護者指定手続きとの関係ではほとんど無関係な事情となります(夫婦間の問題であって、お子様との関係の問題ではないという意味です)。
ただ、この場合も、不安があるようでしたら、その日のうちに、あなたの親族等にメールやLINEを送って、経緯を記録化しておくとよいと思います。

 

 

7.こちらも記録化した方が良いのか?


 夫側が記録するのであれば、こちらも記録するというスタンスで臨みたという方もいますが、弁護士としてはあまりオススメしません。
 と言いますのは、あなたが記録をとっていることを旦那側が知ると、旦那側の記録行為は悪化していく可能性が高く、余計に家庭内がぎくしゃくしていくからです。
 もし、あなたの方で記録を残しておきたいということでしたら、「旦那の落ち度を探す」という観点ではなく、むしろあなたの育児での頑張りを記録しておいた方が良いと思います。
 一番端的なのは、毎日育児日記をつけておくということではないかと思います。大した行事やイベント等がない日も、しっかりと「毎日書く」ということが非常に重要になります。

 

 

8.まとめ


・旦那側がこちらの落ち度を記録しようとする場合、以下のようなものが考えられる。
① こちらの家事不行き届を指摘するための証拠化
② こちらの育児不行き届を指摘するための証拠化
③ こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化
④ 旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化
⑤ こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化
・いずれについても、行き過ぎたものでなければ、旦那側が記録を取っていても無意味である。
・それぞれの証拠化に対して対処方法もあるので、不安があるようなら対処方法を講じるべきである。
・こちらが積極的に「旦那の落ち度を探す」という観点で記録化することはあまりオススメしない。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.06.26更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 


2.夫による連れ去り事案ってどういうケース?


 夫による連れ去り事案というのは、夫側がこちらに断りもなくお子様を勝手に自宅から連れ出し、夫だけ(夫の実家の補助を受けつつ)で育てていくようなケースを言います。
 よくあるケースとしては、①こちらが別居の準備をしていることを夫側が察知してしまい、こちらが別居を始める前に夫側が先に連れ去って行ってしまったケースや、②こちらの冗談の発現を夫が真に受けて、お子様に危険が及ぶ可能性があるなどと言って連れ去ってしまうケースなどがあります。

 


3.連れ去りは違法になるのか?


 連れ去りが違法な場合、夫側には大きく不利な要素となりますので、連れ去りが違法なのかどうかという点が非常に重要になります。
 一般的には以下のような要素を考慮して判断されるケースが多いです。

(1)【違法な連れ去りかどうかのポイント1】連れ去り態様
 「態様」というのは、分かりやすく言いますと、「連れ去り方」の問題です。
 例えば、大型のバンの後部座席に無理矢理お子様を軟禁するかのような態様で連れ去るケースだとか、保育園の保育士さんの全く目が届かないところで、勝手に園庭に侵入して連れ去ると言ったケースですと、態様そのものが違法な態様といえますので、違法な連れ去りと認定されるケースが多いかと思います。


(2)【違法な連れ去りかどうかのポイント2】お子様の意思
 ここでのお子様の意思というのは、別居に対してのお子様の意思と言うことになります。
 夫側がお子様を連れ去る場合、お子様の意思を十分確認せずに別居を開始していることも多いと思いますが、お子様が自宅に戻りたいとか、奥様と一緒に生活したいと希望するような場合には、お子様の意思に反していますので、違法な連れ去りと認定されるおそれがあります。
 なお、まだ年齢が小さい子は、自身の置かれている状況等をしっかりと把握できていないケースも多いので、お子様の意思の確認は6,7歳以上を一つの目安として確認することが多いと思います。


(3)【違法な連れ去りかどうかのポイント3】それまでの監護状況
 同居生活中の監護状況(それまでの育児への関わり方)は、違法な連れ去りかどうかの判断にも影響を及ぼします。
 同居中、育児をメインで担当していた場合、別居後も同居中の育児の延長とみなすことができますので、連れ去りの違法性は否定する方向に働きますし、逆に、同居中あまり育児に関わってこなかった場合、別居後しっかりと育児を担うことができるものと評価して良いのかという問題が発生しますので、連れ去りの違法性が肯定される方向に働くのです。


(4)【違法な連れ去りかどうかのポイント4】無断別居イコール「違法な連れ去り」ではない。
 たまに私が相談に乗っていますと、奥様の了解を得ずに連れ去ったことをもって「違法だ」と強くご主張なさる方もいますが、「無断別居」イコール「違法な連れ去り」ではありません。
 確かに、あなたの了解も得ずにお子様を連れて行っているのですから「連れ去り」にはなるのでしょうが、それが法律的に違法なのかどうかは、これまでに述べてきた考慮要素を総合的に検討して判断されることになるのです(要するに、連れ去りと言っても「適法な連れ去り」というのもあるということです)。

