2024.02.26更新

 弁護士秦

こんにちは、東京・日本橋の弁護士秦(はた)です。「しっかり戦って、しっかりと勝つ」をモットーに詳しく解説していきます。
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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

今回は、上記の4つの児童虐待の中でも「心理的虐待」に絞って解説していきます。

 

 

2.子供への心理的虐待(モラハラ)って?



 モラハラについては 「言葉、態度、文書などによって継続的に相手の人格や尊厳を傷つける精神的な虐待行為」などと定義されたりしますが、これだけではピンと来ない方が多いと思います。具体的にお子様との関係での夫の発言や行動で「モラハラ」と評価し得るものとしては以下のようなものがあります(これが「モラハラ」の全て、というわけではなく、あくまで代表例とお考え下さい)。
なお、夫がお子様に直接手をあげるケースは、もはやDVに該当しますので、一旦モラハラとは分けて考えます(以下では、このようなDVにまでは達していないケースを想定して解説いたします)

 

(1)お子様に対して暴言を吐く
 お子様へのモラハラの典型例のようなケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。なお、暴言やあなたやお子様ご本人に向けられるケースだけでなく、パパ友やママ友、お子様の友人等が集まる場所等で発言されると、より一層お子様は傷つくことになると思います。
①お子様を侮辱するような発言をする(「バカ」「アホ」だとかの単純なものから、お子様の容姿を侮辱するもの、お子様の学習能力や知識不足等を侮辱するものなどがあります)
②お子様に危害を加えるような発言をする(「一度殴られないと直らないのか?」、「むしゃくしゃしてお前を殺してしまいそうだ」等々)
③叱責する際などに敢えてお子様が傷つくようなことを言う(例えば「テストの点が悪かったから、おまえのこのゲームは捨てるからな」、「朝の勉強をさぼっていたから、週末はお出かけ禁止な」とか「遊びに行ってる暇があったら、ドリルを1ページでも進めとけよ」等)



(2)執拗な責め立て等
 これもお子様へのモラハラとしてはよく見られるケースですが、より詳しく見ますと以下のようなものがあります。
①些細な問題を執拗に責め立てる(「この前のテストで90点だった理由をしっかりと説明しろ」「昨日音楽の笛を学校へ持って行き忘れたことの反省文を書け」「この前の誕生日会で俺に恥をかかせたことについて、参加者に謝ってこい」等々)
②責め立てが何時間も延々と続く
③責め立てが夜中や早朝など時間を問わず長々と続く
④責め立ての際、正座や土下座を強要する



(3)物への八つ当たり等
 例えば、機嫌が悪いと物に当たり散らす。大きな物音を立てる(席を立つ際に椅子を乱暴にテーブルにぶつける、大きな音を立ててドアを閉める等)といったものです。
 特にお子様が大事にしているものとか、お子様のデスクや衣装ケースなどを傷つける行動は、お子様にもショックが大きいと思います。



(4)行動監視や強要
 例えば、以下のようなものがあります。
①お子様のスマートフォンにGPSアプリを入れて頻繁に位置情報を確認してくる
②門限その他家庭内のルールを作って、お子様に強要する(勉強の時間は何時からとか、入浴の時間は何時からなどと細かく決めた上で、1分でも過ぎると執拗に責め立ててくるとか)
③お子様が口にするお菓子等について夫の気分次第で種類や値段を制限してくる

 このように、一口にお子様へのモラハラと言ってもいくつかの態様があるのですが、いかでは、特に暴言といった形態を中心として、どのようなものが証拠になるのかを解説していきます。

 

 

2.やはり確実なのは録音データ


 DVのケースですと、怪我を負わされるケースが多いため、診断書や怪我の部位を撮影した写真がもっとも確実な証拠と言えます。これに対して、モラハラの場合には目に見える怪我は残りませんので、診断書や写真を準備することはできません。

 そのため、相手がどのような雰囲気でどのような言葉を発したのか、こちらからの発言に対してどのように抵抗してきたのかと言ったところを正確に記録できますので、その意味で録音データは確実な証拠になるといえます。

