2023.07.31更新

弁護士秦
こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
神田駅から2駅、銀座駅から2駅、秋葉原駅から3駅の事務所です。夜間対応が充実しています。

 

 

1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.監護者指定審判手続きにおける連絡帳の「重み」


(1)普段の生活では、何の気なしに記帳しているものだけれど…
 保育園や幼稚園の連絡帳については、普段の生活の中では、「重要書類」といった意識もなく記帳していることが多いと思います。
 しかし、監護者指定審判手続きの中では、非常に重要な書類と位置付けられることが多いです。
 なぜ、このように重視されるのかと言いますと、監護者指定審判手続きでは、これまで夫婦のどちらがどのくらい育児を担ってきたのかという点について、お互いの言い分が大きくずれることが多いです。そんなときに、連絡帳を見ると、おのずと夫婦のどちらの方が育児をメインで担当していたのかといったことが明確化することが多いので、重要な書類と位置付けられることが多いのです。


(2)残念ながらあまりに簡素なものは、ほとんど証拠価値がない
 例えば、連絡帳はあるけれども、そもそも書く欄が、元気かどうか及びその朝の体温しか書けない形式のものだとか、連絡帳自体がなく、保育園に備え付けのボードにその日の出欠と朝の体温だけを書くといったものの場合、それだけを見ても夫婦のどちらが育児をメインで担当していたのかといったことはほとんど分からないので、残念ながらほとんど証拠価値はありません。


(3)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント①】
 前述のようにあまりに簡素な連絡帳は、あまり有力な手掛かりとはなりません。
 逆に、しっかりとコメント欄などもある連絡帳については、何が重要になってくるのでしょうか。
 まず大きなポイントの一つ目は、「夫婦のどちらが記帳しているのか」という点です。


 通常は、記帳者が保育園・幼稚園への送迎も担っていることが多いので、少なくとも保育園への送迎を夫婦のどちらがメインで担ってきたのかという点は分かることが多いです。
 そうしますと、保育園・幼稚園のお迎えという場合には、夫婦のどちらが先に自宅に帰宅しているのかが分かることも多いです(通常は、保育園にお迎えに行く方が先に帰宅していると思います)。先に帰宅した方の配偶者が、その分お子様と自宅で接する時間が長かったということになりますし、その間、育児を担っていた証明にもなります。


 また、連絡帳を記帳するにあたっては、連絡帳の形式にもよりますが、今朝の朝食や前夜の夕食メニューなどを書く形式のものがありますが、これらのメニューは、実際に食事の用意をしていた者でないと分からないことも多いです。
 お子様の食事について記帳しているということは、その食事の調理や配膳に関わってきた可能性が高いという推定が働き得るのです。


(4)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント②】
ポイントの二つ目は「どのような内容が記載されているのか」という点です。
このように解説しますと「他愛ない日常的なやり取りをしていない」ということで心配される方もいるかもしれませんが、それでも問題ありません。


そのような他愛ないやり取りの中でも、普段のお子様の生活や癖、成長具合などを探る貴重な手掛かりになることも多いからです。
後は、前日の夜に食べた食事の内容、その日の朝に食べた食事の内容なども細かく記載する形の連絡帳ですと、お子様の栄養面で配慮してきたかどうかといったことも分かりますので、そのような食事欄の記載の有無・内容も重要な要素になります。


(5)しっかりとした連絡帳の場合の【ポイント③】
 ポイントの三つ目は、連絡帳に記載している「分量」になります。
 家庭裁判所調査官も、ある程度は連絡帳の記帳内容を確認しますが、その全てをきめ細かく確認するのかというと、そこまで手が回らないということもあります。
 その場合に、調査官は、連絡帳の全体を確認し、あなたが書いた箇所の分量や空欄がどの程度あるのかという全体感を見ることも多くあります。

 

 

3.連絡帳は何年分必要になる?