 


4.初動が非常に重要


 今回のブログは、夫側が監護者指定事件を起こしてきたというケースというタイトルにしてありますが、夫側が連れ去った場合には、あなたの方から監護者指定審判を申し立てるケースの方が多いと思います。
 そして、夫側の所在が判明し次第、速やかに監護者指定事件と保全事件を同時に申し立てて対応することが重要になります(その意味で「初動が非常に大事」です)。
 夫が連れ去った環境にお子様が馴染んでいけば馴染んでいくほど、夫側に有利になってしまいますので、早めに対処した方が良いのです。
 そして、監護者指定事件では、早めにお子様を取り戻すために、速やかに保全事件の結論を得られるよう尽力する必要があります。
※保全事件の詳細につきましては、まとめサイトから、本シリーズの(20)のブログをご覧下さい。

 


5.警察や児童相談所を活用して至急連れ戻すことはできないのか?


 たまに私が相談に乗っておりますと、「監護者指定事件だと保全だと言ってもどうしても時間がかかってしまうので、今すぐ警察に乗り込んでもらって、すぐに子供を保護してもらえないのか?」という質問を受けることもあります。
 旦那側の連れ去りが、あまりに乱暴な態様だというような場合には、警察も誘拐事件として取り上げてくれるケースもありますが、連れ去りは、通常、こちらの目が届かないところで実行されることが多いので、どのようにして連れ去って行ったのか、こちらには分からないことが多いです。


 そのため、誘拐罪と絡めて警察に動いてもらうことは難しいことが多いと思います。
 また、児童相談所についても、現状お子様が旦那側から暴力被害を受けているというような、明らかな児童虐待のケースであれば別ですが、そうでないと、児童相談所が大きく動くことは難しいと思います。

そのため、結局は、監護者指定事件(特に保全事件)の中で裁判所に速やかに結論を出してもらうという方法を取ることが多いと思います。

 


6.まとめ


・無断での連れ去りイコール違法というわけではない(同じ「連れ去り」でも「適法な連れ去り」となるケースもある)
・連れ去りが違法かどうかは、以下のような要素で判断されることが多い。
 ①連れ去り態様
 ②お子様の意思
 ③それまでの監護状況
・夫側に連れ去られた場合には、速やかに監護者指定事件(保全を含む)を起こすなど初動が非常に大事である。
・警察や児童相談所を介して早期に連れ戻すということは難しいケースが多い。

 

 

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2023.06.19更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 


2.在宅勤務だと監護実績という部分で争いが激化しやすい


(1)監護実績とは?
 監護実績というのは、分かりやすく言いますと、これまでお子様の育児にどの程度関わってきたのかという実績のことです。
 監護者指定事件では、この監護実績が非常に重要な考慮要素とされます。なぜなら、これまでの監護実績が豊富であれば、その親御さんに引き続きお子様の世話を任せるのが安心だという評価を受けやすく、監護者指定事件で大きくリードすることができるからです。


(2)在宅勤務だと監護実績で争いが激化しやすい
 元々、監護者指定事件では、監護実績について夫婦の言い分が大きく食い違うことも多々あります。旦那側は、監護権を獲得するために、積極的に育児に関わってきたと主張してくるため、言い分が食い違ってしまうのです。
 そして、旦那側が在宅勤務だと、平日旦那側も自宅に居ることになりますので、「仕事をしながらも、育児に関わっていた」という主張がなされやすくなるのです。

 逆のパターンを想定すると分かりやすいと思いますが、旦那側が出社勤務だという場合、旦那側が育児に関わっていたと主張しても、こちらから「夜遅くまで会社に行っていたのだから、物理的に育児なんてできるわけがない」と反論すると、旦那側は言い訳が難しくなります。
 しかし、旦那側が自宅に居ると、「物理的に育児ができない」ということを言いにくくなってしまうため、一層監護実績という点で紛争が激化しやすくなってしまうのです。

 


3.夫が在宅勤務の場合、監護実績はどのように判断されるのか?