 なお、録音をする場合には以下の様な点にも気を付けながら実施して下さい。


(1)録音は前後の会話も含めて当時の状況が分かる形で録音した方がよい。
 たまに相手が暴言を吐いている数秒、数十秒の録音データをお持ちになる方がいますが、これでは、相手が暴言を発する経緯や、あなたやお子様がどのように反応したのかといった点が分かりません。
 また、暴言部分のみのデータですと、こちらで編集したデータであると言った形で、相手から争われる危険性もあります。
 そのため、相手が暴言を発する際には、その一部始終を録音し、相手がどのように暴言を発し始めたのか、あなたがどのように対応したのか、相手がどのような形で落ち着いていったのかと言った点をすべて録音できるとベストです。

(2)録音データは複数あった方が心強い
 モラハラ夫の暴言のフレーズは、「いつも同じような発言が多い」ということもあります。
 しかし、同じフレーズばかりだから、「1回だけ録音しておけばよい」とか「この前録音したのと似た様な録音だから削除する」と言うことは絶対にしないで下さい。

 まず、複数録音しておくと、相手が頻繁に暴言を吐くと言うことを正確に裁判官に伝えることができますので、その意味で「同じフレーズでもデータの数は多いに越したことはない」ということになります。また、フレーズは似通っていても、そのときの雰囲気や様子はそれぞれ別な場合がありますし、あなたの反応やお子様の反応が異なる場合もあります。このような点は弁護士といった法律の専門家でなければ、違いを判断できないと言うこともありますので、複数録音データがあると、活用方法は拡がる可能性があります。




3.メールやLINE


 例えば、夫があなたに対してお子様のことを非難するメールを送ってきたとか、夫がお子様に直接送ったメールでモラハラ発言をしてきたというような場合、有力なモラハラの証拠になります。


 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、旦那の普段の声の大きさ、声のトーンやその場の雰囲気までは伝わらないため、どうしても、録音データよりは証拠としての価値が落ちる面はあります。それでも、メールやLINEの文面から明らかにお子様を誹謗中傷する内容のような場合には、十分モラハラの証拠にはなります。

 LINEやメールに関しては、バックアップをきちんと取っておくことに努めて下さい。と言いますのは、メールやLINEをスマートフォンでしか保存していないと、スマートフォンが故障した場合には、記録がなくなってしまいますし、場合によってはモラハラ夫によってスマートフォンを壊されてしまい,そのことで証拠がなくなってしまう危険性があるのです。

 バックアップの方法としては、問題となるメールやLINEをスマートフォンで開き、スクリーンショットをパソコンアドレスに送信するといった方法がオーソドックスかと思います。LINEのやりとりをSIMカードにてそのままパソコンに移行しても文字データのみになってしまうことが多いと思います。相手がメールやLINEの内容を否定しなければいいのですが、相手が否定した場合、文字データのみですと、簡単に改変できるデータになりますので、相手から「このデータは偽造されている」とか「一部家内の都合が悪いところが削除されている」といった言いがかりを付けられるリスクがあるので注意が必要です。

 また、あなた自身が、お子様のモラハラ被害の内容を親友や親族に対してLINEやメールで相談してきたという場合、内容次第ではモラハラの証拠になり得ます。なお、どの程度モラハラの立証に役立つかは、LINEやメールの文面はもちろん、タイトル名、相談しているモラハラ被害の具体性、文面全体の位置づけ等を考慮する必要があります。

 


4.物の被害



 物に深刻な被害が生じた場合、モラハラと言うよりDVに近くなる様にも思えますが、モラハラの延長で、夫が投げつけてきた場合、破損した物は証拠になり得ます。例えば、旦那が投げつけたために大破したスマートフォン、夫が殴りつけて空いた壁の穴、夫が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、あなた自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 



5.子ども家庭支援センター等への相談記録



 モラハラ夫の暴言に悩まされている場合、その間に子育て支援センターにご相談されている方もいらっしゃいます。そのような場合には、相談した際のやりとりがセンターの方に保管されていますので、その記録の開示を受けると、証拠になり得ます。

 なお、モラハラの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ子ども家庭支援センターに相談するはずないんだから、相談をしているだけで、モラハラの証拠になりますよね?」とおっしゃる方もいますが、必ずしもそうとは言い切れません。
 現状の裁判実務を見ますと、「子ども家庭支援センターに相談した」イコール「大変なことが起こった」とまでは評価されないこともありますので、結局は開示証拠に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 