 この点は裁判官によって対応が異なるのですが、大きく分けて、1年分の提出で足りるとする裁判官と2年分提出して欲しいと要請してくる裁判官に大別されるように思います。
 なお、裁判官から「2年前からのもの」と要請された場合でも、3年前の連絡帳の方が、あなたが熱心に育児に関わってきたことが分かるという場合には、敢えて戦略的に3年前のものまで提出することもあります。
 どの範囲の連絡帳を提出するかは、裁判官からどのように要請されたのか、及び、どのような戦略で対応するかを弁護士と相談しながら、対応していくことになります。

 

 

4.連絡帳提出の際の注意点


 あなたが別居後、旦那側に別居先を伝えていない場合(伝えたくない場合)には、連絡帳をそのまま提出してしまいますと、旦那側にこちらの居場所を知られてしまうリスクが生じてしまいます。
 そのため、連絡帳の保育園名はもちろん、クラスの名前はマスキングしますし、連絡帳の記載内容の中に、地名(園の近くの公園の名前とか)、お友達の名前、園での特別なイベントの名前(例えば、あまり東京の園では行わないような地方の踊りをイベントで踊るといった場合、その踊りの名前はマスキングしたりします)、記帳して下さった保育士の名前などにマスキングをすることが多いと思います。
 このように連絡帳を提出する際には、マスキングにかかる時間も考慮して、裁判所への提出期限を設定すると安心です。

 

 

5.小学校での連絡帳は?


 小学校でも連絡帳を活用している学校が多いと思いますが(最近はタブレットで管理している学校も多いように思いますが)、学校の連絡帳は、何か病欠や行事等があった際にしか記帳しないと思いますので、監護者指定事件で重視されることはほとんどありません。
 ただ、お子様が学校でトラブルを起こしてしまったり、いじめを受けたりしていて、その際の担任教師とのやり取りを記帳していたというような場合には、その内容を確認することはあります。

 


6.育児日記は?


 育児日記は、保育園の保育士とやり取りするというものではなく、あなたご自身が任意にお子様の成長を記帳しているものだと思います。
 このような育児日記は、監護者指定事件でどの程度重みがあるのでしょうか。


(1)連絡帳との比較では?
 もし連絡帳がある場合、それに重ねて育児日記を提出しても、効果は少ないことが多いと思います。
 連絡帳は、第三者である保育士も記帳しているので、その資料の中立性が高まっていると言えるからです(育児日記は、あなただけが記帳していますので、どうしても、中立な保育士も記帳している資料よりも証拠価値が落ちてしまうのです)


(2)真価を発揮するのは、連絡帳がないとき、又は簡素な連絡帳の時
 前述のように、保育園の連絡帳がある場合、そちらの内容の方が重視され、育児日記の内容はあまり効果が少ないことが多いです。
 他方で、①そもそも、まだお子様を円に入園させていないという場合には、連絡帳そのものがありませんし、②年長さんになって連絡帳を書かなくなったという場合、もしくは、③連絡帳は書いているけれども、体温だけを記載するだけの簡単な連絡帳である、というようなケースですと、連絡帳を見ても、お子様の普段の様子は分かりませんので、育児日記が真価を発揮することもあり得ます。


(3)連絡帳がないときは、育児日記はかなり重視されるのか?
 前述のように、連絡帳がないとき、または、連絡帳の内容が非常に簡素な連絡帳な場合には、育児日記が重視される場合もありますが、これも、その記載内容次第です。以下ポイントに絞って解説します。


ア)【重視される育児日記のポイント①】毎日欠かさず記帳していること
 最も重要なポイントになりますのが、「毎日欠かさず記帳していること」です。
 毎日記載することで、お子様の成長や変化等を漏らさず記帳することができますので、重要なポイントになるのです。
 もちろん、たまに1日だけ記帳しなかった、というだけで、その育児日記にほとんど価値がなくなる、ということはないのですが、記帳の頻度が低ければ低いほど、その証拠としての価値は落ちてしまいます。


 例えば、お子様の記念日だけ記帳している育児日記(誕生日や誕生後ちょうど1か月のバースデイ、寝返りを打った、首が座った、立った等の特徴がある日のことしか書いていないような育児日記)は、残念ながら証拠としての価値が薄くなってしまいます。
 または、例えば、週末である土日だけ記帳している育児日記も、平日という週5日間の記録が抜けていることになってしまいますので、残念ながら証拠としての価値は薄くなってしまいます。


イ)【重視される育児日記のポイント②】それなりの分量記載していること
 次のポイントは、記載の分量です。
 毎日欠かさず記帳しているとはいっても、毎日1行だけしか記載していないということですと、残念ながら証拠としての価値は薄くなってしまいます。


ウ)【重視される育児日記のポイント③】あまり古くないものであること
 次のポイントは、「あまり古くないものであること」です。
例えば、現在お子様が6歳だとして、育児日記が0歳児の時の日記だとすると、記録として「古過ぎる」と評価されてしまう可能性が高いと思います。このような古い記録は、あまり重視されないと思います。