(1)大きく分けると3パターンが考えられる。
 一口に夫側が在宅勤務だと言っても、大きく分けると、以下の3パターンがあると思います。
①【パターン1】あなたは専業主婦で、夫は在宅勤務
②【パターン2】(共働き)あなたも夫も在宅勤務
③【パターン3】(共働き)夫は在宅勤務だけど、あなたは出社勤務

 上記の【パターン1】のケースですと、夫側が在宅勤務だと言っても、あなたの方が専業主婦として家事や育児に大きく関わっていることが推測されますので、夫が在宅勤務だからと言って、夫側が大きく有利になるということはないと思います。ただし、前述の通り、夫が出社勤務のケースと比較して、在宅勤務の方が、単純に通勤時間がなくなるわけですし、物理的に自宅に居るため、育児に関わりやすくなっていることは事実ですので、夫側の育児の主張に対しては丁寧に反論していく必要があります。


 次に、【パターン2】のケースですと、お互いが在宅勤務ですので勤務形態という点から、大きな差はつかないことが多いと思います。ただ、お互いに在宅勤務だとしても、あなたは時間短縮勤務で、旦那側はフルタイム勤務だという場合、ある程度はあなたの方が家事・育児に関わる時間が取れるかもしれないと評価されることもあろうかと思います。
 最後に【パターン3】のケースですと、勤務形態という点からは、残念ながらあなたの方が不利になってしまっていることは否定できません。そのため、あなた自身の監護実績をどのように証明していくのかという点が課題になります。


(2)結局、裁判所は何をもとに判断するのか?
 監護者指定事件の手続を進めておりますと、監護実績についてのお互いの言い分が大きく食い違ってしまい、良い分だけでは、監護実績を判断することが難しいというケースも多いです。
 そのため、裁判所側は、保育園の連絡帳等当時の状況を探れる資料を非常に重要視することが多いです。これを見れば、ある程度お子様がどのような生活を送っていたのかが分かりますし、誰が連絡帳を書いていたのかが分かれば、夫婦のどちらが積極的に育児に関わってきたのかが分かるからです。


 また、今回のブログは、解説を簡明にするために、夫側が完全在宅だというケースで解説しましたが、実際には完全在宅ではなく、週2回は出社しているなど、一部出社しているケースもあります。そのような場合には、出勤簿などを提出して、どの程度出社していたのかを確認するといったこともあります。

 

 


4.在宅勤務のもう一つの懸念点


 夫側が在宅勤務の場合、夫も自宅に居るため、こちらの育児方法に色々と口を挟んでくる機会も増えていきます。
 口を挟むだけならまだしも、監護者指定事件の中で、あなたが子供を虐待して泣かせていたとか、不適切な育児をしている現場を見たといった主張がなされることもあります。
 そのため、ある程度夫が言ってきそうな問題点があらかじめ分かっているようでしたら、早めにこちらの方から事情を説明するという形で対応することもあります。

 

 

5.まとめ


・夫が在宅勤務だと監護実績について争いが激化しやすい
・一口に夫側が在宅勤務だと言っても、大きく分けると、以下の3パターンが考えられる。
①【パターン1】あなたは専業主婦で、夫は在宅勤務
②【パターン2】(共働き)あなたも夫も在宅勤務
③【パターン3】(共働き)夫は在宅勤務だけど、あなたは出社勤務
・あなたが専業主婦の場合、夫が在宅勤務であっても大きな影響はないが、共働きの場合には一定の影響が避けられない。
・特にあなたが出社勤務の場合【パターン3の場合】には、しっかりと監護実績を証明していく必要が出てくる。
・監護実績の証明にあたっては、保育園の連絡帳などが最適である。
・在宅勤務の場合のもう一つの懸念点は、あなたの育児方法などについて夫がみて不適切な育児だなどと言い始めることである。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.06.05更新

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1.そもそも「監護者」って何だ?



(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 


2.全部で3パターン


 一口に精神疾患の影響と言いましても、①あなたが精神疾患のパターンと、②旦那側が精神疾患のパターン、③夫婦双方が精神疾患のパターンの3パターンがあると思います。
 そのパターンに応じて、監護者指定事件に与える影響も異なってきますので、それぞれについて解説していきます。
 なお、このブログでの「精神疾患」とは、心療内科医等から正式に精神疾患の診断を受けていることを指す用語として使っております。そのため、単に①精神的な不調があって今度病院でカウンセリングなどを受けてみようかと思っているとか、②心療内科に通ってはいるけれどもカウンセリングを受けているだけで、正式な診断は出ていない場合は除外して解説しています。

 


3.【パターン1】あなたが精神疾患のパターン


(1)残念ながら不利な要素の一つにはなってしまう
 前述の通り、監護者とは、今後お子様の身の回りの世話などをしていくにふさわしい人を指しますので、あなたが精神疾患を患っているということは、残念ながら不利な要素となってしまいます。
 ただ、精神疾患であるから、監護者を争っても勝てない、ということではありませんので、慎重に見極めていく必要があります。