6.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。


 例えば、お子様が、当時のモラハラの様子を証言してくれるという場合、お子様はモラハラの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、モラハラに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親のモラハラを誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては録音データ等の方が格段に評価が高いのが実情です。

 



7.モラハラの証拠が少ない、ほとんどないという場合



 もちろん、上記の様な録音データがあれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった夫が豹変して暴言を吐いてきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、夫の暴言を受け入れられず、また元の優しい夫に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。
 私の経験上、今ある証拠をもとにモラハラ夫を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 ただ、そのような場合、どのようにモラハラ夫と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

8.まとめ


・一口に心理的虐待(モラハラ)と言っても複数の態様があるので、どのようなものがモラハラなのかを把握しておく必要がある。

・録音データはモラハラの最有力の証拠になるが、その内容については注意点もある。
・ラインやメールは書き込みの内容次第であるが、モラハラ発言などが直接かかれていれば有力な証拠になる。
・子ども家庭支援センター等への相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・物の被害を写した写真は、直接モラハラの証明にすることは難しいケースもある。
・証言は、録音データ等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・モラハラの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

 


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投稿者: 弁護士秦真太郎

2024.02.19更新

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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

 今回は、上記の4つの児童虐待のカテゴリーの中から①の「身体的虐待」に絞って、どのようなものが証拠になるのかについて解説していきます。

 


2.やっぱり最も確実なのは診断書と写真



 法律用語で言いますと「客観的証拠」などと表現しますが、お子様が怪我をさせられた診断書や怪我の部位を撮影した写真は、身体的虐待の証拠として最も確実な証拠といえます。

(1)ただ、診断書につきましては、その内容にも注意が必要になります。
  まず、複数怪我を負った場合に、病院によっては、大きな怪我だけを記載し、小さな怪我は一切記録を残していないと言うことがありますので、診察を受ける際には小さな怪我を含めて全ての怪我を病院に申告することが重要です。

 次に、診断書の発行を受ける際には、治療期間も記載してもらうようにして下さい。例えば「左上腕打撲で当院通院中」だけだと、どの程度の怪我で、どの程度の期間通院すれば完治するのかが分かりません。そのため「左上腕打撲で加療2週間の見込み、現在当院通院中」といった形で、治療期間が分かると望ましいです。

 もう一つの注意点としては、病院に本当の怪我の原因を話すと言うことです。なかなか医者に対して「父親に殴られた」といった話はしづらいのですが、「階段で転んだ」とか、「他人の喧嘩に巻き込まれた」と嘘の申告をしてしまいますと、カルテにその様に記載されてしまいます。相手が裁判で争い、病院にカルテの開示を求めると、カルテが裁判所に提出されることになりますので、裁判官は「本当は父親の暴力ではなく、階段で転んだだけなのではないか?」と疑問に感じてしまう虞があります。



(2)次に写真ですが、怪我の部位のみの写真にしないよう注意が必要です。
 より分かりやすく言いますと、その写真にあなたの顔も写るようにして欲しいということです。よくありがちなのが、怪我をした手の甲の部分だけの写真や足の膝の部分だけの写真を撮っている人がいらっしゃいますが、これでは、その手や足があなたの手足なのか、実は他人の手足なのかが写真だけでは分かりません。裁判になると、相手は、「それは友人の写真で本人の写真じゃない」といった形で争われる原因になりかねません。

 そのため、写真は必ず複数撮影し、お子様の顔と怪我両方が写った写真と、怪我の部位をより拡大した写真を撮るようにして下さい。

 



3.警察への通報記録や子ども家庭支援センター等への相談記録



 先ほどお話ししましたとおり、診断書や写真が確実性の高い証拠と言えるのですが、次いで確実性が高い証拠としては、警察への通報記録や子ども家庭支援センター等への相談記録があります。
 旦那の暴力に対して警察に110番通報したことがある場合、その通報記録が警察の方に残りますので、申請をすれば、その開示を受けることができます。子ども家庭支援センター等への相談記録も同様です。

 なお、DVの証拠としてどこまで利用できるのかは、その開示された資料の内容次第と言うことになります。例えば、110番通報簿については、警察の方で大して詳しい記載をしてくれていないという場合があり得るのと、プライバシー保護等の観点から開示資料に黒塗り部分が多いというケースもあります。そのため、どの程度DVの証明に役立つかという点に関しては、資料の内容を精査する必要があります。