 


7.まとめ


・保育園・幼稚園の連絡帳は、監護者指定事件で重要な資料として扱われることが多い。
・但し、あまり簡素な連絡帳(体温だけを記載するものとか)はあまり役に立たない。
・連絡帳の評価にあたっては、①夫婦のどちらが記帳しているのか、②記帳内容、③その分量が重要なポイントになる。
・連絡帳提出の際には、部分的にマスキングが必要になることも多いので注意が必要である。
・小学校の連絡帳は、ほとんど重視されないことが多い。
・連絡帳がない場合、又は簡素な無いような場合には、育児日記が重視される場合もある。
・どのような育児日記が重視されるのかは、最近のもので、かつ、毎日欠かさず、それなりの分量記載してある育児日記だと心強い。

 

 

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投稿者: 弁護士秦真太郎

2023.07.18更新

 弁護士秦

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.夫はどのように主張してくるのか?


 「ひどい叱り方」といっても、やや抽象的ですので、実際に私が担当した事件で、夫側がどのように言ってきたのかを、具体例として、ご紹介します。

(1)妻自身の機嫌が悪いと、昨日までは良かったことでも今日はダメと言うように叱りつけてくるので、子供も困り果てていた。

(2)妻は短気なので、何かがあると頭ごなしに叱りつけるので子供がかわいそう

(3)妻は怒り始めると止まらないので、30分近く延々と叱りつけるため、子供も疲れ果ててしまうことが多かった。

(4)妻は叱るだけで、何がダメでどのようにダメなのかを何も伝えないから、子供はダメな理由も分からないままのことが多かった。

(5)妻は大声で叱りつけるので、子供も怖がってしまっていた。

(6)妻は叱る際に子供が傷つくようなことを言うことが多く、子供が泣き出してしまうことが多かった。

(7)突如として子供に罰を与えることが多く(おやつを与えないとか、ゲーム機を突如取り上げるとか)子供が気の毒だった。

(8)他の兄弟と差別的に叱ることが多かった(例えば、次男には甘く、長男には異常に厳しいので、同じことをしても長男だけが叱られることが多かったなど)

(9)妻は叱る際に手をあげることが多かった。

 

 

3.監護者指定審判の中で問題となるような「ひどい叱りつけ」とは?


 お子様も時にはふざけてしまったり、悪戯をしてしまったりということもあって、その際には、ついこちらも「叱り方」が好ましくない形になってしまうということもあると思います。

 もちろん、お子様が何か悪いことをしたからと言って、①そのことに対して暴力を振るってしまったり、②お子様を閉じ込めるなどして恐怖を与えてしまうこと、③お子様の物を壊してしまうこと、④お子様の人格を否定するような発言をすること(例えば、「こんな子だったら産まなきゃよかった」とか)はNGです。これらは、お子様に対する健全な発達のための「叱りつけ」ではなく、もはや児童虐待になってしまっているため、許容できません。
 このように叱りつけが、あまりにも度を越してしまいますと、監護者指定審判の手続においても不利に扱われてしまいます。
 逆に、これらの①から④に当てはまるような度を越したものでなければ、そのことでこちらが大きく不利になることはほとんどないと思います。

 

 

4.逆に「良い叱り方」とは?


 このようなお話をしますと、逆にどのような叱り方が「理想なんですか?」とか「良い叱り方って何なんですかね?」とご質問を受けることがあります。
 そんな時には「お子さんに、叱られている理由がしっかりと伝わる叱り方が良いみたいですよ」とか「お子さんの目を見て正面から向き合って叱ると効果があるみたいですよ」などと回答することがあります。
 ただ、これらは一例でして、お子様がしてしまったことの内容、お子様の年齢、これまでのお子様との関係性、ご家庭の事情、地域の風習等によって、対応の仕方は様々だと思います。お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱るのが良いと思います。

 

 

5.夫側の主張に対する対応方法


 それでは、夫側の主張(詳しくは「2.夫はどのように主張してくるのか?」をご覧下さい)に対してはどのように対応すべきなのでしょうか。

(1)夫の言い分は虚偽・過剰であることが多い
 夫の言い分は、自分が有利に立ちたいがために、虚偽や過剰反応とも言える主張だということが多いです。
 そのため、虚偽や過剰なものに対しては、しっかりと「そのような事実はない」と指摘することが大事です。