(2)どのように考慮されるのか?
 あなたの精神疾患がどの程度影響するかは、主に以下の要素が考慮されると思います。

①精神疾患の診断名

②精神疾患の重症度

③精神疾患を患っていた期間

④今後の治療見込み

⑤精神疾患が日常生活に与える影響の度合い

⑥精神疾患が育児に与える影響の度合い

⑦精神疾患が特定の場所や状況で発現する場合、どのような状況等で発現するのか

 以下、それぞれについて解説していきます。
(3)【考慮要素①】診断名
 あなたが心療内科医又は精神科医に「診断書を書いてください」と依頼すると、その際に診断名も書いてくれると思いますが、その「診断名」のことです。
 例えば、パニック障害、適応障害、身体表現性障害、うつ病、ADHD、PTSD等、どのような病気なのかということです。
 この診断名ないし病名を見れば、どのような病気なのかということが明確になりますので、精神疾患の影響を探るには最も重要な要素と言えるかと思います。


(4)【考慮要素②】重症度
 前述の病名を見れば、ある程度その精神疾患の重症度が分かることも多いのですが、同じ病気でも、症状の重さは人それぞれかと思います。
 例えば、うつ病が良い例だと思いますが、かなり軽いうつ病の場合には、ほとんど日常生活に影響がないという方もいると思いますし、逆に、重度うつ病の場合には、日中はほとんど寝たきりに近いという方もいると思います。


 このような精神疾患の重症度も、精神疾患の日常生活への影響を探る上で重要な要素となります。
 このような重症度については、裁判所サイドは、①通院頻度(頻度が多い方が症状が重いと判断されやすい)、②処方されている薬の内容・分量(効用が強い薬、分量多めの方が症状が重いと判断されやすい)、③精神障碍者等級の認定を受けている場合にはその等級といったことから判断することが多いと思います。


(5)【考慮要素③】患っていた期間
 その精神疾患を患っていた期間がかなり長期間に及ぶという場合には、近い将来に治るということは難しいだろうということになると思いますし、疾患としては重いと判断されることが多くなってしまうと思います。
 ただ、例えば通院期間が4,5年と比較的長い場合でも、通院頻度は2か月に1回とか、それよりも少ないというような場合には、主にカウンセリング目的で受診していた可能性が高いということで、期間の長さがそれほど不利にならないこともあります。
 また、最近の通院期間は1年間だという場合でも、12年前から7年前の5年間も通院していたというような場合、過去の通院歴が今後にどのように影響を及ぼすのかという点も考慮されることが多いです(いわゆる既往歴の問題です)


(6)【考慮要素④】今後の治療見込み
 前述の通り、現状の精神疾患の具合が非常に重視されてしまうのですが、例えば新薬の治験が始まっていて、劇的に症状の改善見込みがあるといった場合には、そこまでこちらに不利にならないこともあると思います。
 今後どの程度のスパンで精神疾患と付き合っていかなくてはならないのか、どの程度改善していく見込みなのかといった点が考慮要素になります。


(7)【考慮要素⑤】日常生活への影響
 精神疾患としては決して軽い症状ではないとしても、例えば、朝はどうしても起きれないけれども、午前11時頃に起きた後は、ほぼ問題なく日常生活を送れるというような場合、朝のお子様の支度や朝食の準備さえフォローできれば、監護者として指定されるにあたって全く問題ないと評価される場合もあります。逆に普段はほとんど症状がないとしても、体調を崩したときには一気に不調になって3,4日寝込んでしまうというような場合には、そのように寝込んでしまう期間の生活をどうするのかということが大きな課題になります。
 このような精神疾患があなたの日常生活にどのような影響を与えており、どの程度制限になってしまっているのかという点も重要な考慮要素となります。


 前述の通り、監護者とは、今後お子様の身の回りの世話などをしていくにふさわしい人を指しますが、あなた自身の日常生活すらままならないということになってしまうと、「育児どころではない」と評価されてしまう可能性もありますので、育児を担う前提として、あなた自身の日常生活への影響も考慮されることになるのです。


(8)【考慮要素⑥】お子様の育児への影響
 前述のようなあなた自身の日常生活の問題もありますが、あくまで監護者指定事件ですので、お子様の育児にどのような影響を与えるのかという点も裁判所は注意深く見極めていくことになります。
 実際には、お子様が保育園に通っているとか小学校に通っているという場合には、担任保育士や担任教師から事情を聴いて、お子様の園や学校での様子で気になったことはないか、気になるような発言がないか、宿題や課題の遅れ、普段の登園・登校準備に不足等がないのか等を把握する中で、精神疾患の影響を見極めることが多いかと思います。