 たまに、私のところに相談に来られる方の中には「大変なことがなければ110番通報なんてするはずないんだから、警察が来てくれただけで、DVの証拠になるでしょう?」とおっしゃる方もいますが、安易にその様に考えるのは危険です。
 例えば、旦那が酔っぱらって騒ぎ始めたのですぐ110番通報したが、警察が来たときには旦那は外出してしまっていたと言ったケースですと、記録としては「旦那不在」としか書かれませんのでDVの証拠にすることは難しいと思います。

 現状の裁判実務を見ますと、「警察を呼んだ」イコール「大変なことが起こった」とは考えないことが多く、結局は通報記録簿に何が書かれているのかをよく検討して判断すると言うことになろうかと思います。

 



4.録音データ



 録音データを記録している場合、通常は、診断書または写真の準備も調っていることが多いのですが、診断書・写真を補強するものとして、録音データも重要性が高い証拠と言えます。

 スマートフォン等で録音しておくと暴力時の打撃音等を録音することができる場合がありますし、DV夫がどのように発言しながら暴力をふるったのかと言う点や暴力前の言葉のやり取りを拾うことができます。何より当時の雰囲気を、臨場感を持って伝えることができますので、当時の雰囲気を伝える証拠としては有力な証拠になり得ます。

 また、DV夫が「嫁が挑発してきたから殴ったんだ」といった言い訳をする場合がありますので、録音データがあれば、暴力に至る経緯を詳しく証明できることもあると思います。

 



5.メールやLINE



 例えば、暴力をふるった翌日に旦那が暴力を詫びるメールを送ってきたとか、あなたの方から旦那に対して「昨日の暴力で子供の顔にアザがあるから、今日は保育園を休ませる」と言ったメールを送っている場合、それもDVの一つの証拠になります。

 ただ、このようなメールやLINEのやり取りですと、暴力の程度が分かりにくいことが多いということには注意が必要です。

 また、LINEやメールの評価については、旦那から来たLINE・メールの方が、あなたが送ったライン・メールよりも証拠の価値は高いです。と言いますのは、旦那が自分の暴力を認めるメールは、いわば自白の様なものですから、他の方が書いたLINE・メール以上に価値が高いと言えるのです。

 これらの点を踏まえると、LINE・メールそのものを直接のDVの証拠にするというよりは、診断書や写真を第1の証拠とし、ライン・メールは補強として使うというイメージかと思います。なお、その場合、旦那が暴言を書き連ねているようなケースですと、そのLINE・メールは、普段の旦那の横暴な態度を示す証拠になると思います。

 



6.物の被害



 DV旦那が投げつけてきたために大破したスマートフォン、旦那が殴りつけて空いた壁の穴、旦那が何度も蹴りつけるためにバラバラになってしまった洗濯籠等、壊れた物の写真も一つの証拠にはなります。

 ただ、これらの写真に関しては、例えばスマートフォンの場合、子どもがふざけていて割ってしまった等、相手が言い逃れをしてくる危険性があります。また、お子様自身が直接暴力を受けた証拠にはなりませんので、その意味では証拠の価値は落ちると言わざるを得ません。

 



6.証言


 証言といった場合、直接の目撃証言なのか、奥様の話を伝え聞いた話なのかによって、その価値に差が生じます。

 例えば、お子様が、当時のDVの様子を証言してくれるという場合、お子様はDVの場面を直接目撃しているので、いわゆる「目撃証言」になります。他方で、DVに悩んでいる奥様が友人や両親に相談していたという場合、友人が「当時こんな相談を受けていましたよ」という証言は、直接の目撃証言にはなりません。

 一般的には目撃証言の方が証拠の価値は高いのですが、お子様の証言という場合、目撃したときに何歳だったのか、証言時に何歳なのかといった点の考慮が必要になりますし、お子様の立場も考慮する必要があります。例えば、お子様が離婚に大賛成という場合、父親の暴力を誇張して話していないのかという懸念も生じ得ます。

 いずれにしましても、人間の記憶には限度がありますので、証拠の価値としては診断書や写真の方が格段に評価が高いのが実情です。

 