(2)多少の叱り過ぎがあった場合は?
 多少の叱り過ぎがあったという場合でも、前述のような児童虐待という程度のものではない場合には、それほど恐れる必要はありません。
 この場合には、当時の経緯をしっかりと説明し、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。また、このような場合でも、夫側は実際の事実よりも過剰に演出してくることが多いので、過剰な部分が誤りであることもしっかりと指摘する必要があります。


(3)多少虐待的行為に及んでしまった場合は?
 前述のような虐待と称されるような行動に出てしまった場合にも、しっかりと経緯を説明して、母親としてお子様をしっかり叱らなくてはいけない場面であったことを裁判官にも理解してもらうという作業が必要になります。
 ただ、その際に気をつけなくてはいけないのは、このような説明が「言い訳」と映らないようにすることです。折角詳しく説明している内容が、裁判官の目から見て「言い逃れの弁解を並べているだけ」と捉えられてしまいますと、逆に不利になってしまう虞があります。
 そのため、詳しい説明に加えて、自分としても反省していて今後二度と同じ行動に出ないことも明記することが大事です(こうすることで、「言い逃れ」ではなく、しっかり「反省」したうえで、事情を説明しているということが裁判官にも伝わりやすくなります)。

 


6.「お互い様だから問題ない」という言い分はどうなのか?


 たまに、奥様の方から「夫の方は、もっとひどい叱り方をしていた。こんな夫に言われる義理はない」といったことを指摘されることもあります。
 もちろん、夫側の不適切な育児等についてはしっかりと指摘しなくてはいけないのですが、「夫も悪いから、こちらのことも許される」という言い分は通りにくいです。
 そのため、前述のように、こちらの叱り方に実際に大きな問題があったという場合には、反省すべきは反省しているという姿勢を裁判所に見せたほうが効果的なことが多いです。

 


7.まとめ


・夫側は監護者として指定されたいがために、こちらの叱り方について様々な主張をしてくることも多い。
・虐待といえるような度を越した叱りつけでなければ、そこまで心配することはない。
・お子様にとって負担にならないやり方で、お子様にとってもしっかりと叱られている理由が分かる方法で叱ることが「良い叱り方」と言われることが多い。
・夫の言い分に対する対応方法は、指摘されている内容に応じて異なってくる。
・「お互い様だからこちらのことも許される」という言い分は通りにくい。

 

 

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>夫が突然監護者指定審判を起こしてきた(3)ー夫はどういうつもりでこのような手続きを取ってきたのか?

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1.そもそも「監護者」って何だ?


(1)監護権というワードは馴染みが薄い。
 離婚する以前の夫婦は共にお子様の共同親権者で、離婚の際には(単独)親権者を決めなければならないというように、「親権者」というワードはよく出てくるのですが、「監護者」については、親権者ほどメジャーなワードではなく、よく分かりにくいという質問を受けることもあります。
 端的に言いますと、監護権とは、親権の一部と理解すると分かりやすいと思います。

(2)親権の意味のおさらい
 そもそも、親権というと、離婚した後に子供を育てていくことができる権利と考える方が多いかと思いますが、実は親権には、このようにお子様を育てていく権利だけではなく、他にも権利が含まれています。
 具体的には、親権には大きく以下の権利が含まれると言われています。
1)身上監護権(お子様の身の回りの世話(監護)や教育(主として進学や進級等)を決定する権利(責任を伴います)を主として、居所指定や職業の許可といった権利を含む権利です。)
2)財産管理権(お子様の財産を管理する権限のことです)
3)身分行為の代理権(例えば、お子様が他の里親の方の養子になりたいと言ったときの代諾権等お子様の身分行為を代理する権限です)


(3)要するに監護権って?
 上記の通りご説明しました親権に含まれる3つの権利のうち、「身上監護権」だけを切り出したものが監護権とイメージすると分かりやすいと思います。

(4)監護者指定審判とは?
 離婚が正式に成立するまでは、お子様の親権は夫婦の共同親権になるのですが、このような共同親権の中でも監護権のみを切り出して、監護権を取得するものを夫婦どちらかに指定して欲しいという審判が監護者指定審判の手続きになります。
 「審判」というと聞き慣れないかもしれませんが、調停のように話し合いの手続きではなく、裁判官が強制的に監護者を指定する手続きになります。

 

 

2.同居中、夫は些細なことでも録音を取ったり証拠集めをしていたが大丈夫か?