(9)【考慮要素⑦】症状の発現条件等
 精神疾患によっては、症状が現れる場所が限られるといったケースもあります。例えば、以前の職場でのストレスが原因で適応障害になってしまったというような場合、出勤すると症状が出るが、家庭内ではほとんど症状がないとか、パニック障害ですと、人混みだと症状が出るが、人混みを避ければ問題がないといったことです。
 このように発言の場所や状況が限定される場合、そのことが、子育てとの関係でどのような影響があるのかを見極めていくことになろうかと思います。


(10)結局は、お子様の育児にどの程度影響があるのかという視点で見極めていくことになる。
 前述のような考慮要素を相互して検討していくことになりますが、結局は、お子様の育児にどの程度影響があるのかによって、監護者にふさわしいかどうかが決まっていくことになります。
 裁判官が、あなたの精神疾患の詳細を確認したいと判断した場合には、カルテを取り寄せて治療の経過等を確認することもあります。


(11)夫からの暴力や暴言が原因なのにこちらに不利になるのか?
 あなたの精神疾患が、夫からの暴力や暴言を原因としているケースもあり、そのような場合にも精神疾患が不利に考慮されるというのは不公平だと感じると思います。
 この場合に、あなたの精神疾患が夫からの暴力や暴言のみを原因としていると明確に証明できれば良いのですが、医師もそこまで断定的に原因を特定してくれないことが多いと思います。
 そのため、旦那の暴言、暴力のせいでこうなってしまったという証明が難しいことが多いのが実情ではないかと思います。
 そのような場合には、「旦那のせいでこうなったのだから、旦那の有利な事情として考慮すべきではない」という視点よりも、「旦那は子供の前でも私に暴力を振るうような粗暴な人なんだ」という視点で戦った方が有利になる気がします。

 

 

4.【パターン2】旦那側が精神疾患の場合


 旦那側が精神疾患という場合も、考慮要素は前述の7項目の要素が考慮されることが多いです。
 ただ、旦那側特有の問題もありますので、以下の通り解説します。


(1)旦那はフルタイム勤務していて、その点では支障を生じていない場合、どのように評価されるのか
 旦那が精神疾患を患っているとしても、家族の家計を支えているのは旦那の収入であるというケースもあると思います。
 その場合、旦那が仕事に支障をきたしていないという事情はどのように考慮されるのでしょうか。
 一般的には、旦那の仕事に支障がないという場合、例え精神疾患を患っていたとしても日常生活面等にはほとんど影響がないと評価されることが多いです。
 仮に、多少仕事に支障を生じていたとしても、概ね問題なく仕事ができているということになりますと、監護者指定事件にあたって大きな減点要素にはならないことが多いです。


(2)あなたの目から見て絶対精神疾患だと感じる場合

ア 裁判所はどの程度考慮してくれるのか?
 私が相談を受けておりますと、「旦那は病院に行っていないんですが、インターネットで調べてみたところアスペルガー症候群であることがほぼ間違いないと思います。これでこちらが有利にならないのでしょうか?」とか「旦那に何度病院に行くように言っても行ってくれないのですが、日常生活の中であまりにおかしいことが多いので、絶対に精神疾患だと思います」といったご相談を受けることも多いです。
 要するに、正式な精神疾患の診断が出ていないものの、あなたとしては旦那が精神疾患だと疑っているケースになります。


 このようなケースですと、旦那の普段の行動等によほどおかしなものがある場合は別として、そうでない場合には、ほとんど考慮してもらえないことの方が多いかと思います。
 残念なことに、こちらが旦那のおかしな行動や言動を指摘しても、旦那側は、「そのような事実はない」とか「このような経緯があってのことなのでおかしなものとは言えない」などと反論してくることが多く、あなたが感じている違和感を裁判所に共有することが難しいことが多いです。


イ 多少強引にでも旦那を心療内科に連れて行くべきなのか?
 前述のようなご説明をしますと、「それなら多少強引にでも旦那を心療内科に連れて行きます」とか「何とかして旦那に精神疾患の診断をつければいいんですね?」と追加で質問を受けることもあります。
 ただ、多少強引にでも心療内科に連れて行くとしても、一度心療内科に行けば精神疾患の診断名をつけてくれるということではないかと思います。通常は、何回か心療内科に足を運んで初めて、心療内科医等が診断可能な状況になるということです。


 また、心療内科医も、旦那自身が全く精神面での治療を希望していない、逆に拒否するという場合、無理に治療を続けることもできないと思います。
 更に、旦那に心療内科医からの診断をつけるという点も、診断名があれば、もちろん考慮要素にはなりますが、前述の通り、その疾患によってどの程度日常生活や育児に影響があるのかという点が最も重要な考慮要素になりますので、病名があっても、日常生活に大きな問題がないということになってしまいますと、ほとんど旦那側の減点要素にはなりません。