7.DVの証拠が少ない、ほとんどないという場合



 もちろん、上記の様な診断書や写真があれば良いのですが、そのような証拠が少ない、または、ほとんどないというケースも多くあります。これまで優しかった旦那が豹変してお子様に暴力をふるってきたことに強いショックを受けた方もいるでしょうし、旦那の暴力を受け入れられず、また元の優しい旦那に戻ってくれると期待して証拠化できなかったという方もいると思います。

 その場合、相手から慰謝料を獲得することは難しくなるとしても、「離婚できない」ということにはなりません。
 私の経験上、今ある証拠をもとにDV旦那を説得して協議離婚が実現したというケースも多数ありますので、決して離婚を諦めないで欲しいと思います。 

 ただ、そのような場合、どのようにDV旦那と交渉を進めていくのか、どのタイミングで調停に切り替えるのかといった点は、経験豊富な弁護士でないと判断が難しいと思いますので、早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

 



8.まとめ


・DVの証拠としては、診断書や写真が確実性が高いが、その内容については注意点もある。
・警察への通報記録や子ども家庭支援センターへの相談記録も記載内容に応じて証拠の価値がある。
・録音データも当時の雰囲気を知るための有力な証拠になる。
・ラインやメールは書き込みの内容次第である。
・物の被害を写した写真は、直接DVの証明にすることは難しい。
・証言は、診断書等の証拠に比べると、証拠としての価値は見劣りしてしまう。
・DVの証拠が少ないケースでも離婚に向けて戦いようはある。

 

 

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2024.02.05更新

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1.児童虐待とは?


 どのような行為が児童虐待に該当するかについては、児童虐待防止法に定めがあり、①身体的虐待、②性的虐待、③ネグレクト、④心理的虐待・面前DVが児童虐待に該当するものとされています。簡単にご説明いたしますと以下の通りです。
①身体的虐待…殴る、蹴るといった身体的暴力
②性的虐待…お子様への性的行為や性的行為を見せる行動等
③ネグレクト…食事を与えない、衛生状態を非常に悪くするといった行動等
④心理的虐待…お子様への脅し、暴言等

 

 

2.児童虐待は離婚理由になるか


(1)離婚を決意する理由としては十分
 お子様が上記のような虐待行為を受け、酷い目にあっている場合、あなたとしては、そのことで非常に胸が痛み、苦しい思いをすることになると思いますので、そのことは離婚を決意するだけの十分な理由になります。


(2)裁判上の離婚原因はまた別問題
 他方で、仮に夫側が離婚を強く争い、離婚裁判までもつれ込んだ場合、離婚裁判では、民法上、強力な離婚理由が必要になってきます。お子様への虐待は、その内容が非常に深刻なものであったり悪質なものである場合には、裁判上の離婚原因に該当する可能性もなくはないですが、直ちに裁判上の離婚原因とはしにくいケースの方が大半だと思います。
 離婚は、夫婦の関係を解消するものなので、第1義的には、夫婦の間でどのような問題があったのかという点が重視されるため、お子様への虐待を直接の離婚原因とはしにくいのです。

 

 

3.むしろ視点をあなたへの暴力・モラハラという点に移して戦うべき


(1)調停や裁判での戦い方
 もちろん、あなたとしては、夫の子供への暴力が許せないとか、夫の子供への性的虐待が特に見過ごせないと感じて、離婚を決意したのでしょうし、そのようなお気持ちを変える必要はありません。
 ただ、いざ調停や裁判で相手と対峙していくにあたっては、調停委員が賛同しやすい離婚理由、裁判官が納得しやすい離婚理由を掲げたほうが、有利に働きます。
 そのため、児童虐待の点を指摘するとしても、離婚したい理由としては、むしろ、夫側があなたに対してどのような行動・言動に出ていたのかという視点から整理した方が良いと思います。
 例えば以下のような整理を検討してみて下さい。


(2)夫がお子様への身体的虐待を繰り返す場合
 夫がお子様に対して身体的虐待を繰り返すケースですと、夫のあなたに対する暴力がゼロというケースはほとんどないと思います。
 仮に、最初は暴力を振るっていなかったとしても、あなたがお子様を守るために間に入れば、夫側の暴力の矛先はあなたに向かうことが多いと思います。
 そのような夫からあなたへの暴力をクローズアップして離婚理由として組み立てていくのです。
 そうすることで、あなたは夫から直接暴力被害を受けているということになりますので、離婚が認められやすくなる大きな要素になると思います。