 夫婦の関係が良好な場合には、夫側が家庭内で録音機を構えたり、スマートフォンで録音をするということはないと思います。しかし、夫婦の関係が険悪化してきますと、今後何かあったときのためにといったことで、夫側が証拠集めのようなことを開始する場合があります。
 あなたはお子さんの育児に奔走しているため、記録化があまりできていないのに対して、旦那側はほとんど育児に協力しないため、着々と記録化しているといったパターンが多いように思われます。
 具体的に私が担当した事件では以下のようなパターンがありましたので、各パターンごとに以下で詳しく解説していきます。
① こちらの家事不行き届を指摘するための証拠化

② こちらの育児不行き届を指摘するための証拠化

③ こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化

④ 旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化

⑤ こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化

 


3.【パターン①、②】こちらの家事不行き届や育児不行き届を指摘するための証拠化


 こちらの家事不行き届や育児不行き届を指摘するための証拠化というのは、具体的には、旦那側があなたに対して家事不行き届や育児不行き届を指摘している場面を録音して、これまでに不行き届があったこと及び旦那が気付いて指摘していることの両方を記録化するといったケースになります。
 以下では、具体的にはどのようなことをどのように記録しているのかに応じて解説していきます。


(1)音声録音での証拠化
 具体的には、前述のような、旦那側があなたに対して①家事不行き届(部屋が片付いていないとか、取り込んだ洗濯物が置きっぱなし、食事後の食器を洗い始めるのが遅いとか、料理の味が薄いとか)や②育児不行き届(保育園への持ち物の忘れ物が多い、おむつを替える頻度が少ない、目を離している隙にお子様が化粧品等を口にしようとしてしまっているとか)を指摘している場面を録音して、これまでに不行き届があったこと及び旦那が気付いて指摘していることの両方を記録化するといったケースがこれに該当します。


 このような録音に対する対抗策としては、録音中に、あなた自身の口から「録音している余裕があるなら手を貸して」「そうやって録音しているけど、あなたは何もしてくれないよね」と言った形の発言をして、あなただけの問題ではないという記録化をしていくというのが有効かと思います。


(2)写真や動画での証拠化
 写真や動画での証拠化というのは、よくあるケースとしては、①こちらが他の家事や育児で手が回らず、部屋が片付いていない状況を旦那側が写真撮影するとか、②こちらがお子様の幼児で外出しなければならないため、食後の食器類を洗い場にそのままにしている状況を旦那が動画にして、旦那自身のコメントを勝手に吹き込むといったことになります。
 そもそも、このような片付けや整頓の不十分については、数日不十分な状態が継続したということであればともかく、そうでない場合には、あまり大きな落ち度になるような問題ではないかと思います。
 また、監護者指定手続きの中で、旦那側がこちらを追及してきた場合には、「リビングは旦那もよく利用する部屋なので、リビングが片付いていないのは旦那側の責任でもある」といったような反論をすれば十分かと思います。


(3)日記やメモでの証拠化
 旦那側が問題に感じたことを逐一日記やメモ帳にまとめているというケースもたまにあります。
 単なる手書きのメモの場合、メモを何時作成したのかの証明が難しいことが多いので(要するに、旦那側が「令和2年2月2日に書いた」としても、実際には監護者指定手続き最中の令和5年5月5日に書いていることもあり得るということです)、あまり心配する必要はないかと思います。
 手書きの日記や手書きのメモは、その当時に記録したものであれば、一定の証拠価値があるのですが、「いつかいたのかが不明確なもの」(旦那側がいついつに書いたと言い張っているだけで、本当にその日に書いたのかが不明確なものも含みます)については、あまり証拠価値は認められないことが多いです。


 これに対して、携帯電話のメモ機能で作成したデータについては、作成日付を変更できない形式のものでしたら、少なくともその時に作成したデータということになり、一定の証拠価値が認められることになります。
 ただ、その場合でも、書いている内容次第というところでして、あまり旦那側の主観が多く含まれる場合には、あまり重要とは見られないケースがほとんどです。

 

 