 

 

5.【パターン3】夫婦とも精神疾患の場合


(1)夫婦がお互い精神疾患だという場合
 夫婦がお互い精神疾患だという場合(夫にも正式な精神疾患の診断が出ているというケースを想定しています)、前述の7個の考慮要素に照らして、どちらの精神疾患がどの程度重いのかということが重要になります。
 なお、夫は仕事をしており、あなたが専業主婦だという場合、同じ精神疾患でも、夫側は症状が軽いのではないか?逆にあなたの方は症状が重いのではないか?と見られがちなので、しっかりとあなたの症状の状況を裁判所に説明していくことが重要になります。


(2)精神疾患の程度によっては、監護補助者が相対的に重要になることもある
 精神疾患と言っても、日常生活にほとんど影響がないという場合もあり、そのような場合には、監護補助者がいなくても、こちらに大きく不利にはならないと思います。
 他方で、それなりの症状だという場合には、体調を崩した際などに、育児をサポートしてくれる人(通常は親族)、すなわち、監護補助者がいるのかどうか、どの程度サポートしてくれるのかという点が相対的に重要になってくることもあります。

 


6.まとめ


・一口に精神疾患と言っても、①あなたが精神疾患の場合、②旦那側が精神疾患の場合、③夫婦双方が精神疾患の場合という3パターンがある。
・精神疾患がどこまで考慮されるかは、以下の7個の項目が重視される傾向がある。
①精神疾患の診断名
②精神疾患の重症度
③精神疾患を患っていた期間
④今後の治療見込み
⑤精神疾患が日常生活に与える影響の度合い
⑥精神疾患が育児に与える影響の度合い
⑦精神疾患が特定の場所や状況で発現する場合、どのような状況等で発現するのか
・旦那側が精神疾患だという場合でも、通常通り仕事ができている場合、その症状はあまり重視されないことが多い。
・旦那側に精神疾患の診断名をつけようと躍起になってもあまり大きな効果がないことが多い。
・夫婦双方が精神疾患の場合、疾患の程度によっては、監護補助者が相対的に重要になってくることも多い。

 

 

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1.関係機関調査って何だ?


 関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることを言います。通常は、家庭裁判所調査官がその関係機関まで直接足を運んで話を聞くという形をとります。
一般的に関係機関調査の対象になるのは、①現在お子様が通っている保育園・小学校、②お子様がメンタルケアなどを受けている場合には、通院している病院、③児童相談所が関わっている事件の場合には、児童相談所等となります。


(1)関係機関調査の位置付け
 児童相談所が深く関わっている事件の場合、お子様への虐待の程度や頻度、虐待親の危険性等の判断にあたって、児童相談所の見解は非常に重要になりますが、①児童相談所が関わってはいるが、かかわりが薄い場合や、②児童相談所が全く関わっていない場合などでは、関係機関調査の重要性は、そこまで高くないことが多いです(家庭訪問やお子様の意思確認の方が、格段に重要性が高いです)。
 要するに、普段の学校での生活に問題等がないかを確認するといったものですので、あまり関係機関調査の結果を心配し過ぎない方が良いと思います。


(2)各関係機関調査ごとの特徴等
ア 保育園・小学校の調査
 保育園や小学校の調査は、現在お子様が通っている保育園・小学校の調査を行うことが多く、別居直前の保育園(転園前の保育園)・小学校(転校前の小学校)の調査までは行わないことの方が多いです。
 一般的には、家庭裁判所調査官が、その保育園・小学校まで足を運び、保育園ですと担任の保育士と園長先生から話を聞く、小学校ですと担任教師と教頭先生(又は校長先生)から話を聞くという形がオーソドックスかと思います(但し、保育園によっては、「うちは書面での回答しかしない」という方針のところもあって、その場合には、調査官が書面で質問事項を送り、保育園から書面で回答が来るということになります)。
調査の際、調査官は、お子様の普段の保育園・学校生活の様子(積極性や普段の態度、他の児童とのトラブルの有無・内容、宿題など提出物や授業準備の状況)や、小学校の場合、学校成績等を尋ねることが多いです。
 このような調査に先立って、あなたまたは夫側から保育園の連絡帳コピーや小学校の通知表コピーなどを事前に裁判所宛に提出し、調査官もある程度も事前に情報を得た上で、調査に臨むことが多いです。