(3)夫がお子様への性的虐待を繰り返す場合
 夫側がお子様に直接性的行為をしたり、実際の性的行為を実演している様子をお子様に見せるというケースは実際には少ないとは思います。現実的には、夫側が性的にかなり不適切な言動に及んだり、性的な映像等をお子様に見せたりというケースの方が多いと思いますが、このような不適切な行動に及ぶ夫は、あなたに対する関係でも不適切な行動に出ていることが多いと思います。
 例えば、あなたに対する性的な異常行動であったり、あなたに対しても性的にあまりに不適切な言動に出るといったことが代表例ですが、このような行動があった場合、夫のあなたに対する直接の被害と言えますので、この点をクローズアップして離婚理由とした方がより有効打になります。


(4)ネグレクト
 夫側が普段から家事や育児を全面的に担当しているというケースはほとんどないと思いますので、夫側のネグレクトというのは、実際には、①お子様への罰としてトイレや押し入れ等に長時間閉じ込めるとか、②不潔にさせるよう強いるといったケースが大半ではないかと思います。なお、②の「不潔にさせるよう強いる」というのは、例えば、「水道代がもったいないから、風呂には1か月に一回しか入るな」と命じられるとか、「お金がもったいないから娘は美容院に連れて行くな」と言われ、1年以上美容院に連れて行けずに髪が伸びっぱなしであるとか、「洋服代がもったいないから洋服は買うな」と言われ、友達のお古の洋服しか子供に着させられないといったケースを指します。このようなケースでは、夫側が家計を握っていて、あなたが自由にできるお金がほとんどないという状況が多いと思います。
 ネグレクトについても、上記の①のようにお子様に罰を与えるような夫の場合には、あなたに対しても気に障ることがあると罰を与えてくることが多いと思いますので、その点をクローズアップしていくことになります。
また、②については、あなたに対する経済的締め付けとセットのことが多いと思いますので、あなたに対する夫からの経済的締め付けということで離婚理由とすることが多いと思います。


(5)心理的虐待
 心理的虐待についても同様で、お子様に対して脅し文句を言ってきたり、暴言を吐く夫は、あなたに対しても脅し文句を言ってきたりすることが多いと思います。
 そのため、実際には、あなたに対する夫からのモラハラ行為といった形で離婚理由に結び付けていくことが多いと思います。


(6)実際の離婚の認められやすさはケースによる
 上記のとおり、夫と離婚したい理由という観点からは、夫のあなたに向けられる行動・言動という視点が大事なのですが、そのような事情があれば簡単に離婚できるというわけではありません。
 例えば、モラハラと一口に言っても、非常に悪質なものから、そこまで深刻とまでは言えないケースなど多様ですので、離婚の認められやすさは、その具体的な内容を精査して、しっかりと見極めていく必要があります。実際に、あなたのケースでどこまで戦っていけるか確認したいという場合には、是非弁護士秦の無料相談をご利用ください。

 

 

3.結局子供への虐待は、離婚では何も役に立たないのか?


 これまでの説明を見ますと、お子様への虐待は離婚との関係で何も役に立たないように感じてしまうかもしれません。
 確かに、離婚できるかどうか、離婚しやすいのかという点では、必ずしも大きな効果はないかもしれませんが、親権争いといったところで、虐待の有無・程度ということが大きく影響してくることが多いです。
 夫は虐待親であるにもかかわらず、親権を主張してくるようなケースも少なからずありますので、夫婦のどちらが親権を獲得するのかという場面で、児童虐待は大きな判断要素になります。

 

 

4.まとめ


・お子様への虐待は、離婚を決意する十分な理由になる。
・ただ、離婚裁判での離婚原因は厳格なので、児童虐待があっても直ちに「離婚原因あり」とはされにくい。
・調停や裁判で、離婚したい理由としては、あなた自身が受けてきた被害という視点でまとめていくことが重要である。
・お子様への虐待は、親権争いで重要な意味を持ってくる。

 

 

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