4.【パターン③】こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化


 これは端的に、こちらがお子様を叱責しているときの様子を旦那側が録音したり動画にしたりするというパターンになります。
 最近は、新型コロナウイルス流行を機に、在宅勤務をする旦那が増えた関係で、在宅勤務中に、お子様の泣き声を聞くと、すぐに旦那が口を挟んでくるとか、携帯電話を構えて録音しようとしてくるといったケースが増加傾向にあります。
 そもそも、録音等されたとしても、その叱責が行き過ぎたものでなければ、特にこちらが不利になるわけではありません。お子様ですからふざけてしまったり、悪戯をしてしまったりと、しっかりと注意しなくてはならない場面は多くあると思いますので、そのような場合に、何も注意しないというのではむしろお子様にとっても良くないことだと思います。


 なお、そのような叱責が、旦那側が煽った結果だというケースもあります。
 例えば、お子様の悪戯が度を越していてしっかりと注意しなくてはいけないのに、旦那側が、「そのくらい大目に見てやれよ」とか「ヒステリーなママだねぇ」などと煽ってくるケースです。
 そのような場合、こちらが叱責している場面だけを切り取って記録化されてしまいますと、こちらに不利になりますので、その日のうちに、あなたの親族等にメールやLINEを送って、経緯を記録化しておくとよいと思います。


 旦那側は、あなたがお子様を叱っている場面だけを切り取って、監護者指定手続きの中でも「些細なことで子供を叱りつけている」といった言い方をしてくると思います。
 それに対抗するために、しっかりと経緯もあなたの方で記録化しておくという意味です。そして、その記録化は、早めに記録化しておく必要がありますので「その日のうちに」親族にメールを送るなどして、状況保存しておいた方が良いのです。

 

 

5.【パターン④】旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化


 よくあるパターンが、旦那側がお子様と会話をし、その中でお子様に対して旦那への感謝を言わせるというものです(その会話全体を録音しています)。例えば、あなたが所用で自宅を留守にしている際に、旦那がお子様の昼食を準備したとします。そのことについて、お子様に「パパが作るミートソーススパゲティは最高だよ」「いつもパパが料理してくれるよね。サンキューね」などと言わせ、録音するといったものです。
 こうした録音については、旦那側が意図的に言わせていることが多く、不自然な雰囲気、不自然な会話になっていることが多いので、このような録音が監護者指定手続きの中で出てきたとしても、あまり心配しなくても良いことが多いと思います。

 

 

6.【パターン⑤】こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化


 よくあるパターンが、旦那側がこちらを煽ってきた上で、もしくは、こちらを挑発してきた上で、こちらを怒らせ、怒っている様子だけを録音するといったものです。
 そもそも、そのようなあなたの発言が、聞いていて、周りを萎縮させるようなものでしたら問題になるかもしれませんが、そこまでのものでなければ、そこまで四敗する必要はないかと思います。また、その場面にお子様が同席していなければ、監護者指定手続きとの関係ではほとんど無関係な事情となります(夫婦間の問題であって、お子様との関係の問題ではないという意味です)。
ただ、この場合も、不安があるようでしたら、その日のうちに、あなたの親族等にメールやLINEを送って、経緯を記録化しておくとよいと思います。

 

 

7.こちらも記録化した方が良いのか?


 夫側が記録するのであれば、こちらも記録するというスタンスで臨みたという方もいますが、弁護士としてはあまりオススメしません。
 と言いますのは、あなたが記録をとっていることを旦那側が知ると、旦那側の記録行為は悪化していく可能性が高く、余計に家庭内がぎくしゃくしていくからです。
 もし、あなたの方で記録を残しておきたいということでしたら、「旦那の落ち度を探す」という観点ではなく、むしろあなたの育児での頑張りを記録しておいた方が良いと思います。
 一番端的なのは、毎日育児日記をつけておくということではないかと思います。大した行事やイベント等がない日も、しっかりと「毎日書く」ということが非常に重要になります。

 

 

8.まとめ


・旦那側がこちらの落ち度を記録しようとする場合、以下のようなものが考えられる。
① こちらの家事不行き届を指摘するための証拠化
② こちらの育児不行き届を指摘するための証拠化
③ こちらの叱責の行き過ぎを記録するための証拠化
④ 旦那側が「良い父親としてふるまってきたこと」の証拠化
⑤ こちらの旦那側への発言の言い過ぎを記録するための証拠化
・いずれについても、行き過ぎたものでなければ、旦那側が記録を取っていても無意味である。
・それぞれの証拠化に対して対処方法もあるので、不安があるようなら対処方法を講じるべきである。
・こちらが積極的に「旦那の落ち度を探す」という観点で記録化することはあまりオススメしない。

 

 

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