イ 病院の調査
 ここでの病院の調査というのは、お子様が現状もメンタルケア等で病院に通院している際に、その病院医師から調査官が事情を聴くというものです。
 たまに、夫が過去に心療内科等への通院歴がある際に、こちらから、その病院への調査を希望する場合もありますが、裁判所側は、まず、夫側から診断書を提出させ、診断書で症状等が把握できるのであれば、それ以上に調査まではしないケースがほとんどだと思います。
 お子様の病院への通院期間が長い場合、調査の事前準備として、カルテを提出したり、または、主治医の意見書を提出するケースが多いと思います。このように事前にある程度の情報を把握した上で、調査を実施するのです。
 その後の対応は、主治医がどこまで協力してくれるかにもよるのですが、多忙な医師の場合、調査官が来訪して直接話をする時間をとることが難しいということで、電話での事情確認にとどめるケースもあります。
 なお、病院への調査の場合、カルテのコピー、主治医の対応、いずれも、費用が発生するケースも多いです(要するに、その医師に対して手間賃を支払うということです)。費用負担について両当事者間で話し合いが円滑に進めばよいのですが、円滑に進まない場合には、病院への調査(専門用語では「医療機関調査」などと言ったりします)をどこまでどのように実施するかに影響を及ぼすケースもあります。


ウ 児童相談所への調査
 お子様の関係で児童相談所が関係している場合、基本的には、家庭裁判所調査官の調査を実施していくことになります。
 ただ、あなた又は夫側が児童相談所に事情を話して相談しただけ(要するに、児童相談所としては調査等を一切実施していない)といった場合には、調査官の調査までは行わないこともあります。
 児童相談所は、調査官からの質問をまとめた書面を受け取り、書面で回答するという対応が多いですが、各児童相談所で対応が統一されているわけではないようで、調査官と直接面接して事情を話してくれることもあります。
 また、調査に先立って、あなた又は夫側から児相側に個人情報の開示申請を行い、その資料を事前に提出するよう裁判所から求められることもあります。

 

 

2.関係機関調査の順序


 関係機関調査を実施する場合、同時期に実施してしまうことが多いのですが、家庭訪問との先後では、①関係機関調査を早急に実施する場合と②家庭訪問と同時期に実施する場合とがあります。
①の進め方にするか、②の進め方にするかは、裁判官によっても異なるのですが、一般的には、②のパターンが多いかと思います。

 

 

3.まとめ


・関係機関調査とは、お子様の監護状況を確認する一環として、現在または過去に関係していた機関に対して、家庭裁判所調査官が調査をかけることである。
・関係機関調査としては、保育園・小学校、病院、児童相談所などが対象になることが多い。
・虐待の事案の場合、児童相談所への調査の重要性は非常に高いが、そうでない場合、関係機関調査はそこまで重要ではないことの方が多い。
・関係機関調査は、関係機関ごとに特徴がある。特に医療機関調査は、費用が発生する可能性がある点で注意が必要である。
・関係機関調査のタイミングは家庭訪問と同時期に行うケースが相対的に多い。

 

 

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2023.06.02更新

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1.夫の方が経済力があるというケースは非常に多い


 夫婦共働きというケースでも、奥様の方が収入が高いというケースは少数で、旦那側の収入の方が高額だというケースの方が多いと思います。
 また、結婚を機に、仕事を辞めて、専業主婦をしているという場合には、あなた自身の収入はゼロ、もしくは、パート勤務なので、大した収入がないというケースも多いと思います。
 このように、夫側の方が経済力が高い場合、特に、あなたが専業主婦で、ほとんど収入が無いような場合、親権者を決める時に、どのように影響するのでしょうか。

 

 

2.同居中、夫から散々言われていたので不安


 特にあなたが専業主婦の場合には、同居中に、夫側から「生活力がないから、お前が育てていけるはずがない」とか「仕事を辞めてこんなに立っているんだから、誰もお前のことを雇ってくれるはずがない」とか、散々に言われているケースもあります。
 そもそも、あなたが専業主婦になったのは、結婚や出産といった出来事があって、夫側とも相談しての結果なので、これを責められる謂れはなく、夫の発言そのものがモラハラ発言と言えるものです。
 ただ、夫からそのように言われていると、今後のことが不安になるのもよく分かるお話ですので、専業主婦であることが不利に働くのかという視点も踏まえて解説していきます。

 

 

3.キーポイントは家計が維持できていること


 監護者指定事件で重視されるのは、別居後の家計が維持できていることです。
 例えば、実家に転居し、実家の支援を受けることで、お子様の生活費も含めて家計を維持できているようでしたら、そのことで、不利に扱われることはほとんどありません。
 また、今は、貯蓄を切り崩して生活しているという場合でも、貯蓄が少なくなった段階で生活保護を申請して、生活保護費で暮らしていく予定だということでも、そのことで家計を維持できるのであれば、それほど大きく不利になるケースは少ないです。

 

 

4.家計維持にあたっては、婚姻費用も考慮して良い?


(1)夫側から婚姻費用が支払われている場合
 現在夫側から任意に婚姻費用の支払いがあり、今後の支払も期待できるような場合には、このような婚姻費用も家計維持にあたって考慮して差し支えありません。
 ただ、あなたが、夫との離婚を希望する場合、離婚した後は、養育費しかもらえなくなりますので、養育費しかもらえなくても家計を維持できるのか、といった点は考慮しておく必要があります。その際、児童扶養手当や児童育成手当等、行政の支援が期待できるような場合には、どのような支援が期待できるのか、いくらぐらい貰えるのかといった点を確認しておくと、より安心かと思います。


(2)夫側から婚姻費用が支払われていない場合
 これは、夫側の勝手な言い分ですが、「勝手に出て行ったやつには一銭も払わない」といったことを言ってくる夫もいます。
 そうやって婚姻費用がなかなか支払われない場合には、一旦は、婚姻費用の支払いが期待できないことを前提に家計を維持できるかを確認する必要があります。
 もちろん、婚姻費用は夫側に支払い義務がありますし、いずれは支払わなければならないものなのですが、現段階で支払われていないという場合には、「今は、今月分の婚姻費用も入ってきていませんが、いずれ、今月分も後から払われるから、その後払い分も考慮して下さい」と主張しても、現実に「今」あなたの手元に入ってきていない収入なので、家計維持にあたって考慮することは難しいです。

 

 

5.いつまでに就職すればよいか?


 たまに監護者指定等で有利に話を進めたいということで、就職活動に熱心に取り組んでくださる方もいます。
 もちろん、あなた自身がしっかりと稼いで、家計の状況がもっと良くなるようであればプラス材料にはなります(但し、前述のように現状でも家計を維持できているのであれば、あまり無理をする話ではありません)。しかし、一つ気を付けなければならない点があります。
 それは、就職活動や仕事をすることによって、お子様の世話や家事が疎かにならないかという点です。
 親権の争いでは、現在のお子様に対するケアが行き届いているかどうかという点を重視することが多く、あなたが就職しているかどうかという点よりも重要性が断然高いです。
 そのため、就職活動や業務開始に伴って、お子様へのケアが疎かにならないようにして下さい。

 

 

6.将来の教育の充実等は、そこまで重視されない


 夫の方が経済力がある場合には、夫側から、「自分が育てていくのであれば、私立の小学校に入学させ、小学校時代から、遠足で海外に行かせたり、小学校高学年からは英語学習にも力を入れ、グローバルな教育を受けさせられる」というように、教育面で充実させられるといったことが主張されることがあります。逆に、あなたの元では、小学校受験や中学校受験をするだけの費用も出せないといったことを批判してくるのです。
 確かに、経済力の差がある場合、ある程度教育を受けさせる資金面での差は否定できません。
 ただ、裁判所が重視するのは、これまで誰がお子様の面倒を見て来て、今後もお子様のケアをしっかりと行っていくことができるのか、という点でして、教育を充実させられるかどうかといった点は「二の次」というように考えることが多いです。

 

 

7.お子様も充実した教育に期待してしまっている場合


 同居中、あまりに夫側がバラ色の教育のように話をするので、お子様の方も、詳しいところは分からないまでも、そのような「バラ色の教育」に期待してしまうというケースもあります。
 ただ、お子様の年齢からして、その「バラ色の教育」の詳しい内容が分からないまま、「なんとなくパパが言ってたから、そっちの方が良いと思っていました」という程度の話であれば、そのことが影響することはほとんどありません。
 また、お子様がもう中学生や高校生で、そのような教育に期待している面があったとしても、普段の生活面では、母親であるあなたとの生活でないと、生活が成り立たないと考えているのであれば、やはり、教育面よりも普段の生活面の方が重視されます。

 

 

8.まとめ


・妻側よりも夫側の方が経済力があるケースの方が多い。
・だからと言って、それだけで夫側が有利になるというわけではない。
・むしろ、普段の生活のケアを夫と妻どちらの方が担えるのかということの方が重要なので、経済面は「二の次」とされることの方が多い。
・経済面で重視されるのは、こちらの家計が維持できているかどうか、である。
・あまり就職を焦って、お子様へのケアが疎かにならないよう注意が必要である。
・現に婚姻費用が支払われているのであれば、婚姻費用が支払われることで家計が維持できていれば、それで差し支えない。
・お子様が将来の充実した教育に期待していても、普段の生活の方が重要性が高い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

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